私は大企業で15年間働いた経験がありますが、大企業を出てフリーランスになり、起業をすることで、改めて大企業の良いところ、悪いところがわかるようになりました。
この記事では、次のような方に向けて、私が感じている大企業のメリット・デメリットを挙げていきます。
- 中小企業から大企業に転職することを検討している人
- 今のまま大企業で働いていてよいのかモヤモヤしている人
- 大企業から具体的に抜け出すことを考えている人
大企業のメリット | 大企業のデメリット |
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関連記事:大企業を辞めたい【メリット・デメリットは?】体験談も交えて解説
大企業勤務のメリット
大企業のメリットに関しては、こちらのツイートにも挙げています。
大企業で働くメリット
✔︎社名で仕事ができる
✔︎大きなお金を動かせる
✔︎福利厚生が充実している
✔︎大人数を動かす経験ができる
✔︎異動でさまざまな職種を経験できる
✔︎良くも悪くも教師になる先輩がいる
✔︎利害調整能力が身につく
✔︎組織が動く論理がわかる
✔︎大企業の弱みがわかる— セーシン (@n_spirit2004) March 16, 2019
このツイートには以下のような反応も頂いています。
大企業で働くメリット
お三方に補足してもらいました😊
余程の事でなければ、失敗しても経営への影響は小さい @YASU84679874
海外出張や赴任時に安全面など会社がリスク対策をしてくれる @myjustfyi
”組織が動く論理がわかる”は大企業だけでなく、スタートアップでも必要なスキル@mickmk1947 https://t.co/EQZqBgiBRP
— セーシン (@n_spirit2004) March 17, 2019
ここでは、これらのメリットについてひとつずつ詳細を解説していきます。(説明の都合上、順番を一部入れ替えています)
社名で仕事ができる
仕事をする上で、組織の名前や肩書は強力な武器になります。
大企業には、所属しているだけで話を聞いてくれるだけのネームバリューがあるので、その社名を活用して人脈形成することができます。
私は大企業勤務の後半は管理職でしたが、社名と肩書があることで会いに来てくれる人は多かったですし、当時の人脈の一部は会社を辞めた後も活用できています。
大きなお金を動かせる
大企業だと、億単位のお金を動かす仕事ができます。
たとえば私が手がけた商品企画や海外新規事業には、投資総額が数億円、売上が数十億円というのもがいくつかありました。
売上数十億円というのは、中小企業1社の売上に相当するお金です。
こうしたお金を動かせる商品や事業に携わられてもらせるというのも大企業のメリットと言えるでしょう。
大人数を動かす経験ができる
売上数十億円の規模のプロジェクトになると、プロジェクトに携わる人も多数になります。
企画、設計、生産、品質、営業等々の部門でコアに関わるメンバーでも10-15名、関係者というくくりになると40-50名程度の人間はプロジェクトに関わってきます。
多くの人を自分の掛け声一つで動かせるのは、大企業ならではのものだと思います。
利害調整能力が身につく
大人数を動かす立場になると、利害関係の調整能力が身につきます。
多くの部門が絡むプロジェクトでは、それぞれの部門が自部門の利益を追求しようとします。
そうすると、仕事を進めていく中で利害関係が相反するケースが当然のように出てきますが、このときに適切な落とし所を設定して、利害調整する能力が求められます。
大人数が絡むプロジェクトで利害調整した経験は、独立後に顧客や株主と調整を図る際にも活かせています。
組織が動く論理がわかる
大人数になると組織を動かすのも大変ですが、一方で大企業での経験を重ねていくと、組織がどのような原動力で動いているのかを理解できるようになります。
たとえば、部長よりも実質的な権限を持った課長がいるとか、社長が言ったからといって必ずしも実行されるとは限らないということがあります。
会社ごとに社風によって異なるところはあるものの、往々にして組織の建前とみんなの本音は違っていて、本音の部分が実質的に組織を動かす原動力になっていることがあるのです。
こうしたことは大企業を経験していないと、わかりにくい話かもしれませんが、一度経験すると実感としてよくわかるようになります。
異動でさまざまな職種を経験できる
大企業は多くの事業部門や機能部門を持っているので、社内異動をすることでプチ転職みたいなものを味わうことができます。
一般の転職だと、それまでの人脈やスキルが完全に生きないケースもありますし、新しい会社の文化ややり方に慣れる期間も必要になります。
しかし、社内異動であれば、会社の雰囲気はわかっていますし、社内のキーマンとも関係もある程度継続しながら新しい仕事をすることができます。
代表的なプチ転職といえば、事業部門をまたいだ異動や海外赴任です。
これも社内の風土によるものの、一般的に大企業の方が環境を変えられる機会は多いでしょう。
良くも悪くも教師になる先輩がいる
大企業にはさまざまな人がいます。
たとえば、次のような人達です。
- ものすごく仕事がデキる人
- 社内調整が巧みな人
- 出世欲にまみれた人
- 出世はできなさそうだけどみんなに好かれている人
- 口下手だけどある分野の専門家となっている人
- 要領はよいけどリーダーシップがいまいちな人
この人達は、よいお手本にも反面教師にもなる人達です。
どのような特徴を持った人が、どのようにキャリアを歩んでいくのか?
複数の見本を見せてもらえるのは、社員数の多い大企業ならではのメリットと言えるでしょう。
福利厚生が充実している
大企業は福利厚生が充実しています。
格安の社員寮が完備されていたり、住宅補助手当が出たりする会社も多いです。
組合員だとテーマパークの優待券などが斡旋されることもあります。
昨今だと世論も厳しく、名の通った大企業はサービス残業をさせるようなこともありません。
また、フレックスタイム制や時間有休など、個人の事情に合わせて融通の効く勤務体系を取っている会社も多くなっています。
海外出張・赴任時のサポートを万全にしてくれる
大企業で海外出張や海外赴任をすると、会社が手厚くサポートしてくれます。
会社や役職によって違いますが、以下のようなものがあります。
- 会社発行のクレジットカード(ゴールドカード)が使える(空港ラウンジに入室できるなど)
- 欧米出張はビジネスクラスで渡航
- 出張時のホテルもランクの高いホテルを前提にした社内規定(安いホテルだと安全性の懸念があるため)
- 海外赴任時の手厚い赴任手当、住居・通勤サポート
- 赴任時の一時帰国の会社負担
以前話をした中小企業の人で、中国駐在中に自分で車を運転している人がいましたが、大企業だとそもそもそんなことは認めませんし、通勤には送迎車を手配しれくれます。
失敗に対する許容度が高い
大きなお金を動かせる大企業だからこそ、失敗しても許容できるだけの体力もあります。
私もこれまで手がけたプロジェクトでの失敗や手戻りは数多くありましたし、プロジェクトが終わった後に発覚した問題で、1億円以上の追加費用を使ったケースもありました。
中小企業やベンチャー企業だと、こうした失敗は致命的なものですが、大企業だと失敗をカバーする財務的な体力がありますし、失敗をフォローしてくれる人的資源も豊富です。
一部のメリットはスタートアップや独立後でも活かせる
先のツイートにも言及しましたが、これらのメリットの一部はスタートアップなど、小さい会社に転職しても活かせるものがあります。
たとえば次のような活かし方です。
- 大企業でのお金を使った大きな失敗経験により失敗しないための勘所がわかるようになる
- 社内だけでなく社外の複数の人間との利害調整ができるようになる(昨今は社内だけで完結できる仕事は少ないので、社外の人とコラボレーションできる能力は重要です)
- 大企業を相手に仕事をするときに、誰にどのように食い込むことで仕事が円滑に進むか理解できるようになる
実際に私自身、大企業での15年で身につけたこのような能力が、スタートアップ転職後や起業後も生きています。
以下のツイートでも言及しています。
独立してわかったのは、上場企業が相手にしてくれること。こういうコラボが考えられるので会って話したいと代表窓口に連絡すると担当の人に繋いでくれます。
そして彼らも新しいアイデアに困っているので、さまざま内情を話してくれます。
この辺りは、大企業経験があってよかったと思うところです。
— セーシン (@n_spirit2004) June 4, 2019
大企業勤務のデメリット
メリットがあれば、当然デメリットもあります。
仕事のスピードが遅い
大企業では仕事のスピードが遅くなることが多いです。
その理由として、関与する人間が多くなることと、大企業が生み出す特有の病「大企業病」によるところがあります。
大企業病になっている組織は、形式的な手続きや責任回避的な言動が多くなるため、物事がなかなか進まなくなるのです。
仕事がデキる人ほど、この仕事の遅さに苛立ちを感じるようになっていきます。
また、大企業はビジネスの歴史が長いがゆえに、過去やってきたを否定するのが難しいところがあり、それがスピードを遅くさせることがあります。
詳細を以下2つの記事に書いたのでご参照ください。
関連記事:【経験者が感じた】大企業病とは 8つの特徴・症状 トップ・中間管理職から見た対策
若いうちはプロジェクトの一部しか担当できない
若いうちからプロジェクトの全てを任せてもらえることは少なく、多くの場合、プロジェクトの一部の担当としてアサインされます。
そうすると、プロジェクトの全体感がわかりにくいまま、ある特定分野のスキルだけが発達するため、上記のメリットであげた大人数をマネジメントするという経験を積めるのが遅くなってしまいます。
もちろん、頑張れば若くしてプロジェクトをまとめるリーダーに抜擢されることはあると思いますが、早くても30代前半くらいが今までの経験で見てきた最若手です。
30代前半ということは大卒で入社して10年近く経過しているので、10年程度の下積みが必要になってしまうのです。
ただし、これを打開する方法はあります。
それが以下のツイートです。
大企業にいると、裁量が与えられるのに時間がかかるのは事実
でも、社内人脈を作って、周りを巻き込みながら仕事すると実質的に裁量を持っているのと同じ状態になります
こういうスキルは、独立した後も本当に役立つので、大企業で裁量がないと嘆く前に、まず社内を巻き込む努力をした方がよいですよ
— セーシン (@n_spirit2004) June 26, 2019
公式的な権限はなくても、実質的な権限を得られれば、仕事の裁量や幅は大きく広がっていきます。
関連記事:【大企業=つまらない?】大企業でも成長できる3つの仕事
仕事がマンネリ化しやすい
異動のタイミングが合わなかったり、まわりの人との仕事の兼ね合いもあったりして、人によってはずっと同じ仕事を続けるケースも少なくありません。
本当は30代前半までにさまざまな職種を経験して、何かのプロジェクトのリーダーになりたいと思っているにもかかわらず、人員配置の都合で同じ仕事を5年、6年ずっと続けるような状況です。
もちろん、多くの会社は異動願いなどを出せば考慮はしてくれますが、必ずしも要望どおりにはならないというのが現実です。
そうなると、仕事が次第にマンネリ化してきます。
マンネリ化すると、仕事に対するモチベーションが下がっていき、会社の中で大きな仕事を任せてもらえなくなるばかりでなく、自らの市場価値を下げることになってしまいます。
もし仕事にマンネリ化を感じているなら、こちらの記事もご参照ください。
関連記事【40代サラリーマンの悩み】仕事のマンネリから抜ける3つの方法
(40代向けに書きましたが、内容は20代、30代にも当てはまるものです)
ぬるま湯の中でリスクを忘れてしまう
メリットのところに書いたように、大企業には魅力的なメリットがたくさんあります。
しかし、裏を返すと、非常に心地よい居場所でもあるのです。
- 会社がすぐに潰れる心配はない
- 毎月ある程度の給料が保証されている
- 仕事をやってもやらなくても給料が大きく変動しない
このように考え始めると危険です。
実際に潰れる心配がないとは言い切れないですし、業績都合によるリストラもあり得ます。
それは以下のような事例からもわかると思います。
富士通に関しては、このようなツイートもされています。
富士通のリストラ、時系列で考えると昨年10月に間接部門人員五千人をいきなりIT部門に転属させ、少し時間を空け新たな業務に慣れず仕事が嫌になってきた頃に今回の45歳以上全従業員の早期退職の発表だから、計画して絶滅を図るホロコーストみたいなものに見えてしまう。 pic.twitter.com/oqt0TN907U
— SOE (@S0E_2O2O) March 23, 2019
ぬるま湯に浸る時間が長くなると、自分の市場価値がどんどん下がっていき、いざリストラされたときに転職先を探すのに苦労するということにもなりかねません。
大企業勤務の活用の仕方
私自身、大企業出身だからというのもあるかもしれませんが、大企業で働くことはキャリアの中で大いにプラスになると考えています。
私は結果として辞めてしまいましたが、ずっと大企業での勤務を続けている中で素晴らしい人もたくさんいますし、50代で辞めても他に仕事がありそうだなという人もたくさんいます。
しかし、デメリットのところにも書いたように、早く伸ばしにくい能力もありますし、大企業に所属することが目的になると能力が一気に劣化するということもあります。
これから大企業にいこうと思っている人は、挙げたメリットが自分に合っているかをよく考えてみるのがよいでしょう。
これから大企業を辞めようと思っている人は、本当に自分が大企業でのメリットを十分に享受できたのか?を考えてみましょう。
もし、それがYesなら、他社でも通用するスキルは豊富だと思いますが、それがNoなら、まずは踏み留まって大企業でしかできないことを通じてスキルを磨くのも一案です。
以下の記事に大企業でのキャリアアップ方法を書きましたので、あわせてご参照ください。
関連記事【社会人5年目~10年目必見】大企業ではスキルつかない?伸ばすすべき領域と心構え
大企業への安住には要注意
大企業に勤めているからといって、安住しないように注意しておく必要があります。
なぜなら、大企業と言えどもずっと安泰とは限らないからです。
ですので、自分がいつ早期退職の対象になってもよいように準備をしておく必要もあります。
関連記事【終身雇用の崩壊】リストラ・早期退職の対象になりそうな人が事前に準備すべきこと
また、30代、40代で市場価値のないビジネスパーソンになってしまわないように、早いうちから市場で戦えるスキルを身に着けておくべきでしょう。
関連記事【30代、40代サラリーマン必見】大企業が直面する課題と今やるべき5つのこと
まとめ
以上、大企業のメリット・デメリットについてでした。
- 大企業のメリットには、社名で仕事ができる、大きなお金を動かせる、大人数を動かす経験ができる、利害調整能力が身につく、組織が動く論理がわかる、異動でさまざまな職種を経験できる、良くも悪くも教師になる先輩がいる、福利厚生が充実している、海外出張・赴任時のサポートを万全にしてくれる、失敗に対する許容度が高いなどがある。
- こうしたメリットは、スタートアップや独立後も役立つ。
- 大企業のデメリットとして、仕事のスピードが遅い、若いうちはプロジェクトの一部しか担当できない、仕事がマンネリ化しやすい、ぬるま湯の中でリスクを忘れてしまう。
- 大企業のメリットは自分の成長に寄与しているか?デメリットが自分の成長の足を引っ張っていないか?という視点を常に持っておく。
- 大企業に安住しないように注意しておくことも大事。いつ早期退職の対象になってもよいようにすると同時に、30代、40代で市場価値を保てるような努力も必要。
大企業を辞めたいと思っている人は、以下の記事も合わせてご覧ください。
関連記事:大企業を辞めたい【メリット・デメリットは?】体験談も交えて解説