独立・起業して、会社を設立したときに、活用をおすすめしたいのが、政策金融公庫の新創業融資制度です。
無担保・無保証で創業資金を最大3000万円(運転資金は1500万円)借りられるので、お金のやりくりに苦しみがちになる創業初期の事業運営を大いに助けてくれます。(2020年から運転資金は最大1000万円になっています)
私も以前、日本政策金融公庫の創業融資に申し込んで、無事に融資を受けられるようになりました。
この記事では、創業融資の申請から審査通過までのプロセス、審査プロセスの中で実際にやったこと、聞かれたことなどを実体験に基づいて書いていきます。
創業融資の全体プロセス
日本政策金融公庫のホームページにもプロセスが掲載されていますが、私が実際にやった創業融資を獲得するまでのプロセスは、次のとおりでした。
- 政策金融公庫の担当窓口を特定する
- 担当者訪問し、必要書類の特定し、アドバイスをもらう
- 必要書類を作成する
- 認定支援機関から事業に対する所見を書いてもらう
- 書類を提出し、内容を説明する
- 審査担当者による審査・面談をうける
- 審査結果の連絡をもらい、提出書類を受け取る
- 書類の返送し、入金してもらう
担当窓口は、政策金融公庫の電話相談窓口から紹介してもらう方法もあります。
しかし、私は、実際に融資を受けた経験がある知人を担当した人を介して、管轄エリアの担当者を紹介してもらいました。
飛び込みで行くよりも、紹介を通じた方が信頼度が上がると判断したからです。
創業融資に必要な書類
私が創業融資を受けるために、必要だった書類は以下の3点でした。
- 借入申込書
- 創業計画書
- 事業計画書(中小企業経営力強化資金用)
3点とも政策金融公庫の資料一覧ページからダウンロードできです。
私は創業計画書と事業計画書は、ダウンロードしたエクセルデータに入力して印刷、借入申込書は店頭でもらったものに手書きで書いて提出しました。
返済期間と据置期間
私の会社は、返済期間と据置期間は創業融資の制度上の最長期間で申請しました。
- 返済期間7年
- 据置期間1年
この条件だと、最初の1年間は利息の支払いのみで、2年目から7年目の間に6年✕12ヶ月で分割して返済をしていくことになります。
事業計画書の書き方
事業計画は、政策金融公庫が指定するエクセルのフォーマットに記載します。
しかし、私はエクセルだけでなく、パワーポイントで作ったスライドを補足資料として提出しました。
パワーポイントで視覚的に訴えた方が、事業内容の説明をしやすいと判断したからです。
創業融資申し込み用の事業計画を作るときに、私が考えたことは以下2つです。
- 売上を少なめに見積もる(想定より少なめにするか、発生開始までを長めに考えるなどする)
- 費用を多めに見積もる(人件費を高めに見積もるか、予期せぬ費用のためのバッファーを入れておくなどする)
つまり、全てがうまくいくベストケースではなく、これくらいは大丈夫だろうという標準ケースでもなく、そこからさらに保守的なケースで見積もりしたということです。
これは、創業融資の担当者に事業計画の堅実性をアピールするためです。
もっと詳しく>>事業計画の書き方
事業計画を確認してもらった認定支援機関
3つの書類のうち、「事業計画書(中小企業経営力強化資金用)」には、認定支援機関の所見を書いてもらう箇所があります。
政策金融公庫での融資の際に、認定支援機関になってもらえるのは、主に以下のような団体や個人です。
- 商工会議所
- 商工会
- 金融機関
- 税理士
- 公認会計士
- 弁護士
- 中小企業診断士
認定支援機関の詳細はこちらのPDFに掲載されています。
私は、会社の税務をお願いしている税理士の方にお願いしました。
記載すべき項目は以下の4点です。
- 実施した経営革新等支援業務の内容
- 新商品の開発または新役務の内容の所見
- 本計画の評価
- 認定支援機関の連絡先、名前(印鑑)
私の方で、「このように書いて欲しい」という内容を下書きした上で税理士さんのところに持ち込んで、内容を認めてもらい印鑑を頂きました。
創業融資面談で準備したもの・やったこと
書類を提出後、面談者の方から電話がかかってきて、面談日程を調整しました。
面談時に用意するように言われたのは以下のものです。
- 会社名義の金融機関の通帳
- 個人名義の金融機関の通帳(個人の金融資産を確認するのが目的)
- 源泉徴収票(私の場合、起業前はサラリーマンだったので)
- 事務所の契約書類
- 身分証明書
これらを面談のときに持っていくと、コピーをとられて返却されます。
面談者の方は、受付担当者の方とは違う人だったので、改めて事業計画を説明して、質問を受けました。
質問は、概ね以下のような内容でした。
- 事業計画の前提としている売上計画の妥当性
- 従業員数、必要経費の内訳
事業計画をきちんと考えて作っていれば、簡単に答えられる質問ばかりです。
説明するときに、先ほど書いたように事業計画の数字を保守的に考えていることも強調して伝えておきました。
創業融資審査 通過後の書類
審査の結果は、面談を受けてから3日後に電話で連絡が来ました。
その後、書類が会社に送られてくるので、受け取って必要事項を記入して返送します。
提出が必要とされる書類は以下の6点でした。
- 借用証書(会社実印押印)
- 会社実印の印鑑証明書
- 送金先口座の預金通帳コピー(口座番号や取扱支店が記載された最初の見開きページ)
- 収入印紙20,000円分(会社実印を消印として使用)
- 預金口座振替利用届(金融機関の窓口で、事前に確認印をもらう必要があります)
- 利用に関する同意書
これらは、郵送でもよいですし、直接窓口に行って手渡しでもよいです。
私は書類に不備があると面倒だと思ったので、実印を持って直接窓口に行きました。
実印が薄い箇所があると言われ、その場で押し直したので、窓口に行ってよかったと思っています。
政策金融公庫が書類を受け取った後、3営業日で入金されます。
創業融資にかかる期間
融資の申し込み書を受付担当の方に提出した日を起点のn日として、各プロセスを以下の日数で進み、入金に至りました。
- 受付担当者に申請書類提出(n日)
- 面談者からの連絡(n+4日)
- 面談者との面談実施(n+15日)
- 最終審査結果の連絡(n+18日)
- 書類の受け取り(n+20日)
- 書類の返送(n+21日)
- 入金(n+25日)
このように、たった25日で審査を終えて、入金してもらえました。
信用保証協会を通じた銀行融資のお願いも、申請から入金まで2ヶ月強かかりましたし、ベンチャーキャピタルからの出資だと、最短でも3ヶ月、場合によっては半年近くかかります。
それを考えても、政策金融公庫のプロセスは入金までの期間が短い、優れものだと思っています。
創業融資 審査通過のポイント
私は、面談担当者との面談が終わった後に、
「これまでの経験から見て、私の事業計画はどのような感触でしたか?」
と聞いてみました。
面談者からは、通過・不通過は自分一人では決められないが、と前置きをした上で、以下の理由で問題なさそうだと言ってもらいました。
- 事業計画を保守的に考えられていること
- 事業内容が創業融資の趣旨に基づいていること
- 事業計画に基づいてベンチャーキャピタルの支援を受けていること
- 大手企業との取引予定があること
特に3点目、4点目は大事で、信頼できる団体が何らか関係しているということは、政策金融公庫が融資をするときに強力な後押しになります。
これは、政策金融公庫の担当者が上司を含めた組織内を説得するときの重要な情報にもなります。
ベンチャーキャピタルや大手企業の取引がない場合でも、事業計画の信頼性を裏付けるもの(一番よいのは売上実績とその継続性)を用意する必要があるでしょう。
なお、当然ですが、政策金融公庫も裏取りをしますので、嘘の説明はしないようにしましょう。
私の会社の審査期間中も、政策金融公庫が裏取りをするために、関係者に直接電話をかけていたことを確認しています。
まとめ
以上、実体験に基づく創業融資制度のプロセスと、そのプロセスの中で実際にやったことでした。
文中にも書いたように、政策金融公庫の創業融資制度は、無担保で事業資金を借りれる上、審査期間も1ヶ月程度ととても早いです。
創業直後で資金に困っているなら、創業融資制度を積極的に活用することを考えるべきでしょう。