商品の値付けは企業の根幹といっても過言ではないくらい重要なものですが、実務場面では値決めの拠り所を見い出せずに苦労している方も多いのではないでしょうか。
そんな価格決定の拠り所として使われる分析にPSM分析というものがあります。
この記事では、4つの質問から値決めの参考データをとる手法であるPSM分析について解説していきます。
マーケティング戦略、価格戦略を考える際に大いに役立つ分析手法です。
PSM分析とは
PSM分析とは、Price Sensitivity Measurement(価格感度測定)の略で、ある製品やサービスについて、以下4つの質問をすることで、「上限価格」、「妥協価格」、「理想価格」、「下限価格」を導き出す分析手法のことです。
たった4つの質問で、価格感度を分析できるので、手軽に短納期で価格調査をすることができます。
質問1.いくらから高いと感じ始めるか?
質問2.いくらから安いと感じ始めるか?
質問3.いくらから高すぎて買えないと感じ始めるか?
質問4.いくらから安すぎて品質に問題があるのではないかと感じ始めるか?
この4つの質問を100~300人くらいにアンケートをとって、集計すると、一般的には以下のような図ができます。
これは縦軸に回答の割合(累積の割合)、横軸に価格をとったグラフです。
このグラフに出てくるそれぞれの線の交点は、「上限価格」、「妥協価格」、「理想価格」、「下限価格」といいます。
4つの価格の詳細を解説していきます。
上限価格
上限価格とは、最も利益が得られる価格であるが、これ以上高いと誰も買ってくれないという価格を表します。
プレミアム感を出したい高級品や玄人向けの商品の値付けの参考になります。
妥協価格
妥協価格とは、消費者が製品やサービスについて、この価格なら仕方ないという価格を表します。
理想価格
理想価格とは、消費者が安すぎず、高すぎずという感覚になる価格で、消費者に最も望まれる価格を表します。
この価格に設定すると、抵抗なく購入され、市場浸透が早まると言われています。
下限価格
下限価格とは、消費者がこの価格以下だと品質に問題があるのではないかと感じる価格を表します。
特売品、セール品の値付けの参考になります。
許容可能価格(RAP)
上限価格と下限価格の間に位置する価格のことを許容可能価格(RAP:Range of Acceptable Price)といいます。
基本的にPSM分析を元に値付けをする場合、このRAPの範囲の中で値付けすることになります。
PSM分析における注意点
PSM分析を使うと具体的な価格感度を知ることができますが、決して万能ではありません。
特に調査対象とする商品・サービスや、対象とする人を間違えると、信頼性が低い結果になってしまう場合があります。
こうしたことを防ぐためには、以下の3点に注意する必要があります。
価格をイメージしやすい商材を選ぶ
食材や鍋のような価格をイメージしやすい日用品だと分析精度が上がります。
一方で、高額すぎる商品(家など)の場合、価格レンジが広くなりすぎ、安価すぎる商品(ガム、歯ブラシなど)の場合、レンジが狭くなりすぎるのでPSM分析には不向きです。
また、価格のイメージが全くつかない専門技術や画期的技術なども不向きです。
価格をイメージしにくい商品なら先に目安を提示する
価格感度が少なそうだと感じる場合は、価格のイメージを提示する方法もあります。
たとえば、オプション機能の価格調査をする場合は、オプション無しの定価を約3万円などとして具体的に示すことが有効です。
価格の相場観を持ったターゲットを選ぶ
PSM分析をするときに価格の相場観を持ったターゲットを選定することも大事です。
対象商品の類似商品の購買経験があったり、同じカテゴリーの商品を買おうと思ったりしている人をターゲットにすべきです。
たとえば、家電商品のPSM分析をするなら、家電商品の購入機会が多い人に対して聞くべきでしょう。
まとめ
私もPSM分析を実際に使った経験がありますが、新商品や新機能の価格を決める上で参考になるものです。
特に上記で書いたように、消費者がイメージしやすい物やサービスだと比較的精度の高い示唆を得られるので、価格設定にお悩みの方にはうってつけの手法となることでしょう。
- PSM分析とは4つの質問を使って妥当な価格範囲を推定する方法である。
- PSM分析からは「上限価格」、「妥協価格」、「理想価格」、「下限価格」の4つを認識できる。
- PSM分析に基づいて値付けする場合は、値付けする商材の特徴に合わせて、許容可能価格(上限価格と下限価格の間)の中から値付けをする。
- PSM分析から信頼度の高い示唆を得るには、対象とする商品の価格イメージがつきやすく、かつその商品の価格に相場観のある人を対象にする必要がある。
価格戦略の解説記事
マーケティング理論についてもっと知るには