ビジネスパーソンにとってロジカルシンキング(論理的思考力)は、専門性をフルに発揮するための基礎的な能力と言えます。
この記事では、そもそもロジカルシンキングとは何なのか?ロジカルシンキングを身につけるための基本的な概念、応用例を紹介していきます。
ロジカルシンキングとは-習得による4つのメリット
ロジカルシンキングとは、文字通り論理的思考力のことです。
ロジカルシンキングのことを難しい理論をこねくり回して相手を論破するための思考のように考える人も少なくありません。
しかし、本来のロジカルシンキングはその逆で、難しいものをシンプルにして、構造化(誰が見てもわかりやすく)し、相手を納得させ、相手と協調するための思考方法です。
ロジカルシンキングを習得することで、次のようなメリットがあります。
- コミュニケーション能力が上がる
- 物事をわかりやすく伝える能力が上がる
- 分析能力が上がる
- 問題解決能力が上がる
そして、これらの能力が上がると、短い時間でより多くの成果を出せたり、より難易度の高い仕事で成果を出せたりするようになっていきます。
上記、4つの能力に関して、それぞれ詳細を見ていきます。
コミュニケーション能力の基礎となるフレームワーク
コミュニケーション能力を上げるためには、基礎となるフレームワークの習得が不可欠です。
演繹法・帰納法
ロジカルシンキングにおけるコミュニケーションの基礎は、この演繹法と帰納法です。
演繹法とは、前提条件と観察事項から結論を導く考え方、帰納法とは、複数の観察事項から結論を導く考え方です。
この2つの概念を正確に理解しているだけでも、ロジカルシンキングの能力を飛躍的に高めることができます。
また、自分の論理を正しく構築できるだけなく、相手の論理の誤りや飛躍に気づけるようにもなります。
ロジカルシンキングを基礎から学びたいという方は、まず演繹法と帰納法を学ぶことからおすすめします。
演繹法と帰納法を活用すると、自分の頭を使って物事を考えられるようになっていきます。
ピラミッドストラクチャー(ピラミッド構造)
ピラミッドストラクチャー(ピラミッド構造)とは、主張とその根拠を構造的に表したもので、通常は主張を頂点として根拠がピラミッド上に配置されるためピラミッドと呼ばれます。
ピラミッドストラクチャーを活用することで、論理構成を図式化することができ、自分の主張をサポートするためには、根拠として何を言う必要があるかを明らかにすることができます。
物事をわかりやすく伝えるためのテクニック
ロジカルシンキングの基本概念を活用すると、物事をわかりやすく伝える能力も上がっていきます。
わかりやすい報告書の作り方
報告書をわかりやすくするための肝は構造化です。
先ほど紹介した演繹法と帰納法、およびピラミッドストラクチャーを活用すると、報告書を構造化して作成できるようになります。
わかりやすい報告書の作り方は、大きく2つあります。
1つはピラミッドストラクチャーを活用した6つのステップ、もう1つは簡易報告に向いたフレームワークYWTです。
いずれも、相手にとってわかりやすく構造化することがポイントです。
わかりやすいプレゼン資料の作り方
プレゼンテーション資料も構造化することによって、相手にわかりやすく伝えることができます。
単に綺麗なスライドを作るのではなく、聞き手の分析からストーリー作り、内容をわかりやすく言葉と図解で説明する必要があります。
以下の記事では、わかりやすいプレゼン資料の作成方法を8つのステップで解説しています。
営業トークに必須のFABE分析
ロジカルに考えたことを営業トークに落とし込むときに使えるのがFABE分析です。
FABEとは、それぞれ次の単語の頭文字を表したものです。
- 特徴(Feature)
- 利点(Advantage)
- 利益(Benefit)
- 証拠(Evidence)
人は商品を売り込むときに、ついつい商品の特徴を一生懸命話してしまいがちですが、相手が本当に知りたいのは(相手にとっての)利益です。
FABE分析を使うことで、商品の特徴が相手の利益にどのようにつながているのかを明らかにすることができ、営業トークの質を格段に上げることができます。
https://www.nsspirt-cashf2.com/ba/fabe/
分析能力を高めるために必要な考え方
ロジカルに物事を考えるためには、データを定量的に分析するテクニックも必要です。
4つのデータ分析手法
データ分析をする方法は、いくつかありますが、よく使われるものとしてファクター分析、マトリックス分析、パレート分析、感度分析の4つがあります。
以下の記事では、4つの分析・データ可視化手法を紹介しています。
相関係数・回帰分析
分析するとは、物事の相関関係・因果関係を明らかにすることでもあります。
そうした相関関係や因果関係を定量的に明らかにする際に使えるのが、相関関係と回帰分析です。
相関係数とは、2つの事象が相関関係にあるかどうかを定量的に示した数字です。
相関係数が大きければ大きいほど、2つの事象には相関があるとされます。
回帰分析とは、ある原因に対し、結果となる数字がどのような関係を持っているかを調べる際に用いるもので、よく知られているものとして最小二乗法があります。
相関係数と回帰分析を上手に使うことで、物事の因果関係を説明できるようになります。
フェルミ推定
データ分析をする際に、公開情報だけでは拾えない数字もいくつか出てきます。
そうしたときに使えるのがフェルミ推定です。
フェルミ推定とは、未知の数字を推測可能なレベルまで分解することで、未知の数字の大まかな規模を推定する手法です。
たとえば、ネット通販における日本酒の市場規模というのは、データを調べても出てこないかもしれません。
そのようなときに、フェルミ推定を使うと、ビジネスを検討する上で意味のあるレベルで市場規模を推定できるようになります。
問題解決能力を向上させるためのフレームワーク
ロジカルシンキングを使う重要な目的の1つが、問題解決です。
以下のフレームワークの習得は、問題解決能力の向上に役立つものばかりです。
MECE
MECEとは、物事を漏れなくダブりなく分けた状態を示します。
「MECEに分ける」などという言い方をします。
MECEを使うことで、検討漏れや重複検討が無くなるので、物事を効率よく考えることができます。
演繹法・帰納法がコミュニケーションの基礎となる考え方だとすると、MECEは問題解決の基礎となる考え方です。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、文字どおり論理を構成するツリー状のもので、表層に見えている問題から真の問題に深掘りするときに大変役に立つツールです。
ロジックツリーは、1つの問題を次の階層、その次の階層という形で問題を小さなものに分解していく階層構造をしています。
各階層をMECEに分けることによって、問題の原因分析や、問題に対する解決策を漏れなく抽出することができます。
仮説思考
問題解決をする際に、闇雲に調査したり、解決策を考えたりしても時間がかかるばかりで、とても効率が悪くなってしまいます。
そうした調査や解決策実行の手間を大きく減らすための考え方が仮説思考です。
仮説思考とは、問題の原因や解決策について、仮の結論を置いて、その仮の結論が成立するかという観点で検証を進めていく思考方法のことです。
仮の結論を作って検証することで、検証作業に無駄がなくなり、仕事を効率的かつスムーズに進められるようになります。
問題解決4つのステップ
問題解決というと、いきなり解決策を考えてしまいがちです。
しかし、問題解決を図るには、問題を適切に設定して、問題の箇所を特定して、その問題が起きている原因を整理し、最後に解決策を考えていく手順が必要になります。
以下の記事で、問題解決をするための4つのステップを詳細に解説しています。
その他の考える力を高めるツール
考える力を高めるツールは、他にもあります。
交渉のフレームワーク BATNAとZOPA
相手と交渉する際に、重要となる概念の1つがBATNAとZOPAです。
BATNAとは、交渉が決裂したときの対処案の中で最もよい案という意味で、ZOPAとは、合意可能領域という意味です。
交渉に臨む際には、プロセスを整理して、BATNAとZOPAを明確にすることが大事になっていきます。
TOCクラウド・対立解消図
二者択一の選択肢が究極の選択になって困ってしまっている。
そんな状況を解消してくれるのが、TOC(制約理論)で使われるTOCクラウド(対立解消図)です。
TOCクラウドは、対立している概念の根底にある制約を見つけて、それを解消するということです。
発案者であるゴールドラット氏は、対立(コンフリクト)が生じる背景には、間違った前提・仮定があるからだと言っています。
コンフリクトが生じた場合、それは誰かが間違った仮定をしているからだ。しかしその仮定は修正することができ、修正することによってコンフリクトは取り除くことができる。
出典:クリティカルチェーン
TOCクラウドは、そうした前提・仮定の間違いを検証でき、対立を根本から取り除くための考え方です。
四分割表
人は、あることが原因で何か目立つ事象が起こったときに、他の事象も同様の原因で発生していると考えてしまいがちです。
たとえば、昔は、雨乞いをすると雨が降ると考えられていましたが、それは雨乞いをしたときに雨が偶然降ったことが印象的なこととして人の記憶に刻まれたからです。
今では、誰も雨乞いの効果を信じていませんが、それは統計的なデータに基づいて雨の確率を予測できるようになったからです。
現代においても、かつての雨乞いのように信じられていることは多いですし、たまたまニュースで見たことがその事象の代表例みたいに感じてしまうことも少なくありません。
そうした、考え方を根本から検証できるツールが四分割表です。
四分割表を使うことで、偶然そうなったのか、必然として起こる話なのかを冷静に検証できるようになります。
論理的思考(ロジカルシンキング)のおすすめ書籍
以下の記事で、私が厳選しておすすめしたいロジカルシンキングの本をまとめていますので、あわせてご覧ください。
ロジカルシンキングを鍛えられる講座
最近ではビジネスを動画で学ぶこともできます。
たとえば、シリコンバレー発祥のオンライン学習プラットフォームUdemy(ユーデミー)だと、ビジネスの専門知識をじっくり学べます。
- 15万以上の講座の中から自分に最適な講座を見つけられる
- その道の専門家が丁寧に解説してくれる
ロジカルシンキング・論理思考関連だと、4000人以上の受講者がいる「論理的思考を身に付ける】売上・利益を上げるために使える24の実践フレームワーク」がおすすめです。
関連記事:Udemyのカテゴリー別おすすめ講座