債券の中には、利付債と割引債というものがあります。
この記事では、利付債と割引債について解説していきます。
利付債とは
利付債とは債券の発行者から利子(クーポンと呼びます)が支払われる債券のことです。利付債は固定利付債と変動利付債に分けられます。
固定利付債とは
固定利付債とは、債券の利子が発行当初のまま固定したものを言います。そのため、固定利付債は金利の変動により価格が上下します。
今、3%のクーポンの付いた10年物の債券を100万円分持っていたとします。金利変動がなく5年後も5年ものの債券のクーポンが3%のままなら、債券の満期日までに得られるキャッシュの現在価値は100万円になります。ところが、5年後に5年物の債券のクーポンが2%で発行されているとしたら、債券の満期までに得られるキャッシュの現在価値は104.7万円になります。(下表を参照)
(単位:万円)
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 現在価値の累計 | |
貰えるお金 | 3 | 3 | 3 | 3 | 103 | – |
金利が3%のとき の現在価値 |
2.91 | 2.83 | 2.75 | 2.67 | 88.8 | 100 |
金利が2%のとき の現在価値 |
2.94 | 2.88 | 2.83 | 2.77 | 93.3 | 104.7 |
(注:計算では6年後からを1年目としています。)
これは次のように理解すると良いと思います。市場では債券のクーポンが2%であるにもかかわらず、毎年3万円のクーポンが付いた債券を100万円で売ってしまうと割が合いません。毎年3万円のクーポンが付く債券は、そのときの金利の実情に合わせた価格で売られるのが筋です。妥当な価格をDCF法を使って計算した結果が104.7万円だったということです。
変動利付債とは
変動利付債とは満期までにクーポンが見直されるような債券のことです。クーポンは通常半年程度で見直されます。このときクーポンのベースとなるのが、LIBORです。
変動利付債の購入は将来の金利動向の見方がポイントとなります。金利が上がると固定利付債では、そのときの金利の実情に合ったクーポンを得ることができません。変動利付債には、金利上昇局面で金利が見直され、上がっていくというメリットがあります。逆に、発行者側からすると、金利が下がると予想した場合、変動利付債にした方が金利コストを抑えることができます。
割引債とは
割引債とはクーポンの付いていない債券のことです。したがって、割引債に投資をしても、毎期利子を受け取ることはありません。しかし、お金の借り手は貸し手に利子を付けて返すのが世の常識です。
そこで、割引債の場合、クーポンが付いていないかわりに、発行価格を償還価格より安くすることで、貸し手は利子相当のものを受け取ることになります。
たとえば、償還価格が100万円になるような5年物の割引債の場合、利子3%に相当した発行価格はいくらになるでしょうか?これは利子3%で5年後の100万円を現在価値に直せば求められます。
発行価格 = 100×(1+0.03)5
= 86.3万円
発行価格86.3万円で償還価格100万円なら、5年間で利子3%に相当するお金を受け取ったことになります。