仮説思考とは、ある論点に対して、その時点で考えられる仮の答え(=仮説)を置いて考える思考方法のことです。
仮説思考には、仕事の生産性を大幅に向上させるメリットだけでなく、仮にしても失敗をしても仮説を振り返ることで大きな学びを得られるメリットもあります。
仮説思考のメリットは?
- 無駄な仕事をしなくて済むようになる
- 仕事のスピードが早くなる
- 仮に失敗しても、失敗から大きな学びを得られるようになる
- 結果として、仕事で多くの成果をあげられるようになる
この記事では、ロジカルに物事を考えるための基本となる仮説思考のプロセス、よい仮説の条件や作り方などを解説していきます。
仮説思考のプロセス・やり方
仮説思考のプロセス・やり方は、以下5つのステップで表せます。
仮説思考の手順
- 仮説を立てる
- その仮説を立証するには何が言えればよいか考える
- 仮説立証のために言いたいことが言える情報を集める
- 集めた情報を解釈して言いたいことを導き出す
- 仮説が立証できそうにない場合は、もう一度仮説を立て直す
ある論点に対して、考えられるすべての選択肢を網羅的に検討するのは、大変な労力を要します。
一方で、仮の答えとなる仮説を置いて考えると、分析・調査の無駄が少なくなるため、精度のよい仮説思考を身につけることは仕事のスピードアップにつながります。
よく分析が上手だと言われる人がいますが、実は分析が上手な人は、仮説を作るのが上手だと言われています。
ビジネスが上手な人も実は精度のよい仮説を持っている人だと言われています。
経験が少なく仮説の精度が低いと、このプロセスを何度も回す必要があり、網羅的な検証よりも労力がかかるように見えるかもしれません。
しかし、論点に関する周辺知識・経験が増えてくると、精度の高い仮説を立てられるようになるので、少ない労力で論点に対する答えを導くことができるようになってきます。
よい仮説の条件は?
よい仮説には、以下3つの条件があります。
よい仮説の条件
- 従来の思い込みをくつがえす仮説
- 目の前のデータに左右されない仮説
- 次のアクションにつながる仮説
それぞれ詳細を解説していきます。
従来の思い込みをくつがえす仮説
一般的に知られていることから容易に導ける仮説だと、従来の常識に沿った平凡な結論になってしまいがちです。
平凡な仮説だと競争相手も簡単に気づく可能性がありますし、顧客を驚かせるような製品やサービスにもつながりません。
「今まで重要なことはAだと思われていたけど、実はBが重要なのではないか?」
このように従来の常識は「単なる思い込みかもしれない」と考えて、その思い込みを覆すような新規性・独自性のあるものは良い仮説の第一条件といえます。
目の前のデータだけに左右されない仮説
目の前にあるデータだけで仮説を立てると、そのデータだけに考えが流されてしまいます。
その結果、偏った視点に沿った仮説になってしまう可能性があります。
目の前に起きていること、見えていることだけから仮説を立てるのではなく、「もしかしたら、裏ではこんなことが起こっていないだろうか?」と考えて、仮説を考えることも大事です。
次のアクションにつながる仮説にする
仮説を立てて検証することあくまで中間地点なので、仮説を検証した後のアクションにつながる仮説にすることも大事です。
たとえば「40歳の人は、39歳の人よりもよく食べる」という仮説を立てたとして、立証する意味はあるでしょうか。
仮にこの仮説が立証されたとしても、次のアクションにどのようにつなげてよいかわかりません。
よい仮説の作り方【仮説を作るためのポイント】
よい仮説を作るためには、仮説の論理構造を整理する必要があります。
論理構造とは、「Aという前提条件でBというアクションをしたときにCという結果が生まれる。なぜならばDだからである」という因果を明確に示す構造のことです。
仮説を作るときにはこのA(前提)、B(アクション)、C(結果)、D(その理由)をあらかじめ整理しておくことが重要になります。
よい仮説の作るときに考えるポイント
- 前提条件を整理する
- アクションを整理する
- 前提条件とアクションによって生まれる結果を想定する
- その結果が生まれる理由を考える
それぞれ詳細を解説していきます。
前提条件を整理する
仮説を立てるときには、はじめに前提条件を整理しておきます。
前提条件には、政治・経済・社会といったマクロな視点もありますし、個別の顧客や会社の事情などのミクロな視点もあります。
また、関連する重要な前提条件を整理することで、他の問いへの答えとの整合性を確認できるようにもなります。
たとえば、「高齢者向けのサービス」を検討する場合には、高齢者の市場や高齢者の購買行動の変化などを前提条件として整理しておきます。
既存顧客向けに新たなサービスを考える場合には、顧客が困っていることを前提条件として考えておきます。
アクションを整理する
前提条件を踏まえて、とるべきアクションを考えます。
たとえば、「高齢者の購買行動が変化している」という前提条件に対して、「高齢者向けサービス住宅向けの新規商材を開発する」というアクションがあるかもしれません。
「顧客は営業の生産性が悪くて困っている」という前提条件に対しては、「営業コンサルティングを提案する」というアクションがあるかもしれません。
前提条件を踏まえたアクションを考えることで、起こる結果を想定しやすくなります。
前提条件とアクションによって生まれる結果を想定する
前提条件とアクションを踏まえた上で、期待する結果を考えます。
先ほどの例で考えてみます。
「高齢化社会が進む」という前提で、「高齢者向けサービス住宅向けの新規商材を開発する」というアクションとると、「軸となる新規事業を生み出せる」という結果が生まれるかもしれません。
もう少し具体的に「売上高◯億円の新規事業を生み出せる」としてもよいでしょう。
「顧客は営業の生産性が悪くて困っている」という前提で「営業コンサルティングを提案する」というアクションをとると、「営業コンサルティングを受注できる」という結果になるかもしれません。
その結果が生まれる理由を考える
前提条件とアクションがあれば、上記のように何らかの結果が想定されることでしょう。
しかし、それだけでは不十分です。
「高齢者向けサービス住宅向けの新規商材を開発する」というアクションとると、なぜ「軸となる新規事業を生み出せる」のか?
「営業コンサルティングを提案する」というアクションをとると、なぜ「営業コンサルティングを受注できる」のか?
仮説の段階で、「その結果が起こる理由」を明確にしておく必要があります。
仮説を立てたときに理由を明確にしておかないと、後から振り返ったときに「何が想定どおり」で、「何が想定と違ったのか」を振り返れません。
理由がはっきりしていると、仮説が立証できるできない関わらず、仮説検証のプロセスから大きな学びを得られるようになるのです。
まとめ
以上、仮説思考についての解説でした。
仮説思考の手順
- 仮説を立てる
- その仮説を立証するには何が言えればよいか考える
- 仮説立証のために言いたいことが言える情報を集める
- 集めた情報を解釈して言いたいことを導き出す
- 仮説が立証できそうにない場合は、もう一度仮説を立て直す
よい仮説の条件
- 従来の思い込みをくつがえす仮説
- 目の前のデータに左右されない仮説
- 次のアクションにつながる仮説
よい仮説の作るときに考えるポイント
- 前提条件を整理する
- アクションを整理する
- 前提条件とアクションによって生まれる結果を想定する
- その結果が生まれる理由を考える
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