海外との仕事・語学

【ドイツ企業と5年間仕事して学んだ】ドイツ人との仕事のやり方

日本とドイツは自動車や医療機器などメーカー系を中心にビジネスでの交流が盛んで、日本人とドイツ人が一緒に仕事をする機会は多くあります。

私も5年間で4社のドイツ企業と一緒に仕事をしてきた経験がありますが、私もそうでしたし、私のまわりの人もそうですが、ドイツ人との仕事のスタイルの違いに戸惑いを感じるケースが多かったです。

しかし、5年間一緒に仕事してくる中で、私なりに何となくドイツ人とはこんな感じで仕事をするのがよさそうだなというがわかってきました。

あくまで私個人の経験から考えたことなので、必ずしも全ての場面に適用できないかもしれませんが、私なりに感じたことを書いていこうと思います。

ドイツ人の仕事のスタイル

ドイツ人の仕事のスタイルとして、以下のような特徴を持っている人が多いです。

論理的に物事を考える

ドイツ人は理詰めで物事を考えるのが好きな人が多いので、順序立てて腹に落としていかないと納得されないケースが多いです。

特に●●というベネフィットがあるというありますというと、必ずと言っていいほど、

「その証拠となるデータは?」

と聞かれます。

このブログでFABEというフレームワーク(以下記事)を紹介していますが、ドイツ人はこの中でEの部分をはっきりさせたいと思っている人が多いのです。

FABE分析とは【営業トークや顧客視点のプレゼンに役立つフレームワーク】
FABE分析とは【営業トークやプレゼンに役立つフレームワーク】FABE分析(ファブ分析)とは、プレゼンテーションや営業トークにおいて、商品やサービスの特徴とベネフィットをわかりやすく伝えるときに使う手法です。特徴(Feature)利点(Advantage)便益(Benefit)証拠(Evidence)の頭文字からFABE分析と呼んでいます。...

批判することが好き

批判精神にあふれる人が多いです。これは悪気があるのではなく、こうやればよくなるはずだという意思を持っている人が多いという好意的な見方もできます。一方でこれは相手への攻撃、または相手を疑っているという捉え方にもつながります。

私が、ドイツ人の研修生を日本に受け入れたときに、最後に学んだことのまとめをプレゼンしてもらう機会がありました。そこでそのドイツ人は、プレゼンにもっとこうすればよいとか、このやり方はうまくないなどと批判が並んでいたのです。

本人的には建設的に批判をしているつもりなのですが、日本人が見たら自分達のやっていることを全否定決して良い気分のするものではありませんでした。最終的にそのドイツ人の彼には、日本人がプレゼンを聞いてどういう受け取りするかを丁寧に説明した上で修正してもらいました。

担当外の仕事はせず、担当者に回すこともしない

これはドイツ人に限った話ではなく見られることですが、担当外の仕事は一切しません。ただ、ドイツ人は(経験上欧米は全般的にそうでしょうけど)、業務外の連絡がきたときに、こっちの人が適切な人ですよというレスポンスもなく、ほったらかします。

私がドイツ企業とやりとりして間もない頃に、ある案件に関することをよくやりとりしていたドイツ人の相手にメールしました。ところが、何日経っても返ってこず、後日電話で確認したら、自分はその件は担当外で●●に聞いてくれという回答だったのです。

このあたりはアジア人だと、こっちの人が担当だよと返してくれるのですが、ドイツ人は全く無視してしまうのです。

残業しない、バカンス優先

これは日本以外の特徴としてよく見られる話でドイツに限った話ではないですが、仕事は残して帰ります。特にドイツは週40時間勤務の縛りがあるので、仕事があろうがなかろうが帰ります。特に金曜日はその週の時間調整のために早く帰ってしまいます。

また、有給休暇は全て消化することになっているので、特に夏休みとクリスマス休暇前を中心に長い休みを取る人が多いです。夏休みは7月~9月の間で2-3週間とるケースが多く、年末は12/10日前後から休みに入る人もいます。

日本人が合うと感じるところ

ドイツ人は他の外国人と比べて日本人と合っているなと思うところもいくつかあります。

真面目で着実に仕事を進める

ドイツ人はラテン系の人とは違って、真面目に少しずつ仕事を進めるのが得意な人が多いです。その点は日本人と合う部分が多いです。

たとえば、何かのトラブルが起きたときに、中国人やアメリカ人だとトラブルの原因よりも、まず次をどうするか考えよう細かい話はその後だという発想の人が多いですが、ドイツ人はそもそも何でこんなことが起きたのか?を考えます。

彼らにとっては、なぜ起きたのかわからないと、打ち手が正しいかわからないという極めて明快なロジックなわけです。このあたりは、比較的日本人と相性の合うところだと思います。

物をより良くしようとする姿勢

ドイツは物づくりの会社が多いですが、多くのドイツ人は自分たちの作っているものをより良くしようという考えています。こういう部分があるので、特に日本人とドイツ人は技術者同士の相性が比較的よいです。

日本人が合わせにくいと感じるところ

一方で合わない、合わせづらいと感じる部分を挙げてみます。

なかなか妥協しない

物をより良くしようという姿勢は日本人と合う部分でもあるのですが、ときにそれが度を超えることがあります。

日本人は、どちらかというと納期を先に考えて、その中でできることを最大限やろうという発想をします。しかし、ドイツ人はあるべき姿を追求することこそが大事だと考えます。

ビジネスの観点では良し悪しはケースバイケースなのですが、ドイツ人の安易に妥協しないところは日本人から見ると「何でそこまで?」と感じてしまうのです。

また、自分の担当領域に関する責任感が強いので、部門間の協議でもなかなか妥協しないところがあります。

直接的な批判が多い

相手を批判する言動が多いです。これは会議などでも顕著で、会議ではドイツ人同士であっても、相手がアメリカ人であっても、日本人であっても、かなり直接的に相手を批判します。

理解ができなことは、婉曲的な言い回しをせずにはっきり理解できないと言いますし、議論の中で喧嘩になることも厭わないところがあります。それくらい自己主張がはっきりしているということです。

ただし、会議が終わった後は、何の後腐れもなさそうに談笑したり、食事したりしているので、仕事は仕事として役割を全うしつつも、一旦仕事を離れれば、ひとりの仲間として考えるようです。

以下ツイートもご参照ください。アメリカも同じようなところあります。

ドイツ人も似たところありました。日本でも空気を読みすぎずに、これくらいやりあった方がより良いものが生まれると思っているのですが、日本でこれをやると仕事の場面以外でも微妙な人間関係になってしまうことが課題なんですよね。

ボスの命令は絶対と考えている

ボスの命令に対する服従度合いは、日本人以上にはっきりしています。あんなに論理的で自己主張をするドイツ人でも自分の人事権を持っているボスにだけは物凄く従順になります。

実はこれのおかげで、以下のツイートのようなこともあります。

ドイツ人との仕事のやり方

これまでのところを踏まえて、ドイツ人との仕事のやり方のポイントをまとめます。

より良くしようとする姿勢を尊重してあげる

もし納期を考えずにべき論を言い出したときには、それを一旦受け入れましょう。その上で、目的を達成できる手段をオプションで整理しながら現実的な解を探るようにするのがよいです。

ドイツ人は論理的な人が多いので、オプションをきちんと見せれば、その中でどれがよいか現実的な判断をするようになります。

ドイツ人の批判は人格批判ではないと心得る

打ち合わせの場で激しく批判されても、決して人格批判されているわけではないと考えましょう。

批判をされたときは、冷静に相手の言い分に対して感情的にならずに反論するのがよいです。言われっぱなしで受け入れるのは最悪ですので、反論があるなら必ず反論しなければなりません。(反論が無ければ全て受け入れたと見なされてしまいます)

最低限やって欲しいことだけ納期を守らせる

先に書いたようにドイツ人は残業をせずに休みを優先します。したがって、納期が守られないことがしばしば起きます。ですから、最低限やって欲しいこと、やらなければならないことだけ強く納期プッシュをして、それ以外のことは納期は守られないものと考えて仕事をするのがよいです。

また、日本人側も理想の高いドイツ人からの要求に対して、何でもかんでも納期どおりにやるのではなく、重み付けして納期優先のものと、多少遅れてもよいものを仕分けするのがよいでしょう。案件によってはプッシュされるまで置いておくものがあってもOKです。

ドイツ人のボスに対して共闘する姿勢を作る

ドイツ人は自分の仕事をボスにどのように報告するかをいつも気にしています。ですので、カウンターパートとなるドイツ人のボスの特性を掴み、そのボスにどう報告できるようにしてあげるのかを一緒に考える姿勢を見せましょう。

そうすると、批判一辺倒だった相手のドイツ人と距離感を縮められるようになります。

まとめ

私はさまざまなドイツ人たちと仕事をしてきましたが、このドイツ人の日本人と合わない部分にこそ彼らの強みがあると感じています。

そのおかげか、日本の会社では生み出しにくいようなデザイン・性能のものを作るので、世界中にドイツの会社の製品のファンがいたりします。

ドイツ人との仕事に慣れない方は、戸惑いも大きいでしょうが、彼らの良いところを吸収することでビジネスパーソンとしてさらなる成長につながるのではないかと思います。

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