この記事では、おすすめのビジネス書の中から一冊を紹介します。
今回は、先日読んだ「劣化するオッサン社会の処方箋」について書評を書いていきます。
先日ツイートしましたが、これからオッサン化したくない人は絶対に読んでおくべき1冊です。
劣化するオッサン社会の処方箋@shu_yamaguchiを読了
劣化したオッサンが生まれるメカニズムを解説
✓大事なことは成功することではなく、チャレンジすること
✓学びの量は失敗の回数の正相関する
✓安定は不安定、不安定は安定昔嫌だったオッサンにならないための必読書https://t.co/e0rJgBRcT9
— セーシン (@n_spirit2004) June 17, 2019
順に書いていきます。
「劣化するオッサン 社会の処方箋」印象に残った箇所
本書で印象に残った箇所を3つ挙げていきます。
システムの経時劣化性
本書で、面白かったのは、人材の能力は正規分布ではなく、パレート分布しているということです。
正規分布とは、平均値を頂点として、プラスマイナスの方向に同じように分布するもの。一方で、パレート分布は、2:8の法則で有名な2割の特性が全体の8割を占める分布をするものです。
劣化するオッサン社会の処方箋より引用
著者は、本書の中で、一流、二流、三流というのは、正規分布するのではなく、パレート分布していて、三流が多数、二流がその次で、一流はごく少数だとしています。
また、二流の人は一流の人がわかるが、三流の人は一流の人を変人だと思って判定できないので、二流を一流だと錯覚してしまうということです。
こうしたことから、大衆は二流は支持し、一流の存在を恐れる二流は一流を抹殺するようなメカニズムが働き、世の中は二流の人が増えていく。
二流の人は自分より優れた人を選ばないので、三流を後継者に選ぶという形でシステムは劣化していくということです。
私も、このメカニズムに近い例を間近で感じたことがあります。それは、海外拠点の人事でした。
海外拠点の立ち上げ時は、大抵エースが送り込まれます。
それはエースでないと、事業の立ち上げは難しいからです。
しかし、そこから後継者を選ぶ段階になると、次第に人材が劣化していきます。
最初は事業拡大を目指して作った拠点が、いつの間にか安定販売・供給できればよいというモチベーションに変わっていき、場合によっては閉鎖の憂き目に遭ってしまうのです。
若手の武器はオピニオンとエグジット
上層部のオッサンが権力を握っている構造の中で、若手がやるべきことはオピニオン(意見を表明すること)とエグジット(組織から離れること)が重要だとしています。
この2つを使って、オッサンに敢然と立ち向かうことが、オッサンの態度を矯正するための重要なフィードバックだというわけです。
配下の人からのフィードバックが足りていないために、自分の人格や人望について勘違いしている人があまりにも多い
劣化するオッサン社会の処方箋より引用
そして、エグジットする(組織から離れる)ためには、労働市場で高く評価されるスキルと、人脈や評判が大事になるとも説いています。
サーバント・リーダーシップの重要性
サーバント・リーダーシップとは、権力に頼った支配的なリーダーシップではなく、権力に頼らずに支援的なリーダーシップのことです。
オッサンは、従来の支配型リーダーシップをやめて、イニシアティブを積極的にとれる若手に対するサーバント・リーダーシップを発揮すべきだとということです。
そして、サーバント・リーダーは、バカでも構わないとまで言っています。
サーバント・リーダーは、具体的な計画やスキルの知識を必要とせずに、若手が支援を要請したときに、その経済力や人脈などをフルに生かしてサポートしていくことが大事だというわけです。
若い人は、オッサンにはできない柔軟な発想ができるので、支配型リーダーシップでその芽を潰してしまうのではなく、サーバント・リーダーシップでその芽を大事に育成していく姿勢が大事なのです。
学びで重要なのは経験の質
従来のオッサンが優位性を誇示できた源泉のひとつが、長年その業務をやってきたというものです。
長年やってきて経験豊富だから、オッサンの言うことを聞くべきだという論理です。
筆者は、これに真っ向から反論しています。
たとえば、10年の経験と言いながら、1年の経験から学び、残り9年は同じことを繰り返しただけなら、それは10年の経験とは言えないという例を出しています。
大事なのは、経験の長さではなく質であり、いかにさまざまなことに挑戦を続けて、質の高い経験を積むこと。
しかし、オッサンは若手に渡せば良い経験が積めるであろうポジションにしがみついているので、結果としてオッサンは同じことの繰り返しで成長せず、若手は成長機会を与えられないままになっているのです。
「劣化するオッサン 社会の処方箋」からの学び
以上4つのポイントから個人として何を取り組むべきか?
冒頭のツイートにも書いたように、本書にも提言があります。
- 大事なことは成功することではなく、チャレンジすること
- 学びの量は失敗の回数に正相関する
- 安定は不安定、不安定は安定
これらを踏まえて、40代の私なりの考えを3つまとめてみました。
ポジションに固執しない
まず大事なことは、ポジションに固執しないということでしょう。
私は大企業に15年いて、自分と同年代、または50代の人達を何人も見てきましたが、ポジションにしがみつくのが大好きな多くいました。
また、ポジションがその人の実力を表す代替指標という位置づけになっているので(実際はポジションと実力は必ずしも比例しないですが)、会社側も面子に配慮して安易にポジションを剥奪することができません。
しかし、私のまわりの人を観察してきた限り、ポジションにしがみつく人は、例外なく劣化したオッサンになっています。
現状のポジションにこだわるのではなく、さらに上を目指すべく本質的な努力をするか、いっそ捨ててしまうか。40代になったら、はっきりさせた方がよいでしょう。
質の高い経験を積める環境に身を置く
質の高い経験を積むには、上で書いたような同じことの繰り返しを避けるべきでしょう。
漫然と5年やりましたということではなく、密度の高い1年、1年を過ごす意識が必要になるのです。
そのためには仕事をマンネリ化させずに新しいことにチャレンジするのがよいでしょう。
好きなことをやる
質の高い経験を積むには、密度の高い学びが必要になりますが、嫌いなことを学び続けるのは無理があります。
そうなると、必然的に好きなことをやるのがよいということになります。
好きなこととは、以下のようなことです。
- 何時間やっていても飽きないこと
- 自分で主体的に創意工夫してみようと思えること
- 休みの日でもやってみようと思えること
- 極論言うとお金を払ってでもやりたいこと(給料をもらってやれるなんて幸せだと感じられること)
こういう仕事をしているときは、学びの密度が格段に高くなります。
勘違いしてはいけないのは、好きなこと=ラクなことではないということです。
たとえ苦しい場面があっても、乗り越えようと頑張れることが、自分の好きなことです。
ただし、さまざまなことにチャレンジしなければ、自分の好きなことはわかりません。
そういう意味で同じ作業の繰り返しにならないように、意識的に環境を変える必要があるのでしょう。
まとめ
以上が「劣化したオッサン社会の処方箋」の書評・感想でした。
ここで挙げた以外にも、劣化したオッサンが出来上がるメカニズムがわかりやすく解説されています。
将来、劣化したオッサンにはなりたくない。
そんな人は、ぜひ本書を手にとるべきでしょう。
転職を考えてみることも劣化を防ぐための1つの手段です。
世の中の求人を確認することで、質の高い経験が積めるチャンスが見つかるかもしれませんよ。
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