先日読んだ「リ-ダ-にとって大切なことは、すべて課長時代に学べる はじめて部下を持った君に贈る62の言葉」を題材に、課長が身につけるべき周囲を巻き込む力んついて書いていきます。
企業の中枢を担う課長
日本の一般的な企業で、中間管理職の代表格と言えば、課長です。
課長は、経営陣とも直接会話ができ、かつ末端の現場の部下ともコミュニケーションがとれる立ち位置にあり、多くの企業で経営と現場を結びつける重要な存在となっています。
課長が元気な会社は、会社自体も元気で、そうでないと、会社自体も元気がない。大きな組織になるほど、現場でリーダーシップを発揮する課長が会社に与える影響は大きくなります。
そんな課長に関する心得を書いた本である「リーターにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる」の内容を紹介しながら、私の経験も交えて、課長として周囲を巻き込むときのポイントを書いていきます。
本書は、キヤノン電子の社長を務める酒巻氏による著書です。
リーダーにとって大切なことは課長時代に学べることばかりで、課長として10人をマネジメントできれば、もっと大きな組織のマネジメントも可能だと主張しています。
実際に私がお会いしたことのある東証プライム上場企業の経営者の方に「経営者の仕事は何か」と聞いたところ、「自分のやりたいことを明確に表現して、それを達成するために、ステークホルダー(※)に辛抱強く説明や説得を繰り返すこと」だと言われました。
この酒巻氏とその経営者の方の言葉を借りるなら、課長時代のマネジメントで周囲を巻き込む力をつけることが、経営者としての第一歩になるということでしょう。
(※)ステークホルダー
顧客、取引先、株主、従業員、地域社会など会社に関係する人や団体
私も大手企業の課長を5年ほど勤めましたが、部下の管理や上司の巻き込みなど多くのマネジメント経験をさせてもらったそのときの経験が、現在のマネジメント能力の礎になっていることは間違いありません。
ステークホルダーの詳細はこちらの記事に書いています。
周囲を巻き込む際に必要なビジョン
まず周囲を巻き込むためには、自分が何をしたいのか、ビジョンと方針を明確に示す必要があります。
シンプルかつ具体的な目標を立てて、まわりがその挑戦に向かって進んでいこうとなるようなものです。
本の中の言葉を借りると、「大きな夢を立てて、それを具体的な目標に置き換えて、数値で設定するなど、わかりやすい形で示せば、それに向かって人は必ず動くようになる」ということです。
ビジョンは、これから進むべき方向を示す羅針盤となるものなので、ビジョンなくして人を巻き込むことはできないということでしょう。
上司、部下、他部門をどのように巻き込むか
課長が業務を進める上で巻き込まないといけないのは、1.上司、2.部下、3.他部門の課長または部長、あたりがメインになってきます。
上司(部長以上)の巻き込み
直属の上司となる部長や、その上の役員や社長まで含めた巻き込みです。上司を巻き込むために必要となるのは、まずは直属上司(部長)に自分(課長)の仕事を徹底的に理解してもらうということです。
上司の立場になって考えてみるとわかりますが、上司は部下が何をやっているのかよくわからない状態で支援をしようとは決して思いません。
したがって、部長に対して、自分が掲げているビジョンと方針を理解してもらう必要があるのです。
そして、大事なことを常にオープンにして情報共有することで、やがて上司は課長の仕事を我が事のようにとらえて、上司として具体的に何を、いつ、どのように、どの程度、支援すればよいのかがわかるようになっていきます。
本の中の言葉を借りると、「上司にはうるさがられるくらい報告することで、信頼が深まる」ということです。
上司巻き込み:徹底して情報を共有する
部下の巻き込み
部下は課長の直接の権限が及ぶところなので、巻き込みは容易なように見えますが、実際は簡単ではありません。
たとえば、課長が上から目線で、部下に接すると、部下からはほぼ間違いなく総スカンを食うことになります。
気づかないのは課長だけで、部下はみんな課長に対して嫌々ついていく状態になるので、部下を巻き込んで仕事ができているとは言えない状態になってしまうわけです。
実際、私もこうした例をいくつも見てきましたが、このような状態だと、部下はハイハイと言うだけで、実際はほとんど動いていないという状態になってしまいます。
本の中でも挙げられていますが、「部下と話すときは部下と目線の高さを同じにする」ことが大事なのです。
上司の視点から見て簡単に見えることも、部下から見ると大変難易度の高い仕事かもしれません。
自分が部下だったときのことを思い出して、目線を合わせることが大事になります。
私は部下の巻き込みをするための有効な手段として、以下の記事にも書いた1on1ミーティングを推奨しています。
なぜなら1on1ミーティングは、自分の目線を部下の目線に合わせるための手段として活用できるからです。
そして、本書では、「指示・報告を徹底させて、ときには、質問によって部下に考えさせる」ことにも言及しています。
部下巻き込み:部下目線でコミュニケーションをとる
他部門の巻き込み
本の中では、触れられていませんが、私は他部門の巻き込み力も課長の大事な能力だと考えています。
他部門の巻き込みが他と比べて難しいのは、上司や部下とは違って、自分の仕事の成果が他部門の成果と直結しにくい場合があるということです。
それでも、仕事で成果を出すには、他部門の協力は不可欠なので、能動的に巻き込んでいく必要があるわけです。
他部門を巻き込むときの大事な視点は、自分の視点を一段も二段も高めて考えることです。
たとえば、営業課長だとして、開発部門や製造部門に何かをお願いする際に、営業部門のメリットばかり強調していてはダメです。
上のレイヤーである事業部門として、または会社として、どういうメリットがあるのかを説いて、だから開発部門や製造部門にとってもメリットになることだという言い方をする必要があります。
これは、本にも書かれていることをアレンジすると、「相手部門の目線に合わせて話をする」ことになるのでしょう。
こうして信頼を勝ち得てくると、次第に「●●さんが言うなら、協力しよう」という状態になってきます。
この状態までくると、より大きな仕事ができるようになっていき、やがて部長以上のポジションが見えるようになってくるわけです。
他部門の巻き込み:一段高い視点で自分の仕事に協力するメリットを語る
まとめ
課長時代がマネジメントの登竜門として多くの経験を積める時期であることは、紹介した本だけでなく、多くの人から言われていることです。
実際、日経新聞の「私の課長時代」という連載でも、多くの人が課長時代に学んだことが大きかったと言っています。
これから課長になる人、今課長で伸び悩んでいる人も、周囲の巻き込みを図るために、自分に何が足りないのか、振り返って考えてみるきっかけにしてもらえればと思います。
記事作成の参考にした本
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