マーケティング戦略を考える上で重要なことの一つに、顧客の購買プロセスを具体的に考えることがあります。
顧客購買プロセスを正しく理解できると、購買プロセスのどの部分でのコミュニケーションを改善すれば売れるようになるかがわかってくるからです。
この記事では、顧客の購買プロセスモデルを表す代表的なフレームワークとしてAIDMA、AMTUL、インターネット時代の購買行動を示すと言われるAISAS、そしてAIDEESモデルを紹介します。
AIDMAモデルとは
AIDMAモデルとは、消費者が商品の認知から購買に至るまでのプロセスを示したモデルのことです。それぞれのプロセルの頭文字をとってAIDMA(アイドマ)と表現します。
一般的に消費者に対するコミュニケーション手段として、広告、販売促進、人的販売、口コミなどがありますが、最初のプロセス(AID)では、広告や口コミが大きなウェイトを占め、最終プロセス(MA)に向かうにつれ、人的販売が大きなウェイトを占めるようになります。
AIDMAの各プロセスでの顧客の状態と、マーケティング目標は次のとおりです。
プロセス | 顧客の状態 | 目標 |
注目 (Attention) |
知らない。 | 注意を促す。 |
興味 (Interest) |
知っているが、興味なし。 | 興味を持たせる。 |
欲求 (Desire) |
興味はあるが、欲しいとまでは、思っていない。 | 欲求を喚起する。 |
動機 (Motive) |
欲しいと思うが、動機がない。 | 動機付けを行う。 |
行動 (Action) |
動機はあるが、買う機会がない。 | 行動を起こさせる。 |
AMTULモデルとは
AIDMAが短期的な購買行動を説明するモデルであるのに対して、AMTULは長期的な購買行動を説明するモデルになっていて、AIDMAよりも各段階での顧客の状態が定量化しやすいようになっています。
AMTULの各プロセスでの顧客の状態、各段階での定量指標、マーケティング目標は次のとおりです。
プロセス | 顧客の状態 (定量指標) |
目標 |
認知 (Aware) |
商品やブランドを知っている。 (ブランドor商品の再認率) |
認知してもらう。 |
記憶 (Memory) |
製品分野から商品名やブランドを連想できる。 (ブランドor商品の再生率) |
覚えてもらう。 |
試用 (Trial) |
使ったことがある。 (使用経験率) |
試しに使ってもらう。 |
本格的な使用 (Usage) |
繰り返し使っている。 (主使用率) |
リピーターになってもらう。 |
固定客 (Loyalty) |
ファンになっている。 (今後の購入意向率) |
特典やポイント制度などで囲い込む。 |
再認率
再認率とは、消費者が特定の商品やブランドを知っているかどうかを測る比率です。
再認率は、「○○というブランドを知っていますか?」という問いで調査することができます。
再生率
再生率とは、消費者が商品分野から、特定の商品やブランドを思い出す比率のことです。
再生率は、「○○といえば、どんなブランドを思い出しますか?」という問いで調査することができます。
AISASモデルとは
AIDMAモデルは古くから提唱されている購買プロセスですが、インターネット時代の購買モデルを説明しきれないという課題がありました。
そこで提唱されたのがAISASです。
AISASのプロセスと顧客の状態、マーケティング目標は次のとおりです。
プロセス | 顧客の状態 | 目標 |
注目 (Attention) |
知らない。 | 注意を促す。 |
興味 (Interest) |
知っているが、興味なし。 | 興味を持たせる。 |
検索 (Search) |
興味があって、検索する。 | 検索で見つけやすくする。 |
アクション (Action) |
見つかったが、買おうかどうか迷っている。 | 背中を押して行動を起こさせる。 |
共有 (Share) |
よかったら、人に教えてあげたい | 思わずシェアしたくなるような商品にする |
AIDMAとの違いは、後半の検索・アクション・共有です。
特その中でもAIDMAでは最後がアクションになっているところが、AISASでは最後から一つ手前がアクションで最後がシェアとなっている点です。
インターネット時代の顧客の購買行動では、多くの人や影響力のある人にシェアされたものは爆発的人気が出て売れるという特徴があります。
そのため、インターネットマーケティング主流の現代においては、AIDMAではなくAISASを考えてマーケティング策が考えられるようになっています。
AIDEESモデルとは
AIDEESモデルも、AIDMAモデルをインターネット時代に合わせてカスタマイズしたモデルとして登場しました。
プロセス | 顧客の状態 | 目標 |
注目 (Attention) |
知らない。 | 注意を促す。 |
興味 (Interest) |
知っているが、興味なし。 | 興味を持たせる。 |
欲求 (Desire) |
興味はあるが、欲しいとまでは、思っていない。 | 欲求を喚起する。 |
体験・経験 (Experience) |
よい体験をさせる。 | |
熱中・心酔 (Enthusiasm) |
体験を通じて熱中させる。 | |
共有 (Sharing) |
思わずシェアしたくなるようにする。 |
このフレームワークの特徴は購買後の行動を「体験」から「熱中」に置き換えていることです。
このことに関しては、書籍「キーパーソン・マーケティング」が最もわかりやすく解説しているので、そこから引用します。
AIDMAモデルでは購買をひとくくりにしていますが、実際にはさまざまな購買がありえます。
たとえば、以前から欲しくてやっと手に入れた、という購買もあれば、惰性や他に買いたいものがあったが店舗になかったから仕方なく、といった消極的な購買もあるでしょう。
AIDEESモデルでは、単なる消費・購買体験とブランドに心酔し、満足し、ファンになる状態とを区別しています。
キーパーソン・マーケティングより引用
ユーザー体験を具体的に考えることが重要
顧客の購買行動を分析するためのフレームワークには、ここで紹介しただけでもAIDMA、AMTUL、AISAS、AIDEESの4つがありました。
しかし、こうしたフレームワークはあくまで参考として、実際の購買プロセス・購買行動は、商品の特性に応じてオリジナルで考えてみることをおすすめします。
たとえば、大型の耐久消費財だと、買った後に次のようプロセスがあります。
設置 ⇒ 使用 ⇒ メンテナンス・修理 ⇒ 廃棄
このように考えてみると、単に購買後のシェアだけでなく、使用後の廃棄に至るまでのユーザ体験を最適化することが重要だと捉えることもできます。
こうして作った各プロセスにおいて、どのような困り事を持っているかを掘り下げることで、新しい商品・サービスやプロモーション策を考えるためのきっかけとなっていきます。
なお、それを可視化してまとめたのがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップの詳細は以下の記事をご覧ください。
まとめ
以上が、AIDMA、AMUTL、AISAS、AIDEESの解説でした。
- 消費者の購買行動を考えるためのフレームワークとして、AIDMA、AMTUL、AISAS、AIDEESがある。
- AIDMAは最も古典的なフレームワークで、定量指標との結びつきを強めたのがAMTULで、インターネット時代に合わせてカスタマイズされたのがAISASやAIDEESである。
- 実際の消費者の購買行動を考える際には、これらのフレームワークはあくまで参考として、実態のプロセスを深堀りすることが重要である。
- そうした購買行動を可視化したのがカスタマージャーニーマップである。