雑記

ブルウィップ効果とは?エシェロン在庫とは?

ブルウィップ効果とは エシェロン在庫とは

サプライチェーンの上流と下流では、需要変化に対する供給変化の感度が大きく異なってきます。

その現象を説明するものとしてブルウィップ効果というものがあります。

この記事では、そのブルウィップ効果について解説していきます。

ブルウィップ効果とは

ブルウィップ効果とは、サプライチェーンにおける川上事業者になればなるほど、末端の需要動向の変化が増幅されて伝わることをいいます。

ブルウィップとは、牛(ブル)などの家畜用に使う鞭(ウィップ)のことで、ブルウィップ効果は、手元でわずかな力を加えるだけで、鞭がしなって大きな力が加わる様子から名付けられています。

ブルウィップ効果の例

下の図は、原材料メーカー ⇒ 部品メーカー ⇒ 完成品メーカー ⇒ 卸売業 ⇒ 小売業というサプライチェーンの中で、最終の販売動向の変化が原材料メーカーの販売量(部品メーカーの生産量とも密接の関係がある)にどのような影響を与えることになるのかを例示したものです。

ブルウィップ効果をグラフで表現

また、小売業者の販売量が、流通経路にある総在庫にどのような影響を与えるのかを例示したのが下の図です。(自社から見て、下流に位置する在庫のことをエシェロン在庫といいます。下図の総在庫は部品メーカーから見たエシェロン在庫になります。)

市場在庫の変化

(上図はいずれも変化の幅をイメージするために適当な前提を置いて計算しています。)

ブルウィップ効果が起こる原因

ブルウィップが起こる要因には次のようなものがあります。

顧客の需要予測が正確ではない

そもそもの予測が正確でないことから、ブルウィップが起きてしまいます。顧客は統計に基づいて需要予測はするものの、その予測を100%正確にすることは不可能です。

川上事業者は需要変化に対して過剰に反応してしまう

顧客の需要予測が正確ではないことを知っている川上事業者が、最も恐れるのは、供給能力が足らずに欠品することと、過剰在庫を持ってしまうことです。したがって、わずかな需要変化に対して、どうしても敏感になってしまいます。

最終顧客の需要動向が川上に伝わるのが遅い

川上事業者ほど最終顧客に直に接する機会が少ないため、需要動向が伝わるのが遅くなってしまいます。

リードタイムがある

生産リードタイムが数日から数週間程度あると、どうしても現在の需要動向から、より不確定要素の高い将来の生産計画や購買計画を立てなければならないという問題もあります。

ブルウィップ効果を軽減させる方法

ブルウィップを軽減させるには、川上事業者が最終顧客の需要動向を早く正確に掴むと同時に、注文を受けたら素早く生産することが重要になってきます。そのため、以下のような取り組みがブルウィップ効果低減に有効となります。

SCM体制の構築

川上から川下までが協力して、不良在庫、機会損失の軽減に努める活動をSCM(サプライチェーンマネジメント)といいます。これにより、最終顧客の需要動向をリアルタイムに川上事業者へと展開することができます。

SCMの構築によって、ブルウィップ効果低減させた例として有名なのがDELLです。DELLは、サプライヤーとの間のWIN-WINの状況を作ることによって、パソコンの事業を大きく拡大させることに成功しました。

川下事業を統合する

さらには、川下事業者を買収・合併などにより、たとえば原材料メーカーが、完成品を作り、小売までできるようになれば、ブルウィップ効果の影響を最低限に食い止めることができます。

川上から川下まで事業を抑える例としては、ZARAやユニクロなどのSPAが上げられます。SPAは自社で企画・製造・販売をすることで、サプライチェーン上に起こるブルウィップ効果を最小限にできるサプライチェーンモデルです。

ファッション業界では、流行の変化により在庫が急速な陳腐化する特性があるので、ブルウィップ効果を最小限にすることは競争優位性を築く上で大事な要素となります。

生産リードタイムを短縮する

生産リードタイムを短縮することで、より近い将来の需要予測をすればよくなるので、需要予測の精度がUPします。

生産リードタイム低減の好例はトヨタ自動車のJIT(ジャスト・イン・タイム)です。これにより完成品のリードタイムを短くすることに成功し、結果として協力サプライヤーにもメリットをもたらしました。

まとめ

ブルウィップ効果は、顧客の需要予測の不確実性をカバーするために、サプライチェーンの川上事業者が安全側に生産をしようとする動機から起こります。そこに情報伝達の遅れが加わることで、ブルウィップ効果を増幅させてしまいます。

したがって、サプライチェーンの上流から下流まで長く、在庫リスクの大きい事業においては、上記のような策によりブルウィップ効果を軽減させることが、事業を健全に運営する上での重要な要素となってくるのです。