プレゼン資料や報告書を見やすく仕上げる上で重要となってくるのがグラフ(チャート)です。
特に、数字の変化や大きさを視覚的に説明できるグラフをうまく使えると、大変わかりやすい資料にすることができます。
逆に、適切なグラフを選ばなかったり、見せ方がまずかったりすると、それだけで相手が見る気を無くしてしまう場合もあります。
この記事では、適切なグラフの選び方から、各グラフを作成する際のポイント・工夫点を紹介していきます。
5つのチャートとその特徴
最もよく使われる5つのチャートと、それがどういう事柄を説明するのに適しているのかを以下にまとめました。
項目間の比較 | 時系列 | 相関 | 頻度 | |
パイチャート | ○ | – | – | – |
コラムチャート | – | ○ | – | ○ |
バーチャート | ○ | – | ○ | – |
ラインチャート | – | ○ | – | – |
ドットチャート | – | – | ○ | – |
ビジネスで使われるチャートのほとんどは、この5つの基本チャートの中のどれかに属しています。
チャート1.パイチャート
パイチャートとは、全体を丸い円で表し、各要素がその中でどのような割合を占めて存在しているのかが、一目でわかるチャートです。
パイチャートは要素を比較する際に用いると効果的です。(まるで切り分けたパイのように見えることから、パイチャートと呼ばれています。)
代表的なパイチャート
各店舗の月次売上【百万円】
パイチャートの活用場面
パイチャートは、次のようなときに活用できます。
- 各要素の大きさ(構成比)をパーセンテージで表示するような目的で使う場合。
- 特に、1つの対象に対して構成比を表す場合。
一方で、2つ以上の対象について構成比を表す場合。特に比較するような場合は、
コラムチャートを使った方が便利です。
2つの対象について構成比を表す場合
(各店舗の平均月次売上の推移)
チャート2.コラムチャート
コラムチャートとは、縦棒グラフのことです。ある項目が時系列でどのように変化しているのかを表現する際に用いられます。
コラムチャートの例
A店の月次売上推移【百万円】
コラムチャートの活用場面
コラムチャートは、次のような場合に活用します。
- 時系列でデータを比較する場合
- その中でも特に、レベルやインパクトの大きさに焦点を絞りたい場合
コラムチャートを見やすくするテクニック
コラムチャートでは、次のような点に注意すると、見やすいバーチャートを作成することができます。
- コラムの太さより隙間を狭くする
- 強調したい項目を目立たせる。
コラムチャートのバリエーション
コラムチャートには、主に次のようなバリエーションがあります。
グループ・コラムチャート
同時期における2つの項目を比較することで、長期間の関連性を表現する場合に用います。
細分コラムチャート
全体の構成比と合わせて時系列表示する場合に用います。
面積図
面積図もコラムチャートの一種です。面積図は縦軸と横軸のそれぞれの数値と、それらの掛け算によってできる面積の3つ数字を視覚的に表すのに有効です。下の例は、それぞれセグメント別市場シェアと、事業別営業利益を表す面積図です。
これらの他に、ウォーターフォールチャートや度数分布を表すヒストグラムもコラムチャートのバリエーションのひとつです。
チャート3.バーチャート
バーチャートとは、横棒グラフのことです。各項目の大きさを比較する際に用いられます。
バーチャートの例
各店舗の月次売上高比較【百万円】
バーチャートを見やすくするテクニック
バーチャートでは、次のような点に注意すると、見やすいバーチャートを作成することができます。
- バーの太さより隙間を狭くする
- 項目の並び方を意味のある順にする
(たとえば、数値の大きい順や50音順、アルファベット順など) - 強調したい項目を目立たせる。
バーチャートのバリエーション
バーチャートには、主に次のようなバリエーションがあります。
グループ・バーチャート
同じ項目のさまざまな局面を比較する場合に用います。
細分バーチャート
全体の構成比も含めて比較をする場合に用います。
スライド状バーチャート
2つの要素が異なる構成比を示す場合、または2つの要素の相関関係を示す場合に用います。
偏差バーチャート
勝者と敗者、利益がプラスとマイナスなど違いを明確に示す場合に用います。
これらの他にトルネードチャートもバーチャートの1種です。
チャート4.ラインチャート
ラインチャートとは、折れ線グラフのことです。ラインチャートは、ある項目の時系列変化を表現するのに適したチャートです。
ラインチャートの例
A店の月次売上推移【百万円】
ラインチャートの活用場面
ラインチャートは、次のような場合に活用します。
- 時系列でデータを比較する場合
- その中でも特に、変化の動きや角度に焦点をあてる場合
ラインチャートを見やすくするテクニック
ラインチャートでは、次のような点に注意すると、見やすいバーチャートを作成することができます。
- 線はなるべく太くする。特に基準線よりは太くする。
- 異なる種類のデータがある場合は線の種類を分ける。
また、複数の項目を無理に1つのラインチャートに入れずに、複数のラインチャートに分けた方がよい場合もあります。
複数のラインチャートに分けた例
ラインチャートのバリエーション
ラインチャートのバリエーションとして、下図に示すような面チャートがあります。コラムチャートでも同じような表現は可能ですが、それぞれの項目の変化の度合いに注目したい場合は面チャートの方がおすすめです。
チャート5.ドットチャート
ドットチャートとは、散布図のことで、2つの事象の間にどのような関係性があるのかを示す場合によく使われるグラフです。
ドットチャートの活用場面
ドットチャートは、2つの事象の相関関係を示す場合に使います。
ドットチャートを見やすくするテクニック
ドットチャートでは、次のような点に注意すると、見やすいバーチャートを作成することができます。
インプットの要素を横軸、アウトプットの要素を縦軸にする
これはドットチャートを用いる際のルールになっています。たとえば、従業員数による売上への影響度合いを示す場合は、従業員数を横軸、売上を縦軸にとります。
対数グラフを有効に使う
一定のボリュームではなく、割合で変化することを示す場合は、対数軸を使うとより明確に現象を表すことができます。たとえば、下図のような価格と売上数量の関係を表すグラフの場合、縦軸を対数軸にすることで、価格がいくら上がると売上数量が「何%」減るという関係を表すことができます。
近似曲線を有効に使う
相関を表せるドットチャートでは、近似曲線を有効に使うことで、相関関係をより明確に表すことができるようになります。上図の例で近似曲線を使うと下図のようになります。
近似曲線の詳細は回帰分析の解説記事をご参照ください
チャートを見やすくする3つの工夫
ここまでで適切なチャート・グラフの選び方と5つのチャートについて説明しましたが、ここからは、チャートを見やすくするためのテクニックの一例を紹介します。
工夫1.矢印や図形などで補足をする
矢印や図形を使って、チャートで言いたいメッセージを補う方法があります。
補足の例1
平均の線を入れることで、A店が平均を大きく超えていることを視覚的に表すことができます。
補足の例2
矢印を入れることで、売上増減の方向感を視覚的に表すことができます。
補足の例3
ある2つの年の売上高比較にグラフに、矢印と増加率を補うことで、売上の大幅な伸びを視覚的に表すことができます。
左の矢印は実績値同士を比較する場合に、右の矢印は10年に向けての売上拡大目標、あるいはポテンシャルを表す場合に適しています。
工夫2.凡例に工夫を加える
チャートに複数の項目を表示する場合、凡例を付けるのが必須になります。
ところが、一般的な凡例にすると、凡例とチャートのラインを目線が行ったり来たりする形になるため、見ている人に若干のストレスを与えてしまいます。
たとえば、下図左のチャートを見てみると、どのラインがどの店の数字を示しているのかを凡例でいちいち確認しないといけません。
そこで、右図のようにしてみると、視線がラインのあたりに集中するので、左図に比べて理解のスピードが早まるのです。
このようにしておけば、白黒で紙に印刷しても、ラインと凡例の関係性を一目瞭然にできます。
下図の場合でも工夫を加えるだけで、格段に見やすくなります。この例ではCAGRを加えることで、各事業の成長度合いまで一目でわかるようにしています。
工夫3.表現する項目に応じてグラフの種類を変える
チャートが示す項目の違いによって、種類を分けて使うという方法があります。
異なる種類のチャートを使うパターンとしては、ラインチャート(折れ線グラフ)とコラムチャート(縦棒グラフ)のミックスが最もよく使われます。
ラインチャートとコラムチャートの組み合わせ例1
下のグラフは、計画値をラインチャート、実績値をコラムチャートで表しています。
ラインチャートとコラムチャートの組み合わせ例2
下のグラフは、左軸をコラムチャート、右軸をラインチャートで表しています。(パレート図と呼ばれるグラフです)
まとめ
チャートを適切に選択して見やすい工夫を加えると、プレゼン資料が格段にわかりやすく仕上がります。
ここで紹介したものを参考に、よりわかりやすいプレゼン資料作成にトライしてみてください。
わかりやすく図解するための本も紹介しています。あわせてご覧ください。