企業分析は、さまざまな場面で出てくる言葉です。たとえば、以下のような場面です。たとえば、株式投資、取引先の精査、就職または転職活動などです。
しかし、漠然と企業分析をしろと言われても一体何を分析したらよいのか?とお困りではないでしょうか。
実は企業分析には定番のフレームワークがあります。そのフレームワークを理解して使えるようになれば、ある程度の分析は可能になるのです。
この記事では、企業分析でよく使われる一般的なフレームワークを紹介していきます。
企業のファンダメンタル分析
企業の置かれている状況を定性・定量定に分析して今後を予測する手法をファンダメンタル分析といいます。(なお、株式投資においては、株価チャートの傾向から次に起こることを予測するテクニカル分析というものがあります)
ここでは、経営戦略を考えるときにも活用するこのファンダメンタル分析について、「定性分析」と「定量分析」に分けて解説していきます。
定性分析
定性分析には、企業の置かれている環境分析、業界構造分析、企業の戦略分析などがあります。
定性分析では、外部環境・業界構造の分析から得られるKSF(成功要因)に対して、その企業の経営戦略が合致しているかどうかを分析する必要があります。
ここでは、チェックリスト形式で定性分析を解説していきます。
マクロ外部環境分析
定性分析では、まずマクロな環境から考えていきます。マクロ環境の分析の、代表的フレームワークにPESTというフレームワークがあります。主に投資先企業の業界に影響を与える要素に注目します。
■経済の変化
景気動向はどうか?金利水準はどうか?
■社会の変化
人々の消費嗜好に変化はないか?人口構成が変わっていくか?流行は何か?
■政治・法律の変化
政治・法律が変わることで製造、流通、販売、アフターサービスに影響はないか?
■技術の変化
革新的な技術によって、これまでの商品を代替されないか?あるいは代替できるか?
業界構造分析
マクロな環境分析を行ったら次は、企業が属している業界の構造を分析します。業界構造の分析には5つの力がよく用いられます。ここから、業界の魅力度、競争状態が激しいかどうか、業界としての課題などを抽出します。
業界構造分析を詳しく知りたい方はこちら
企業経営・戦略分析(自社・競合)
■経営姿勢・企業目標
- 企業理念:企業理念はどんなものか?
- 社会に対する貢献度:社会活動に積極的に参加、環境配慮はなされているか?
- 企業責任の明確性:株主価値を重視しているか?
- 法令遵守の姿勢:コンプライアンスを重視しているか?
- 企業の目標:社会的目標、経済的目標
■経営者・経営陣・株主
- 会社の経営姿勢に沿った経営ができているか?
- 本業と関係ないことに注力していないか?
- 営業出身か?技術出身か?他業種出身か?
- 役員の状況
- 大株主の状況
■事業領域
- 事業内容は何か?
- どんなフィールドで戦っているのか?
- 事業のリスクにはどんなものがあるか?
- 対処すべき課題は何か?
■他社との差別化・競争優位点
- ユニークな戦略ポジションは構築できているのか?
- どんな製品・サービスを提供しているのか?(対顧客価値は何か?、競合には真似されにくいか?)
- 事業戦略の類型でいくと、どの戦略をとっているのか?
- 競合に対し優位に立つための戦略は何か?
ポジショニングを詳しく知りたい方はこちら
■戦略を実現するための手段
- 価値の源泉・仕組みは何か?
- バリューチェーンのどこを担っているのか?どこが強みか?
■マーケティング戦略
- マーケティングの4Pの各要素の戦略はどのようなものか?
- 製品戦略:耐久財か非耐久財か?サービスか?ライフサイクルは?
- 価格戦略:コスト志向か?カスタマーバリュー志向か?競争志向か?
- コミュニケーション戦略:どんな広告を打ち出しているか?メディアは何か?
- 流通戦略:流通チャネルの長さは?幅は?
戦略立案をする際のフレームワーク
定量分析
定性分析に続いて、数字を使った定量的分析を解説します。定量分析は通常、定性分析の結果を踏まえて行われます。
定量分析(市場)
■市場規模
まず、投資対象企業がドメインとしている市場の規模を大雑把に把握する必要があります。市場規模を把握することは、その企業が最大どの程度の伸び代があるかを知る第一歩となります。
■市場の成長性
市場の規模だけでは、その企業の伸び代の判断ができないので、市場の成長性を見る必要があります。将来にわたっての市場は何%くらい成長が見込めるか?あるいは横這いか?縮小か?を大雑把に把握します。
定量分析(自社・競合)
経営内容の定量的評価のポイントとしては次のものが挙げられます。
■財務内容
- 業績推移:損益計算書、キャッシュフロー計算書の推移
- 財務の現状:貸借対照表の状況
- 将来への布石:設備の状況、研究活動費
- 将来の価値:企業価値
- 成長性:過去どのように成長してきたか?将来は市場拡大するのか?シェア拡大するのか?
- 収益性:利益率はどうか?上がるか?下がるか?
- 効率性:資産を効率的に運用しているか?
- 安全性:財務体力は十分か?借入金が多すぎないか?
- 生産性:労働力を有効に使えているか?高い付加価値を生み出しているか?
- 会計方針のチェック:どのような会計方針を採用しているか?大きな方針変更はないか?
■資本金
■従業員数
■業界地位(ランキングはどうか、シェアはどの程度か)
定量的な情報は、有価証券報告書や財務諸表で確認することができます。
定量分析(競合)
競合の分析は投資先として考えている企業と比較するために行うので、基本的に調べる項目は投資先企業と変わりありません。
定量分析のポイント
財務諸表は数字の羅列です。数字をただ眺めているだけでは分析になりません。財務諸表を見る際に重要となるポイントを次にあげてみました。
- 競合他社と比べる:他社と比べて売上は大きいか?利益率は高いか?
- 時系列で比べる:利益率は改善しているか?棚卸資産の回転月数は悪化していないか?
- 改善の余地を考える:利益率の改善の余地はあるか?
- キーとなる数字をおさえる:業績への影響度が特に大きい数字は何か?
財務諸表の入手方法
企業の財務諸表は、各企業のホームページにある決算短信か、EDINETで有価証券報告書を検索すると手に入れることができます。
まとめ
このように定性面と定量面で分けて会社の課題を分析すると、立体的に会社のことが見えるようになります。企業分析は目的に合わせてその粒度も変わってきますが、これから企業分析をされる方は、この記事を参考にして分析にトライしてみてはいかがでしょうか。
なお、ここまで分析できると、予測財務諸表を作ることができます。株式投資のために企業分析をされる方は、予測財務諸表を一度作ってみるのも面白いです。
予測財務諸表の作り方は、以下のページで説明しています。