仕事をする上で、重要な要素の1つとして「段取り」があります。
「段取り八分、仕事二分」(※)と言われるとおり、段取りは仕事における重要性が高いものとして知られています。
(※)事前の段取りを抜かり無くやれば、仕事の80%は完了したも同然という意味
一方で、段取りが不十分なために、重要な商談や会議がうまくいかなった事例は山のようにあります。
段取り力とは要領のよさだと思われがちですが、実際には段取りのステップを正しく学べば、誰でも段取り力を鍛えることができます。
逆に言うと、丁寧にステップを経ないと、ベテランのビジネスパーソンであっても、段取り不足による失敗を招いてしまうケースもあるのです。
この記事では、仕事ができる人になるための段取り力を鍛える5つのステップを順に紹介していきます。
ステップ1:仕事の完了目標を定義する
段取り力を鍛えるためには、まず仕事の完了目標を明確に定義する必要があります。
そもそも仕事の完了目標が定義できていないと、段取り自体が無駄になってしまうこともあるからです。
完了目標は仕事を受け取る側の立場で考える
多くの仕事は、次の誰かの仕事とつながっています。
したがって、完了目標は自分視点で考えるのではなく、仕事を受け取る側の立場で考えることが大事なのです。
たとえば、上司から次のような依頼を受けたとしましょう。
「Aさん、この資料、今度の会議に必要だから作ってくれないかな?」
このときの仕事の完了目標は何でしょうか?
資料を作って上司に提出することです。
もし、これが完了目標だと思ってしまうと、後で大きな手戻りを招く可能性があります。
なぜなら、上司が期待していることは、Aさんに資料を作ってもらうことではなく、会議で自分が説明できる資料を準備することだからです。
そうすると、単に資料を作って上司に提出するだけでは、目標を十分に達成できているとは言えないでしょう。
このように、相手が仕事の結果として期待していることが完了目標になるのです。
完了目標は言語化する
完了目標は頭の中でぼんやりと考えるのではなく、明確に言語化することで目標設定を間違えないようになります。
たとえば、上司への資料提出に関しては、完了目標を次のように言語化できます。
上司が「これなら手直しなしで会議に出せるね。ありがとう。」と言って資料を受け取ってくれる。
この完了目標だと、単に上司に資料を提出するという目標に比べて、資料に求められる品質レベルもより解像度高く考えられるようになります。
当たり前のことに思えるかもしれませんが、いくら段取りを組む力があってもゴール設定を間違えてしまえば全てが無駄になってしまうので、意外と大事なことです。
もし、ゴール設定を相手に確認できるなら、確認をとってもよいでしょう。
このケースだと、上司に「私の理解は合っていますか?」と確認をとればより確実です。
なお、完了目標はできるだけ目標に到達したことが測れるものにするのがよいでしょう。
上の例であれば、「これなら手直しなしで会議に出せるね。ありがとう。」と上司が言ってくれれば達成なので、測れる目標だと言えます。
ステップ2:完了目標を達成するためのタスクを洗い出す
完了目標を定義できたら、次に完了目標を達成するためのタスクを洗い出します。
たとえば、以下のようにタスクを洗い出すことができます。
- 会議のゴールを確認する
- 会議の発表時間を確認する
- 資料の構成を考える
- 資料をパワーポイントで作る
- 資料に必要なデータを集める
- 上司に途中の状態を見せる
ここでのポイントは、上司のチェックが1回では終わらないことを前提にして、上司に途中の状態を見せることを予めタスクに織り込んでいることです。
手直しが発生することが不可避だと思われる場合は、そのタスクを予め見込んでおくことも段取り力を上げるためには大事です。
言い換えると、タスクを洗い出す段階では、先々に起こるリスクを考えておくことが重要なのです。
ステップ3:各タスクを時系列につなげる
タスクの洗い出しが完了したら、タスク同士を時系列につなげていきます。
先ほど挙げたタスクを例にすると、以下のように並べることができます。
時系列に並べる際のコツは以下の2つです。
- タスク同士の因果関係を意識する(どのタスクの後に、どのタスクがあるのか間違えないように整理する)
- 完了目標と、今日、今からでもやれるタスクまで繋ぐ(もし今日からスタートできないタスクしかなければ、洗い出したタスクの前に今日からスタートできるタスクがあるはずなので、そのタスクを特定する)
タスク同士の因果関係がロジカルに整理できていて、今日から取り組めるタスクが明確ならば、完了目標に向けての道筋が明確になっていることを意味します。
ステップ4:他の人が介在するタスクを特定する
もし、タスクの中で、自分で直接やらずに、他の人に頼めそうなことがあるなら、予めそのタスクを明らかにしておきましょう。
たとえば、「資料に必要なデータを集める」というタスクは、他の人にお願いすべきタスクだとします。
もし、資料の構成を考えるタスクまでを3日くらいで完了できるとしたら、データ収集をお願いする人には、予め次のように伝えられます。
収集をお願いしたいデータがあって、3日後には詳細を伝えられると思うけど、予め手を空けられますか?
この段階で、手を空けてもらえることを確認できれば、具体的な目標期間に反映することができます。
もし、段取りが不十分なままだと、直前になって以下のような頼み方になってしまうかもしれません。
このデータ、急ぎで欲しいのですけど、今すぐ手伝ってもらえませんか?
上と下、どちらが相手が気持ちよく仕事を受け取れるのか明白でしょう。
このように、段取りを丁寧に考えることで、他の人にも気持ちよく仕事をお願いできるようになるのです。
同じように上司に途中経過を見てもらうための日程も確保しておいた方がよいでしょう。
このように予め、未来に起こることを想定しておけば、他の人が介在するタスクもスムーズにこなせるようになります。
ステップ5:各タスクの目標期間を割り振る
ここまでの段取りが完了したら、各タスクに具体的な目標期間を割り振ります。
上司からの依頼が2週間後(実働10日)だとしましょう。
そうすると、以下のように割り振ることができます。
目標期間は必ずしもタスクごとに厳密に分ける必要はなく、マネジメントできるのであれば上記のように3つのタスクをまとめて3日という形でもよいです。
ここでのポイントは、実際の作業期間と納期との間にバッファーを持たせることです。
上のケースでは、実働10日間のうち2日間をデータ集めに想定以上に時間がかかる、上司から想定外の要望が加わるなどの不測の事態に備えたバッファーとしています。
プロジェクト単位でも活用できる
ここまで解説した考え方をプロジェクト単位で活用しているのがCCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)です。
CCPMでは、プロジェクトのゴールを言語化し、そのゴールから逆算してタスクを分解し、ロジカルににタスク同士を繋いで、日々のマネジメントに落とし込む手法です。
多くの人が絡むタスク同士をロジカルに繋げられるので、誰の仕事と誰の仕事がつながっているかを明確にできるだけでなく、誰のタスクが全体の中で重要度高くマネジメントをしないといけないのか?を可視化できるようになります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
以上、段取り力を鍛えるための具体的な段取りステップでした。
- 「段取り八分、仕事二分」と言われるほど段取りは仕事の成否を分ける大事なポイントである。
- 段取り力を鍛えるためには段取りを5つのステップで考える。
- 1つめは、完了目標を明確にすること。完了目標は仕事を受け取る相手の立場で考えて、かつ達成したことが計測できる目標にする。
- 2つめは、完了目標に向けて必要なタスクを洗い出すこと。タスクを洗い出すときは、先々に起こりそうなリスクを予め考えておく。
- 3つめは、必要なタスクを時系列でロジカルに並べ替えること。タスク同士の因果関係を意識し、完了目標と今日からできるタスクを繋げることが大事になる。
- 4つめは、他の人が介在するタスクを特定し、予め仕事をお願いできるようにしておくこと。
- 5つめは、タスクごとに目標期間を割り振ること。納期目標に対してバッファーを見ておくことも大事になる。