「演繹法」と「帰納法」は、ロジカルシンキングの基礎となる論理展開の方法です。
「演繹法」と「帰納法」を使えるようになると、以下のメリットがあります。
- 論理的に考える力が身につけられる
- 相手の言っていることに適切に反論できるようになる
- 自分の頭で考える力を高められる
この記事では、「演繹法」と「帰納法」について詳しく解説していきます。
演繹法とは?:一般論と観察事項から結論を導く論法
演繹法とは、一般論やルールに、観察事項を加えて、必然的な結論を導く思考方法のことです。
演繹法は、三段論法とも言われます。
たとえば、次のように使います。
ルール「このチームには男しか入れない。]
観察事項「Aさんはこのチームのメンバーだ。」
結論「Aさんは男である。」
ルール「この事務所で働いてるのはAさんとBさんである。」
観察事項「事務所にはあと一人しかいなくて、事務所にいるのはAさんだ。」
結論「帰ったのはBさんだ。」
このように演繹法を使うと、ルールと観察事項から、自動的に結論を導けるようになるのです。
演繹法を用いる際の4つの注意点
三段論法とも呼ばれる演繹法を用いるときには、以下4つの注意点があります。
- 間違ったルールを元に論理展開してしまう
- 先入観を元に論理展開してしまう
- 古いルールを元に論理展開してしまう
- 前提が隠れたままで論理展開してしまう
間違ったルールを元に論理展開してしまう
よくある罠が間違ったルールを元に論理展開しているケースです。
たとえば、次のような事例があります。
ルール「顧客に豊富なサービスを提供すれば、大きな利益が得られる。」
実施事項「コストをかけて、顧客へのサービスを充実させた。]
結論「自社の利益は増加するだろう。」
このケースだと、顧客に豊富なサービスを提供するためにコストをかければ、利益減につながる可能性があります。
つまり、ルールとした「顧客に豊富なサービスを提供すれば、大きな利益が得られる」が間違っている可能性が高いのです。
先入観を元に論理展開してしまう
先入観に基づいて論理展開しているケースも注意が必要です。
ルール「外国人はよく犯罪を犯す。」
観察事項「最近、近くに多くの外国人が引っ越してきた。」
結論「このあたりも治安が悪くなるだろう。」
この場合、「外国人=犯罪をする可能性が高い」という先入観を元に結論を導いています。
しかし、この先入観は必ずしも一般的なルールといえるものではないでしょう。
先入観に基づいて結論を出すと、大きな過ちを犯す場合があるので注意が必要です。
先入観は、声の大きい人の発言や、マスコミなどによって、自然に植えつけられている場合があるので注意が必要です。
最近の若い人は、と考え始めたり、まわりの人が言いだしたりしたら、そこに先入観がないかを疑ってみましょう。
古いルールを元に論理展開してしまう
演繹法の前提となるルールは、時代の流れや置かれている環境によって変わる可能性があります。
たとえば、携帯電話やネットがある時代とない時代、高度成長時代と市場成熟時代ではルールが全く異なってきます。
過去の成功体験に基づいて一定のルールが頭の中に構築されてしまっている場合などは、特に注意が必要です。
ルール「昔、Aを試したらダメだった。」
観察事項「彼はAをやろうとしている。」
結論「彼は失敗するだろう。」
このような思考に陥っていないか、そのときの前提と今の前提が本当に異なるのか?は注意深く考えましょう。
前提が隠れたままで論理展開してしまう
議論をしていると、結論の中に隠れた前提・ルールが存在しているケースが多いです。
「今日は雨の予報だ。バイクはやめて、車で出かけよう。」
こう言った場合、大抵の人は納得します。
しかし、この論法には、いくつかの前提が隠されています。
「今日は雨の予報だ。」
「私はバイク用の雨具を持っていない。」
「バイクで出かけるとズブ濡れになりそうだ。」
⇒
「バイクで出かけるとズブ濡れになりそうだ。」
「私は雨に濡れずに出かけたい。」
「雨に濡れない方法で出かけるべき。」
⇒
「雨に濡れない方法で出かけるべき。」
「私は車を持っている。」
「車で出かけよう。」
このように論理構成上必要な前提が隠れていると、後で大きな誤解を生んでしまうケースがあります。
自分が人に物事を伝える場合は、前提条件とセットで伝えることで、不要な誤解を避けることができます。
また、他者が前提を省略して話しきた場合は、その人がどんな前提で言っているのか確認する必要があります。
ちなみに、テレビの討論や新聞の社説を読んでいて、文章がわかりにくいか、何となく納得できないとか感じてしまう場合、論説の中に重大な前提が省略されている可能性があります。
演繹法を図解すると論理の妥当性がわかる
演繹法の論法は、ルールと観察事項がどのような関係になっているかを図式化することができます。
関係性を図式化することで、論理の妥当性を確認できるようになります。
演繹法の前提条件を疑うことがイノベーションの第一歩
演繹法で使われる前提条件を疑うことは、イノベーションにもつながります。
たとえば、次のような演繹法を使った論理展開があるとします。
ルール「専門書籍はたくさん売れない。」
観察事項「彼は専門書籍を中心にして本屋を開こうとしている。」
結論「彼は失敗するだろう。」
これは、インターネットが登場する前の書店業界の話でした。
しかし、インターネットの登場により、リアルな書店では売れない専門書籍を集めるて、全国に販売することで商売ができるようになりました。
これを創業初期にやったのが、Amazonです。
このように世の中で常識的に語られている前提条件を疑ってみることで、イノベーションの種になるかもしれないのです。
帰納法とは?:複数の観察事項から結論を導く論法
帰納法とは、いくつか観察される事項から一般論を導く思考方法のことです。
帰納法にはたとえば次のようなものがあります。
観察事項1「A市場には参入機会が大きい」
観察事項2「A市場の競合は少ない」
観察事項3「A市場では自社の強みが生かせる」
結論「A市場に参入しよう」
帰納法は、演繹法と違い自動的に結論が導かれることはありません。
したがって、結論となる主張が弱すぎないように、かつ論理が飛躍しないように想像を働かせる必要があります。
上の例だと、以下のように、いくつかの結論が考えられましたが、この3つの観察事項から言える範囲として妥当な結論として、「A市場に参入しよう」を選択しています。
弱い結論:「A市場は魅力的だ」
強い結論:「A市場に参入すれば、自社は10年安泰だ」
妥当に見える結論:「A市場に参入しよう」
帰納法を用いる際の注意点
帰納法を用いる際には、以下2つのことに注意が必要です。
- 間違った観察事項を元に論理展開をしてしまう
- 不適切なサンプリング数で論理展開してしまう
間違った観察事項を元に論理展開をしてしまう
帰納法では、観察事項が間違っているため、結論も間違ってしまうという状況です。
「愛知県は海に面している。」
「岐阜県は海に面している。」←間違った情報
「三重県は海に面している。」
→「愛知、岐阜、三重の東海三県は全て海に面している」←間違った結論
この場合、岐阜県は海に面していないのに、海に面しているという誤った情報から結論が出されているので、結論自体も誤ったものになっています。
不適切なサンプリング数で論理展開してしまう
これは、観察事項となる事柄のサンプリング数に問題があって、正しい結論を導き出せていない状況です。
「彼の友人のF君は広島県民だ。」
「彼の友人のG君は広島県民だ。」
「彼の友人のH君は広島県民だ。」
→「彼の友人には広島県民が多い。」
「彼の友人」が全体で5人くらいなら妥当な結論かもしれませんが、彼の友人が50人くらいいる場合は、サンプリング数が少なすぎて一般的に言える結論ではないでしょう。
後者の場合(友人50人)の場合、上の情報から言えることは、「彼の友人には広島県民が3人以上はいる」ということまででしょう。
帰納法の図解方法
演繹法と同じように帰納法も図式化することで、論理の妥当性を測ることができます。
まとめ
以上が演繹法と帰納法の解説でした。
ここで解説した演繹法と帰納法を使いこなせるようになるだけで、論理思考力はグッと高まることでしょう。
演繹法と帰納法については、ロジカルシンキング研修を提供する株式会社リスキルの演繹法と帰納法とは?具体例を中心に、わかりやすく解説!でも解説されていて、特に企業での活用例も参考になるので、あわせてご覧ください。
- よく使われる論理展開の方法として、演繹法と帰納法がある。
- 演繹法は、ルールと観察事項から結論を導く論法。
- 演繹法では、間違ったルール、先入観、古いルールに注意が必要。また、前提条件が隠れたまま論理展開していないかも要チェック。
- 演繹法の論法を疑うことは、イノベーションにもつながる。
- 帰納法は、複数の観察事項から結論を導く論法
- 帰納法では、間違った観察事項、不適切なサンプリングに注意が必要。