経営戦略論

ポーターのダイヤモンドモデルとは【国の競争優位に関する理論】

マイケル・ポーターが提唱した国と産業の関係を示すフレームワークに、ダイヤモンドモデルというフレームワークがあります。

この記事では、ポーターのダイヤモンドモデルについて解説していきます。

ポーターのダイヤモンドモデルとは

ポーターのダイヤモンドモデルとは、特定の国において、ある産業では競争優位を持てても、他の産業では競争優位を持てないということを説明したモデルです。言い換えると、ある国では特定の産業でしかイノベーションが起きず、それ以外の産業ではイノベーションが起きないということもできます。文字通りダイヤモンドの形をしたフレームワークで表現されます。

ポーターは、ダイヤモンドモデルにおいて、国の競争優位は、強固な企業戦略と競争状態、要因条件、需要条件、関連産業と支援団体の4つのファクターから成り立つとしています。

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もし、この4つが全てポジティブであれば、国内会社は継続的に成長、進化していくことができ、この4つに機会と政府の役割が加わることで、産業集積が起こっていくとしています。

強固な企業戦略と競争状態

企業の状況は、企業がどのように設立、編成、管理されてきたかによって大きく左右します。さらに、国内の競争は、企業にユニークで持続可能な強みと能力開発につながり、国際競争力の源泉となります。たとえば、日本では日産、ホンダ、トヨタ、スズキ、三菱、スバルのようなプレーヤー同士の激しい競争をしてきました。この激しい国内競争の結果、これらのメーカーは容易に外国市場でも競争できるようになった。

要因条件

特定の国の要因条件とは、利用可能な自然、資本、人的資源のことを示します。たとえば、サウジアラビアのような石油などの天然資源が豊富な国があります。これはサウジアラビアが世界中で最大の石油輸出国の一つである理由になります。人的資源とは、熟練した労働力、良好なインフラストラクチャー、科学的な知識ベースなどを示します。これらの要因条件は、スキルの開発と新しい知識の創造を通じて、絶え間なくアップグレードされることが重要で、そうしてアップグレードされたものが、その国の特定産業の大きな競争力の源泉になります。

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需要条件

特定の国における需要は、その国の中で産業が大きく育つ条件になります。市場が拡大すればするほどチャレンジは増えますが、その結果、企業はより成長を遂げ、製品やサービスはより良いものになっていきます。その国の顧客からの厳しい要求は、企業の成長、革新、品質向上にもつながります。こうした取り組みを通じて、その企業は国境を越えて顧客の将来ニーズにこたえられるようになっていきます。

関連産業と支援産業

関連産業と支援産業の存在は、その産業が卓越できる基盤になります。企業は多くの場合、顧客に対する付加価値を創造し、より競争力を高めるために、他の企業との提携やパートナーシップを構築しています。特にサプライヤーは、その企業のイノベーションを強化するために重要なパートナーとなります。たとえば、シリコンバレーには、創造的なアイデアを共有して、革新を刺激するために、あらゆる種類の技術オリエンテッドの大企業と起業家が集まっています。

政府

ポーターのダイヤモンドモデルにおいて、政府の役割は、「触媒と挑戦者」の両方として描かれています。ポーターは、政府を産業の本質的な支援者や支持者として見ておらず、競争力のある産業を創出することはできず、それができるのは企業だけだと考えています。しかし、各国政府は、より高いレベルの競争力に移行できるように促し、推進する必要があるとしています。たとえば、インフラ、教育システムの整備などや、反トラスト法などの企業間の競争を促す法整備です。

機会

ポーターは当初、機会についての言及はありませんでしたが、戦争や自然災害などの外的事象が国や産業に悪影響を及ぼしたり、利益をもたらしたりする可能性があることから、機会の役割がダイヤモンドモデルに含まれるようになりました。たとえば、2001年9月11日のアメリカに対するテロ攻撃の結果、国境警備が強化され、メキシコからアメリカへの輸出量を減らす結果になりました。こうした機会は企業ではコントロールできませんが、市場状況の変化にあわせて意思決定できるように、監視はしておく必要があります。

ダイヤモンドモデルの使い方

ダイヤモンドモデルは、ある国の産業が、なぜ他の国の同産業よりも競争力をもつのかを説明していて、外国への直接投資を考える際の分析と活用することができます。しかし、実際の投資の意思決定の際には、同時にその国におけるPEST分析やファイブフォース分析をセットで行うべきでしょう。

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