この記事では、配当金から理論株価を考える配当割引モデルについて解説します。
配当割引モデル
配当割引モデルとは、将来投資家が得る配当金の合計を期待収益率で割り引いて、現在価値にすることで株式の理論株価を求める手法のことです。(ただし、あまり多く使われている方法ではないようです。)
成長性を加味しない場合
現在の株価Pは1年後の配当金D1(インカムゲイン)と1年後の株価P1(キャピタルゲイン)によって表されるとします。
P = (D1 + P1)/(1+r)
1年後の配当金および株価は、現在の価値に割り戻す必要があるため、割引率(株主資本コスト)rで現在価値にしています。
さらに1年後の株価を2年後の配当金と株価で表すと次のようになります。
P = D1/(1+r) + D2/(1+r)2 + P2/(1+r)2
この計算を続けていくと、n年後の配当金をDnと株価 Pは次のようになります。
P = D1/(1+r) + D2/(1+r)2 + D3/(1+r)3+・・・・
+Dn/(1+r)n + Pn/(1+r)n
= ∑{Dn/(1+r)n} + Pn/(1+r)n
ここで、n年後の株価は十分小さくなり無視できるので、毎期の配当金 Dが将来も同じと仮定した場合、株価は次のよう計算されます。
P = D/r ・・・① (株価) = (配当金)/(期待収益率) |
たとえば、ある会社の配当金が100円で期待収益率を6%とした場合、理論株価 Pは次のようになります。
P = 100/6% = 1667円
ここで期待収益率には一般的にWACCを用います。
成長性を加味した場合
①式では成長の概念がありませんが、毎期の配当金が年間gの成長率で成長したとすると、理論株価 Pは次のようになります。(詳しい計算過程は省略します)
P = D / (r-g) (株価) = (配当金)/(期待収益率-成長率) |
先ほどの計算例で配当金の成長率が年2%だと見込むと理論株価 Pは次のようになります。
P = 100/(6%-2%) = 2000円
さて、先ほどの式は次のようになります。
r-g = D/P = 配当利回り
D/Pは配当金/株価なので、この式は配当利回りを表します。もし投資家の株式に対する期待収益率が6%で、ある企業の配当利回りが1%の場合、投資家はその企業に年5%の成長期待をしていると考えることもできます。