FABE分析(ファブ分析)とは、プレゼンテーションや営業トークにおいて、商品やサービスの特徴とベネフィットをわかりやすく伝えるときに使う手法です。
特徴(Feature)利点(Advantage)便益(Benefit)証拠(Evidence)の頭文字からFABE分析と呼んでいて、読み方は「ファベ」と「ファブ」の2通りありますが、どちらでも問題がありません。
FABE分析を使えると、以下のメリットがあります。
FABE分析を使うメリット
- 相手に話を聞いてもらえるようになる
- 顧客への提案を受け入れてもらいやすくなる
- 社内のキーマンを説得しやすくなる
この記事では、相手にわかりやすく伝えるためのFABE分析について解説していきます。
FABE分析の概要
FABEとは、特徴(Feature)利点(Advantage)便益(Benefit)証拠(Evidence)によって構成されています。
- 特徴(Feature)
- 利点(Advantage)
- 便益(Benefit)
- 証拠(Evidence)
セールストークをする際に、このFABEの順番に沿って話をすることで、相手に対して納得感のある説明ができるようになるのです。
特徴(Feature) ⇒ 利点(Advantage) ⇒ 便益(Benefit) ⇒ 証拠(Evidence)
それぞれの詳細を事例とともに解説していきます。
特徴(Feature)
FABEにおける特徴とは、製品やサービスの客観的な特徴のことです。
カメラを例にすると、重さ、サイズ、画素数などが特徴になります。
特徴そのものを説明しただけでは、何がよいのかわからないので、次に利点(Advantage)を明確に伝えます。
利点(Advantage)
利点とは、特徴から生み出される「優れたポイント」のことです。
たとえば、カメラが小さいという特徴に対して、「持ち運びが便利」というのが利点になります。
利点まで説明すると製品の優位点がわかるようになりますが、顧客にとって何がよいのかが不明瞭なままです。
そこで、次に顧客に対する便益(Benefit)を明確にします。
便益(Benefit)
便益とは、顧客ベネフィットのことで、顧客が製品やサービスから得られる望ましい効果を示します。
カメラが小さくて持ち運びが便利という利点に対して、「ポケットに入れて、手ぶらで出かけられます」というのが顧客に対する便益になるでしょう。
便益(ベネフィット)は利用することで得られる有形、無形の価値であり、「便利になる、得する、有利になる、快適になる、楽できる」など、製品やサービスによって得られる明るい未来と言い換えてもよいでしょう。
便益が明確になると、製品やサービスが買うに値するか、時間を使うに値するかを明確に判断できる材料を顧客に提供できるようになります。
この便益をさらに補強してくれるのが、次に解説する証拠(Evidence)です。
証拠(Evidence)
証拠とは、顧客にとっての利益を証明できる事柄のことです。
カメラがポケットサイズだとすると、実際にポケットに入れて見せれば、証拠になります。
証拠まで示せると、一気に相手の納得感が高まります。
ここまで挙げた例を組み合わせて、セールストークにすると以下のようになります。
FABEをセールストークにした例
F:このカメラを見て下さい。とても小さいでしょう?
A:だから持ち運びがすごく便利なんですよ。
B:このカメラなら、ポケットに入れて手ぶらで出かけられますよ。
E:ほら、見て下さい。実際にポケットに入れてもまったく違和感ないでしょう?
このようにFABEを活用するだけで、説得力のあるセールストークになるのです。
逆にこの中の一つでも欠けると、説得力の弱い説明になってしまいます。
たとえば、F、Aまでの説明に留まって、B、Eの説明が不十分だと、聞き手としては消化不良に陥ってしまいます。
FABE分析がよく使われているのはテレビショッピング
FABEがよく使われるのは、テレビショッピングです。
テレビショッピングの場合は、FABEの前に「こんなことで困っていませんか?」という顧客の困りごとが加えられますが、その後は基本的にFABEのフレームワークに沿って話が展開されていきます。
他にも、カタログやプレゼンテーションなど、商品やサービスをアピールするときにこのFABE分析が活用されます。
カタログについては、以下のようなツイートもしていますが、カタログをFABEで再構築すると見違えてよくなることがあります。
B2Bの製造業で良い製品を作っているのに、カタログに技術的な特徴が淡々と書かれているだけという会社が多いけど、その特徴を顧客から見た価値で描き直すだけで、カタログが断然よくなることがある
商品に思いがあると特徴を凄いと思ってしまうけど、顧客には価値を凄いと思わせる必要があるんだよね
— セーシン (@n_spirit2004) October 3, 2020
FABE分析の具体例
FABEの例として、製品開発者の立場で新製品のFABEを考えてみます。
FABEは相手が感じるベネフィットによって変える必要があるので、対エンドユーザー、対流通業者、対営業、対経営陣の4パターンで事例をあげてみました。
エンドユーザーに対するFABE
エンドユーザーに対しては、先ほどのカメラの例で説明したように、B(便益)のところに製品を使うことによる明るい未来を想像させるようにするのが定石です。
製品を買うことによって、楽になる、節約できる、不安がなくなる、快適になるなどです。
新製品のFABE分析例(対エンドユーザー)
- F:性能・機能・品質・デザインの特徴や優位性、定価・小売価格
- A:新しくできること、得になること、節約できること、省ける手間
- B:楽になる、節約できる、不安がなくなる、快適になる
- E:ユーザーアンケートや試供品モニターの結果、実機の検証結果
流通業者に対するFABE
流通業者にとってのB(便益)では、その商品を扱うことで大きく儲けられたり、楽に儲けられたりすることがポイントになります。
新製品のFABE分析例(対流通業者)
- F:エンドユーザーにとってのFABE、販売マージン、プロモーションプラン
- A:他社製品とのマージンやプロモーションプランの違い
- B:客が増える、ライバルに勝てる、たくさん儲けられる、楽に儲けられる
- E:ユーザーアンケートや試供品モニターの結果、実機の検証結果、他の流通業者での実績
自社の営業に対するFABE
営業にとってのB(便益)には、その商品を扱うことで営業目標をクリアできることが挙げられます。
新製品のFABE分析例(対自社営業)
- F:エンドユーザーにとってのFABE、戦略上の位置づけ、販売施策、営業のマージン
- A:値引しなくてよい、他社よりも簡単に売れる
- B:営業目標をクリアできる
- E:地域限定で実施したテスト販売の結果
自社の経営陣に対するFABE
経営陣にとってのB(便益)には、経営計画の達成できることや、社外から自社への評価を高められることなどが挙げられます。
新製品のFABE分析例(対経営陣)
- F:エンドユーザー、流通業者、製造者、営業にとってのFABE、戦略上の位置づけ
- A:売上拡大、シェアアップ、市場拡大
- B:経営計画を達成できる、ライバルに勝てる、株主からの評価が高まる
- E:ユーザーアンケートや試供品モニターの結果、テスト販売の結果
まとめ
FABE分析はシンプルなフレームワークであるにもかかわらず、セールストークやプレゼンテーションで有効活用できます。
営業やプレゼンが、うまくいかないと思ったら、このFABE分析を使ってみてはいかがでしょうか。
- FABE分析は営業場面やプレゼンの場面で活用できるフレームワークで、それぞれF:特徴、A:利点、B:利益、E:証拠を表している。
- 営業やプレゼンをしていると、FやAまでに説明を留めているケースが多いが、相手にとってのBやそれをサポートするEまで示すことが大事である。
- FABE分析の内容は、営業・プレゼンをする相手によって変わってくるので、相手にあわせたBを考える必要がある。