このブログでは、ロジックツリーやシックスシグマなど、さまざまな分析手法を紹介しています。
しかし、分析の方法自体はその表現方法まで細かく分けていくと、さらに細分化されていきます。
この記事では、実務上よく使う以下4つの分析手法を可視化事例を交えて紹介していきます。
ロジカルに物事を考える上で、必須となる考え方ばかりです。
分析手法1.ファクター分析
ファクター分析とは、ある指標に対して、いくつかの変動要因がある場合に、どの変動要因が指標に対して大きな影響を与えているかを把握するための分析です。
ファクター分析の代表例には、売上、利益の関係や、ビジネスプロセスに基づいた付加価値の分析があります。一般的にファクター分析は、数字だけではわかりにくいので、チャートにして視覚化して行われます。
ウォーターフォールチャート
ファクター分析では、次に示すようなウォーターフォールチャートがよく用いられます。このチャートは、積み上げ棒グラフをただ単に分解したものですが、積み上げ棒グラフでは表しにくいマイナス値を表すことができるのが特徴です。
ウォーターフォールチャートの例
ファクター分析の例
■売上・利益分析
売上・利益を費用ごとに分解して分析する方法です。視覚化することで、どの要因が最も影響の大きい要因かがわかります。他の企業と比較したり、時系列で比較したりすることもできます。
※売上・利益分析の例
■差異分析
差異分析とは、同じ指標を年度やロケーションなどによって比較して分析する方法です。
※差異分析の例
■漏れ分析
漏れ分析とは、プロセスの中での漏れと最終結果にどのような関係があるのかを示すものです。代表的な漏れ分析にシェアの漏れ分析があります。
シェアが上がらないのは、商品が悪いからという意見が多くでることがありますが、このような漏れ分析をすることで、商品では競合と互角に戦えているが、実は営業上カバーできていない範囲が多いことの方が問題といったより改善感度の高い問題に到達する場合があります。
分析手法2.マトリックス分析
マトリックス分析とは、異なる2つの切り口を座標として分析する方法です。マトリックス分析によって、異なる切り口の相関を見たり、全体の中でモレている部分を発見するのに使えます。
マトリックス分析の例を紹介します。
セグメント分析
マトリックス分析をよく用いる分析方法として、セグメント分析とは、市場や商品をある切り口(セグメント)で分ける方法です。
上の図のように、ある商品をターゲットとする年齢層と価格帯で分けると、どの商品がどこをカバーしていて、どこが抜けているのか一目瞭然でわかります。
この場合、A~Eの商品ではカバーできないような、中級価格帯で高年齢向けの商品や、高級価格帯で若者向けの商品は、まだ市場投入されていないので、投入すればそのセグメントの顧客を独占できることがわかります。
CS/CE分析
もうひとつ、マトリックス分析としてよく使われる分析方法に、CS/CE分析があります。CS/CE分析とは、現状の顧客満足度(CS)と顧客の期待度(CE)をマトリックスにして分析する方法です。
CS/CE分析では、通常マトリックスの右下に位置する部分を重点的に改善する必要があると考えられます。
改善のためには、「CSを向上させる」か「CEをコントロールする」ことが必要です。
■CSを向上させる
CSを向上させるには、評価の低い昨日やサービスを改善する必要があります。
■CEをコントロールする
CEをコントロールするには、CSの低い商品に対して、過度な訴求をやめて適切な訴求をすることが必要になります。
その他のマトリックス分析
その他にも、経営戦略によく用いられるPPM分析や、アンゾフのマトリックスなどがよく用いられます。
(参考)定量分析で使うマトリックス
定量分析の場合、2つの変数を動かして結果がどうなるかをマトリックスで分析することがあります。そのときにはエクセルのテーブル機能が役に立ちます。
たとえば、元本100万円を長期で預金するとした場合に、金利と預金期間を変数としてリターンを求めことを考えます。この場合、次のようになります。
次に、表全体を選択し、データの中にある「What-If分析」からデータテーブルを選びます。(エクセル2007より前のバージョンの場合、「データ → テーブル」の順に選びます。)
データテーブルを選ぶと、「行の代入セル」と「列の代入セル」というものが出てきます。これは、行(横軸)の値と、列(縦軸)の値を計算フォーマットのどの値に置き換えるかを聞いてきているもので、今回の場合は行には金利の値を、列には預金期間の値を入れます。
ここでOKを押すと、下の図のように2つの変数に応じた計算結果を表示することができます。
このようにテーブル機能を使うことで、簡単に2変数の分析をすることができます。
分析手法3.パレート分析とは
パレート分析とは、問題の原因となる構成要素を影響度が高いセグメント、低いセグメントに分けて、問題把握や解決策の検討を行うものです。次のようなパレート図を作成し、分析を行うと、明確になります。QC7つ道具のひとつとしても有名です。
この場合、項目Cを解決すれば、全体の問題の半分以上が解決することが一目でわかります。仮にここで項目Aの解決に力を注いでも、全体の1割程度の改善にしかならないことになります。
通常、ある問題を解決する場合、発生原因はいろいろあげられますが、8割の問題は、2割くらいの項目によって占められていることが多い傾向があります。これをパレートの法則(20:80の法則)といいます。
パレート分析は、不具合解決や売上増加などさまざまな問題解決の場面に用いられます。
ロングテール現象
ロングテール現象とは、売上金額の上位20%に入らない残りの80%に属する少数のアイテムの方が、上位20%で売れる数よりもはるかに多くなるような現象のことです。
これまでのビジネスでは、上の例のように20:80の法則で、上位20%のものに注力すればだいたいOKと考えられてきましたが、最近では残りの80%の部分でビジネスをして収益出すというモデルも成立してきているようです。
たとえば、在庫回転率が肝となる従来書店が、年に1冊しか売れない本を100万タイトル揃えても商売にはなりませんでしたが、ネットの普及によりアマゾンのようなロングテールで儲けるビジネスモデルが成立するようになりました。
ただし、ロングテールを独占できたからといって必ずしも儲かるわけではありません。また、ロングテールは、儲けられるだけの母数が多いようなアイテム数がとんでもなく多いビジネスでしか有効でないともいえます。
分析手法4.感度分析とは
感度分析とは、ある指標の変化が最終結果にどのように影響を与えるかを明らかにすることです。たとえば、売上、費用、利益を考える際に、費用の中でも固定費が5%上がった場合の利益、変動費が10%下がった場合の利益などを明らかにするなどは感度分析の一例です。
感度分析をすることで、環境変化により指標が変化した場合に、どの程度の損害を被るのか、あるいは予想外の利益がどの程度生まれるのかを定量化することができます。これによって、不確実な事象に対して具体的な備えをできるようになります。
感度分析の事例
感度分析の一例として、売上高、固定費、変動費が変化すると、利益にどのような影響を与えるか見てみます。
まず、標準ケースとして売上高を2000万円、固定費を300万円、変動費を1200万円(売上高の60%)とします。この場合、利益は500万円です。
ここで、各要素が-20%~+20%の間で変動したとすると、利益はそれぞれ下の表のようになります。
(単位:万円)
標準ケース | 売上高が変動 | 固定費が変動 | 変動費が変動 | ||||
変動率 | 0% | 20% | -20% | 20% | -20% | 20% | -20% |
売上高 | 2000 | 2400 | 1600 | 2000 | 2000 | 2000 | 2000 |
固定費 | 300 | 300 | 300 | 360 | 240 | 300 | 300 |
変動費 | 1200 | 1440 | 960 | 1200 | 1200 | 1440 | 960 |
利益 | 500 | 660 | 340 | 440 | 560 | 260 | 740 |
この感度分析からは、変動費の変動が最も大きく利益を左右し、固定費の変動による利益への影響が最も小さいことがわかります。
感度分析を視覚化できるグラフ
感度分析の結果を視覚化して図にする場合、大きく2つの図を用います。ひとつはスパイダーチャート、もうひとつはトルネードチャートです。
スパイダーチャート
スパイダーチャートとは、横軸に各要素の変動率、縦軸に影響を見たい結果を取ったグラフのことです。要素をいくつか分析すると、くもの巣のようなグラフになることからスパイダーチャートと呼ばれています。
上の例で上げたものをスパイダーチャートにすると、以下のようになります。グラフにすると一目瞭然で変動費の影響が大きいことがわかります。
通常、スパイダーチャートでは、上下の変動率を20%としてグラフ化します。
トルネードチャート
トルネードチャートとは、各要素の値を80%の確率で起こり得る範囲にした場合の最終結果に与える影響をみるためのグラフです。変動幅の大きいものから順に上から並べていくので、あたかも竜巻のようなグラフになることからトルネードチャートと呼ばれます。
先ほどの例で、各要素の変動幅±20%が80%の確率で起こると仮定した場合のグラフは次のようになります。
株価の感度分析例
まとめ
いかがでしたでしょうか。実務上よく使う4つの分析方法を紹介しましたが、どれも有効活用することで、論点が整理でき、聞き手に対する説得力が増すものばかりです。
ここに挙げた例をぜひみなさんの成果アップにつながるようご活用ください。