私は、ある企業で5年ほど課長をしていましたが、課長になったばかりの頃は部下のマネジメントで苦慮することも多かったです。
マネジメントに関する本も何冊か読んで、いくつかの研修にも出ましたが、自分のしっくりくるもの、こないもの、試してうまくいったもの、あまりうまくいかなかったものさまざまでした。
その中で、私が実際に活用してみて有用だと思ったものがあります。それは人を4つのタイプで考えた上でコミュニケーションを工夫するという手法です。
詳細はこちらの本に記載されていますが、簡単に要約すると、人の特徴を統計的に4つのタイプに分類、それぞれの個性にあったコミュニケーションをとることで人材マネジメントがスムーズにいくという趣旨で書かれています。
この手の分類は他にもたくさんありますが、タイプごとの対応方法とその実例がとても実践的だったのがよかったと思っています。
4つのタイプとは
4つのタイプとは、コントローラー、プロモーター、サポーター、アナライザーに分けています。これは、自己主張と感情表出の2つの軸からなる4象限から分類されています。
※本書を参考に作成
詳細は、以下のページで確認できますが、この記事でも主な特徴を抜粋しました。
【図解】「タイプ分け™」とは 〜あなたはどのタイプ?タイプ分けで上手くいくコミュニケーション
コントローラーの特徴
行動的で野心的、自分の思ったとおりに物事を進めることを好みます。
人をコントロールすることを好む一方で、自分をコントロールしようとする人に反発するところがあり、人の話を落ち着いて聞かずに結論を急ぐ傾向があります。
また、厳しい困難に立ち向かっていくことを得意とします。
プロモーターの特徴
好奇心旺盛でアイデア豊富も、過去の慣習にとらわれず変化や混乱に素早く順応していきます。
一方で、飽きっぽい面があるのと、自分の話をするのが好きで人の話を聞かない傾向を持っています。場を盛り上げて人のモチベーションを上げるのが好きです。
サポーターの特徴
協調性があり、人のことが好きで人のサポートをすることを大事にします。
理論よりも感情に基づいて判断するところがあり、リスクを冒すのも苦手です。人の期待に応えようとするあまり、ノーと言えない部分がある一方で、相手からの感謝や愛情を求めています。
アナライザーの特徴
慎重に行動し物事をきちんと分析して計画を立てるのを好みます。
立てた計画を計画通り粘り強く最後までやることを大事にしていますが、変化や混乱には弱いところがあります。
自分と部下のタイプを知る
マネジメントで使うときには、まず自分のタイプを知っておく必要があります。
先ほどのリンク先をみながら自分がどれに当てはまりそうか想像するだけでもよいですが、私の場合は、ある研修の中で質問シートを使って分析することができました。
結果、私はコントローラーとプロモーターが拮抗しながらもややプロモーターが優位なタイプだとわかりました。
基本的に人の言うこと聞かず、ときに困難な道を自分で好きなように切り開いていくことに喜びを感じるタイプだと思っていたので、かなり納得の結果です。
部下のタイプについては、普段の会話や行動から観察して考えるしかないですが、何となく強く出ている部分を観察するだけでも想像することはできます。
実際に私と同じ分析をやってもらった部下もいましたが、おおよそ予想と合っていました。
タイプ分けを知ってから変えたこと
4つのタイプ分けを考えるようになってから、マネジメントをするときに以下の点を意識するようになりました。
褒め言葉のバリエーションを増やした
私は自分がプロモータータイプなので、「すごいな」くらいしか褒め言葉のバリエーションを持っていませんでした。実際に自分もこの褒め言葉だけで十分の人間でしたので。
しかし、これだけだとプロモーター以外のタイプには通じにくい褒め言葉だとわかったので、褒めるときに相手に合わせて褒め方を変えるようにしてみました。
- コントローラーに対しては事実を客観的に褒める(例:お客さんが喜んでいたよ)
- サポーターに対しては自分がサポートしてもらったことを褒める(例:いつもありがとう、助かったよ)
- アナライザーに対しては得意分野をピンポイントで具体的に褒める(例:そういう●●できてしまうところが素敵ですね)
対極のタイプの人に配慮するようになった
プロモータータイプの私にとって、アナライザーは対極に位置する存在です。
実際アナライザータイプだなと思える人と会話していると、「まどろっこしいな」と感じることがあったので、タイプのことを知る前から対極にいるのだろうという感覚はありました。
しかし、アナライザーの特徴を知るようになってからは、話し方に注意するようになりました。
私は「何とかなるよ!」、「やりながら考えよう!」、「調子はどう?」などと言ってしまいがちでしたが、これらはアナライザータイプには不快な言い回しでした。
なぜなら、不確定要素の大きい未来や、どう答えると正確な答えになるかわからない曖昧な質問をするのはアナライザーにとって不快でしかないからです。
タイプの特徴を知ってからは、具体的な言い方に変えてみました。
たとえば、「◯◯の状況から考えると、++くらい確率で突破可能じゃないか」とか、「最近、@@のプロジェクトの中で、進捗が思わしくない部分は具体的にどこですか?」というような感じです。
意識して人の話を聞くようにした
自分でも自覚していたとおり、人の話をしっかり聞かないところがあるので、部下と話しをするときに注意するようになりました。
特に相手が重要と思っているポイントを自分の主観ではなく相手から見える景色になるべく寄り添って聞く意識を持つようになりました。
マネジメントに反映した効果
4つのタイプを踏まえて人によって行動を変えるようにしてから、組織内のコミュニケーションがとてもスムーズにいくようになりました。
実際に、「今までこういう褒め方されたことがなかった」という部下からの嬉しいフィードバックもありました。
また、こちらが相手に配慮したコミュニケーションをとるようになると、こちらの話も部下に聞いてもらえるようになり、悪い情報もすぐに上がるようになるなど、副次的な効果が生まれたのもよかったです。
まとめると、タイプ分けというテクニックを通じて、
- 部下のことをより真剣に知ろうとするようになった
- 相手に合わせたコミュニケーションの取り方を考えるようになった
ことが本質的には大きかったのだと思っています。
もし部下のマネジメントにお悩みであれば、一度タイプ分けを参考にして部下とのコミュニケーションの取り方を変えてみてはいかがでしょうか。
また、タイプ分けは上司や同僚とのコミュニケーションにも有効活用できるので、対人コミュニケーションのお悩みの方全般に有効な手法だと思います。