経営戦略論の中で、最も有名なポートフォリオ・マネジメント理論が、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)分析です。
しかし、PPM分析には問題点も指摘されていました。
こうしたデメリットも踏まえて、登場したのがGEビジネススクリーンと、バリューポートフォリオというポートフォリオ・マネジメントの手法です。
この記事では、その2つのポートフォリオ・マネジメントの手法を解説していきます。
GEのビジネススクリーン
GEのビジネススクリーンとは、GE(ゼネラル・エレクトリック)とマッキンゼーが開発した9つのセルを使って企業ポートフォリオの評価を行うためのフレームワークです。
GEのビジネスクリーンでは、PPMのように単に市場成長率とシェアで分類するのではなく、さまざまな要素を重み付けをしながら複合的に勘案した「長期的な業界の魅力度」と、「競争ポジション(事業の強度)」を軸にとっています。
これによって、事業の外部環境や前提条件に応じて縦軸や横軸を柔軟に変えて考えることができます。
長期的な業界の魅力度を測る指標
長期的な業界の魅力度を測る指標としては、
- 市場規模と成長率
- 競争度合い
- マクロ環境(社会、政治、技術、経済)の影響
- 参入障壁と撤退障壁
- 必要な技術と資本
- 機会や脅威の出現
などがあります。
どれか1つで考えることもできますし、複数の項目を重み付けしてポイントをつけて判断することもできます。
競争ポジションを測る指標
競争ポジションを測る指標としては、
- 相対的なシェア、コスト・ポジション
- 技術力
- 競合他社を上回る製品・サービス
- 経営能力
- コア・コンピタンス
などがあります。
長期的な業界の魅力度と同様に、どれか1つで考えることもできますし、複数の項目を重み付けしてポイントをつけて判断することもできます。
バリューポートフォリオ
バリューポートフォリオとは、「ROI(投資収益率)の高さ」や「事業価値創造への貢献」など株主の視点と、「会社のビジョンとの整合性」などを会社の資源をどの事業に集中させるべきかといった経営者の視点を軸にしたフレームワークです。
バリューポートフォリオは、PPM分析と同様にコンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループによって考案されました。
バリューポートフォリオでは、各事業をビジョン整合性とROIの高低によりプロットして、その事業に投下した資本の大きさを円の面積で表します。
4つの象限は、それぞれ本命事業、課題事業、機会事業、見切り事業に分類されます。
課題事業
ビジョンとの整合がとれているのに、収益性が低い事業です。経営者がこの事業での収益化(=利益率の向上)を図らなければ、株主から撤退圧力がかかる事業です。
本命事業
ビジョンとの整合性も高く、収益性の高い事業です。この事業は会社の設立趣旨そのものという事業になるので、より拡大させることが期待される事業です。
見切り事業
ビジョンとの整合性が低く、収益性も低いので、早々に撤退すべき事業です。
機会事業
収益性が高いにもかかわらず、ビジョンとの整合性が低い事業です。
早期に経営ビジョンとの整合をとる必要があります。
さもなければ、従業員のモチベーション低下や、ブランド価値の毀損につながる可能性があり、場合によっては、本命事業に資源投下するための売却対象となるかもしれません。
ポートフォリオ・マネジメントの手法比較
この記事と、PPM分析の記事で、あわせて3つのポートフォリオ・マネジメント理論を紹介しましたが、まとめると次のようになります。
- PPM:キャッシュの需要(市場成長率)と創出力(相対シェア)を軸にしてキャッシュフローの制約をどうマネジメントするかというフレームワーク
- GEのビジネススクリーン:PPMを発展させ、縦軸と横軸を状況に合わせて柔軟に変化できるようにしたフレームワーク
- バリューポートフォリオ:事業の再構築を検討するためのフレームワーク
まとめ
複数事業を持っている会社では、これらのポートフォリオを活用することで、自社事業のどこに資源を集中させるべきかを示唆を得ることができます。
自社の事業をこのポートフォリオに当てはめてみて、セオリーどおりに資源を投下できるのか?考えてみてはいかがでしょうか。
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