会社や組織の役職の中に「ゼネラルマネージャー」というものがあります。
英語ではGeneral Managerと書くので、その頭文字をとってGMと呼ばれることもあります。
このゼネラルマネージャーという役職、実はかなり広範囲に渡る意味を持っていて、会社ごと、または国ごとによっても異なる場合があります。
この記事では、ゼネラルマネージャーとはどういう人なのか、その役割や課題も含めて解説していきます。
ゼネラルマネージャーとは
ゼネラルマネージャーとは、一般的に管轄部門の業績責任を負ったマネージャーのことで、業績を達成するためにマネージャーを統括しながら業務を執行する人です。
したがって、日本だと一般的には以下の役職の人がゼネラルマネージャーに位置する人になります。
- 事業部長または事業統括部長
- 地域統括部長
前者だと会社内の何かの事業の責任者になりますし、後者だと海外拠点のトップなど地域の損益計算書に責任を持つ責任者となります。
日本語に対応する肩書きとしては「部長」もあります。
しかし、日本の大手企業だと「部長」は「課長」を束ねる役割を持っているものの、技術部長、人事部長、財務部長というように、ある機能に特化した役割であるケースが多く、その場合はゼネラルマネージャーという言い方は適切ではありません。
日本で一般的な機能部門のヘッドを表す部長は、シニアマネージャー(Senior Manager)やデパートメントマネージャー(Department Manager)、または機能名称+マネージャー(例:Finance manger)と表現されるのが一般的です。
もちろん、業績責任を負って采配をふるう立場の人であれば、役職が単に部長であってもゼネラルマネージャーという呼び方でも問題はないでしょう。
ゼネラルマネージャーの役割
上で述べたとおり、ゼネラルマネージャーは担当する部門の業績に対する責任を持つ人です。
したがって、その事業や地域の社長のような位置付けで仕事をしていくことになります。
それを踏まえて、ゼネラルマネージャーの役割を考える順番に合わせて挙げていきます。
部門ビジョンの設定
まずは部門ビジョンを設定がゼネラルマネージャーの大事な役割になります。
ビジョンというのは単なる業績目標ではなく、事業を通じてどのように顧客や世の中の人に貢献していきたいかを表すものです。
ビジョンを策定する際に大事なことは、会社が示すビジョンとの整合をとれるようにしておくことです。
部門戦略の策定
ビジョンが設定できたら戦略を立案します。
戦略とは、以下の記事にも書きましたが、「企業・事業目的を競争優位性により持続的に達成できる構造を構築する施策群」を示します。
事業のKSFを特定して、複数の代替えの中から事業部門の強みを最も生かして競争優位を築ける施策群を策定します。
部門目標の設定
戦略が決まったら、責任部門の売上目標を決めます。
シェア●%という市場規模から考えてもよいですし、市場規模を算定しにくい事業であれば、顧客の購買行動を積み上げて目標を立案するのもよいでしょう。可能であれば、一般的には両方のアプローチで考えます。
この目標を設定する際には、市場規模の算定と、売上の分解が重要となるでしょう。
目標を設定したときに、売上が小さすぎる場合は、もう一度戦略に立ち戻って案を練り直す必要があります。
必要リソースの特定
戦略目標ができたら、実行施策を立案するために必要なヒト・モノ・カネを特定します。
部門目標の設定すれば、売上目標はある程度わかっているので、必要な費用や投資額を算定していきます。
さらに売上に連動する変動費が何で、固定費が何かを特定しておくことも大事です。
特に売上が小さい部門のゼネラルマネージャーをやる際には固定費の割合をおさえることが、事業成功の肝になってくるときがあります。
予測損益計算書の作成
必要リソースまで特定できると、予測損益計算書を完成させることができます。
予測財務諸表ができると、売上目標に基づいた利益目標を設定することができます。ここで、利益率が目標から乖離しているのであれば、部門目標や必要リソースの見直しをする必要があります。
組織の設計
統括する事業の損益計算書ができたら、それを実現するための実行体制を明確にします。
そのためには、組織体制を考えていきます。ゼネラルマネージャーが最も効果的に施策を実行できる体制を考えて、組織図を描いていきます。
特に組織の要職(主には自分の直属の部下である部長、課長)に誰を置くべきなのかをよく検討します。当然会社リソースの制約があって常にベストな人選をできるわけではないので、2、3人候補を選定できているとよいでしょう。
必要リソースの獲得と配分
損益計算書と組織図で考えたヒト、モノ、カネの獲得をします。
リソースは社内外から広く求める必要があります。一旦目標を設定してしまうと、リソースが足りないからできなかったという言い訳はできないので、あらゆる手段でリソースを獲得するという気構えが必要になります。
実行の管理・監督
リソースが配分できると後は実行の管理です。
ゼネラルマネージャーが管理・監督すべきことは非常に多岐にわたります。
したがって、全てを自分で管理・監督することは不可能なので、どの部分を誰に権限委譲しするのか、どの部分を自ら采配してリードするのかを明確にするべきでしょう。
これは、部下や組織の能力にも関係するので、ゼネラルマネージャーは自分の部門に所属する部下とよく話し合って、管理・監督のやり方を決める必要があります。
また、管理・監督のためのプロセス整備も重要になってきます。なぜなら、ゼネラルマネージャーは結果さえ出せばよいのではなく、できる限り再現性の高いやり方で結果を出す必要があるからです。そのためには、プロセスを立案して検証するというPDCAを回していくことも大事になります。
そして、日々起きる課題に対して、優先順位を考えて的確に意思決定をして事業を進めていく必要もあります。
ゼネラルマネージャーに必要とされる資質
ゼネラルマネージャーに必要とされる資質を分解して考えると以下のようになります。
- ビジョン策定能力
- 戦略立案能力
- 組織設計力
- リソース獲得のための政治力
- 他部門に協力をあおぐための交渉力
- 支援を募れる人脈
- 人を動かすリーダーシップ
- 的確な判断力
ゼネラルマネージャーは、これらを高いレベルで身につけている必要があります。
仮に多少足りない能力がある場合は、得意な人間を配置するなどして組織として能力を補うという考え方も必要です。(もちろん勉強して身につける努力は必要ですが、ゼネラルマネージャーは組織の成果を出すのが優先です)
ゼネラルマネージャーになるには
ここまで書いてきたようにゼネラルマネージャーには非常に多岐に渡る能力が要求されます。
したがって、もしこれを読んでいる人が将来ゼネラルマネージャーを目指すのであれば、早い段階からそのための準備をする必要があるでしょう。
一案は、なるべく若い段階でこのブログで書いているようなビジネス知識を広範にわたって習得することです。また、事業ヘッドや地域ヘッドを目指すのであれば、その事業や地域に関する土地勘を早めに養っておくのも大事でしょう。
また、組織の視点から見ると、ゼネラルマネージャーの資質がある人材には早めに多様な経験をさせるのがよいです。
たとえば、以下のような経験です。
- 海外駐在
- 新規事業のスタッフ
- 立て直しが必要な事業のスタッフ
これらはいずれも、自分の専門領域の枠を超えて活動することが要求されるので、全体視点を養うにはうってつけの経験といえるでしょう。