グローバリゼーションが進むにつれて、ますます多くの会社が国を超えてボーダーレスで事業を展開するようになってきています。国を超えて事業を展開する際に最もよく用いられる方法として、製品の輸出、国外企業へのライセンス付与、戦略アライアンス、ジョイントベンチャー設立などがあります。
この記事では、その中でジョイントベンチャーと戦略的アライアンス(戦略的提携)について紹介していきます。
ジョイント・ベンチャー、戦略アライアンスとは
ジョイント・ベンチャーと戦略アライアンスは多国籍企業がよく採用する方法です。その中で、Cullen Companyの定義によると、「国際戦略アライアンスとは、バリューチェーン上の異なる価値をもった複数の異なる国の会社によって成り立つもの」されています。ジョイントベンチャーとは、この戦略アライアンスの延長としてアライアンスに参加している会社が共同で立ち上げた会社のことです。
戦略的アライアンスは1990年代から急速に広がっていき、「Smart Aliance」の著者、HarbisonとPekarによると、1980年から1987年までで5,100件だったのに対して、1987年から1992年にかけて20,000件以上の新しいアライアンスがアメリカだけで誕生したそうです。そして1999年までに、2,000以上の会社が欧州の会社との戦略的アライアンスがあったそうです。
戦略的アライアンスのメリット
お互いの会社が強みと弱みを補完できる関係になることから、多くの会社が戦略的アライアンスによる恩恵を受けています。たとえば、地理的な強み、バリューチェーン上の強み、単にスケールの拡大などです。
先に紹介したグローバルマーケットへの進出においても、現地企業との戦略的アライアンスやジョイントベンチャー設立は、地理的な強み・弱みとバリューチェーン上の強み・弱みを補完するのに有力な選択肢になり得ます。
よくある例が、グローバル企業は生産規模や研究開発の能力を持っていても、進出予定国での法律、商習慣などの知見や販売チャネルがない場合に、販売チャネルをもった現地のローカル企業とのアライアンスやジョイントベンチャーという選択肢が考えられます。現地のローカル企業にとって、グローバルブランドの製品を独占的に扱えるというメリットがでます。
航空会社のアライアンスも代表的な戦略的アライアンスの例で、現在のところ、アメリカン航空やJALなどが加盟している「ワンワールド」、ルフトハンザ航空、シンガポール航空、ANAなどが加盟している「スターアライアンス」、デルタ航空、エールフランス、大韓航空などが加盟している「スカイチーム」の3大アライアンスがあります。
協力会社の選択
上述のメリットを享受するためには、適切な協力会社を探し、選択する必要があります。まず協力会社がお互いの補完関係になっているかどうかが重要です。そして、提携によるゴールが共通なものであることも重要です。特にジョイントベンチャーを設立したときに、お互いのゴールとする方向性がずれていると、ベンチャーの成功は難しくなります。
たとえば、韓国のある通信機器会社が先進技術を持っていて、その会社がフランスで80%のシェアを持っている現地のNo.1通信機器会社との提携を検討しているとします。
この場合、韓国の会社はフランス市場へのアプローチ、フランスの通信会社は韓国の会社の先進技術供与という共通の目標があることになります。これは非常に単純化された例で、現実はもっと複雑ではありますが、補完関係の例としては大変わかりすいもので、パートナーとして適切な候補であると言えるでしょう。
マネジメント体制 4つのタイプ
ジョイントベンチャーの場合にはジョイントベンチャーのマネジメント体制も考慮が必要になります。ここでは、4つのタイプを紹介します。
タイプ1:どちらかの親会社による独占
どちらかの親会社のパワーが強い状況です。これは往々にして、ジョイントベンチャーに出資する中で、最も価値の高い資産を供与できる側がパワーを持ちます。単純に会社規模の大小で決まる場合もあります。(たいていは大きい方が独占します)。この場合、どちらかの親会社の完全子会社のようなマネジメント体制になりますが、一方でジョイントベンチャーの経営方針に対して戦略的判断をスピーディーにできるメリットもあります。
タイプ2:出資者で協業する体制
これは出資比率が50:50に代表される体制です。この場合、どちらかが支配的な場合とは異なり、全ての経営的な意思決定において、出資している両社で協議をする必要があります。経営陣も投資している親会社から等しく派遣されます。(もちろん、その下の機能レベルになると、多少の人数の多少は生じます)
タイプ3:ジョイントベンチャーが独立会社のように運営される体制
これはジョイントベンチャーが独立した会社として経営される体制です。これは設立初期の頃には、あまり見られない体制で、設立してから数年経って経営が安定したときに見られる体制です。まれに、親会社間で運営体制に対する同意があり、かつマネジメントポジションを親会社からの派遣ではなく、外部からの採用とする場合、設立初期でもこの体制が見られます。
タイプ4:マネジメントのローテーション
これはキーとなるポジションの人材を親会社間でローテーションする場合です。これは、3社以上の会社が参画して、お互いのパワーが拮抗している場合に見られる体制です。
まとめ
国をまたいだビジネスが活発になればなるほど、戦略的アライアンスとその延長にあるジョイント・ベンチャーも増えていくことでしょう。そういう中で、これからのビジネスパーソンとしては、この記事でとりあげた程度の基礎は知っておいも損はないはずです。