管理会計とは、企業内部の意思決定や組織コントロールのために用いられる会計のことです。
企業の業績を表す財務データ(貸借対照表や損益計算書)を外部の関係者に公開していくため、定められたルールに従って作成する財務会計とは異なる考え方で運用されます。
管理会計 | 財務会計 | |
ルール | 決められたルールはなく、会社が内部コントロールをしやすいようにアレンジされることもある。 | 他の会社との比較が容易なように一定の会計ルールに従って作成される。 |
情報の質 | 正確さ以上に、スピーディーな意思決定をできるために、精度、効果、取得スピードのバランスが要求される。 | 正確さが要求される。 |
管理会計は、原価計算、業績管理、意思決定の3つに分野に分けられます。
原価計算
管理会計でよく出てくるのが、原価計算です。原価計算で大事になるのは、直接費用と間接費用の扱いです。
変動費と固定費
よく使われるのが変動費と固定費という考え方です。
変動費と固定費がわかることで、売上高が変化したときの利益の影響を正しく予想できるようになります。
原価を変動費と固定費に分ける方法は、以下の記事で解説しています。
限界利益
売上高から変動費を引いたものを限界利益と言います。
限界利益および限界利益率(限界利益/売上高)は、事業を拡大できるかどうかの判断材料の1つになります。
たとえば、仮に事業として赤字であっても、限界利益が大きければ売上の拡大によって大きく黒字化できるからです。
損益分岐点分析
変動費と固定費がわかると損益分岐点分析をできるようになります。
損益分岐点分析とは、利益がゼロになる損益分岐点売上高を求めることです。
損益分岐点売上高がわかることで、適切な事業目標を立てらようになるのです。
間接費の配賦
原価は、直接製品やサービスに結びつく直接費と、間接的に寄与する間接費という分け方もできます。
製品やサービスの間接費を計算する場合、間接費の配賦という作業が必要になります。
以下の記事で、間接費の配賦方法を複数紹介しています。
直接原価計算
財務会計では、原価計算をする際の手法は全部原価計算しか認められていませんが、管理会計では直接原価計算という手法をとることができます。
直接原価計算とは、直接費だけを計算して、間接費を期間原価として扱う方法のことです。
TOCスループット
管理会計理論の派生形として、真の変動費だけを考えるスループットという考え方が、TOC制約理論で登場します。
TOC理論に基づいて考えられたことから、TOCスループットと言います。
管理会計を用いた業績管理
管理会計は事業判断だけでなく、業績管理にも使われます。
バランス・スコアカードと戦略マップ
会計上のKPIを設定し、4つの視点から体系的にまとめたのがバランス・スコアカードと戦略マップです。
標準原価
業績管理では、標準原価という考え方もよく使われます。
標準原価とは、標準的な前提条件を設定して、そのときの原価を示す方法です。
通常は、製品を実際に作ってみないと実際の原価は正しく算定できませんが、それでは予算を作ることができませんし、管理方法を検討することもできません。
そこで、標準原価を設定して、実際の原価と標準原価との差異を見ることで、経営管理をしていくのです。
貢献利益
貢献利益とは、会社内のある特定の部門が貢献している利益のことです。
利益の中には、ある特定の部門だけではコントロールできない利益がありますが、それではどの部門がどれだけ利益に貢献したか判断できなくなってしまいます。
部門ごとに貢献している利益を明らかにすることで、そうした問題を解消でき、部門としての業績目標を立てるのが容易になります。
管理会計を用いた意思決定
管理会計は意思決定の場面でもよく使われますが、その際に潜在的に発生している原価の存在を間違えないように処理する必要があります。
埋没原価と機会原価
実態としては見えないものの、意思決定に重要な影響を与えるのが、埋没原価、機会原価です。
埋没原価とは、将来の意思決定に関係なく過去すでに発生してしまった原価のことで、意思決定の考慮に入れてはいけない原価です。
機会原価とは、ある選択肢を選んだときに、別の選択肢によってもたされる利益のことで、意思決定の考慮に入れるべき原価です。
内製・外製を判断するための管理会計
製造業だと内製・外製の判断に管理会計が使われます。