企業買収ためには、当然ながら資金が必要になりますが、資金調達にはいくつか方法です。
この記事では、よくある買収時のファイナンス方法について解説していきます。
企業買収時の資金調達方法
企業買収の際の資金調達には、大きく2種類あります。
現金による買収
現金による買収の場合、手持ちの現金が足りなければ、借入金で賄われます。大型買収の場合、手持ちの現金だけで買収できるケースは稀なので、借入金による調達をすることになります。
株式交換による買収
現金による買収以外に、株式交換という方法もあります。これは、買収する側の企業が新たに株式を発行して、買収される側の企業の株式と交換するという手法です。この方法だと、借入金増大のリスクを背負うことなく買収をすることができます。
買収された企業の株主は、買収成立後に買収した企業の業績リスクを共有するような形になります。
2つの方法におけるバランスシートのイメージ
2つの方法で、A社がB社を買収した場合のバランスシートの変化は次のようなイメージになります。
2つの調達方法(現金か株式か)の判断基準
買収側の企業としては、買収側企業の時価総額が過大評価されている場合は株式交換を選択した方がよいでしょう。一方で、買収後のシナジー効果実現に十分な確信がある場合は、買収側企業に多くのシナジー効果をもたらされるように現金を選択した方がよいでしょう。
しかし、現実には全額現金で支払うだけの資金調達(有利子負債の調達)は難しいため、両者の組み合わせにより買収するケースが多く見られます。組み合わせ方には、現金:株式=50:50というように予め比率を決める方法と、買収対象の株主にどちらかを選択させるという方法があります。
調達方法別のメリット・デメリット
買収側をA社、被買収側をB社として、それぞれの立場から代表的なメリット・デメリットを以下に紹介します。
■現金調達の場合
メリット | デメリット・リスク | |
買収側A社 (とその投資家) にとって |
株式の希薄化を防げる | 負債比率の上昇による破綻リスクの増大
上記に伴って借入金利上昇がすることで純利益も減少する(EPS減は既存株主からは嫌がられる) |
被買収側B社 (とその投資家) にとって |
確実な金融資産を手に入れられる | A社のアップサイドのポテンシャルを放棄することになる |
■株式交換の場合
メリット | デメリット・リスク | |
買収側A社 (とその投資家) にとって |
負債比率が増大しない | 株式の希薄化を招く(1株益の減少など) |
被買収側B社 (とその投資家) にとって |
A社事業拡大による更なる株価増大を狙える | 買収後はA社のリスクを負うことになる(たとえば株価変動リスクなど)
買収後はA社の株主施策に準じた扱いをうける(たとえば配当政策など) |
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