経営戦略上、限られた資源を有効に使って競争相手との技術競争に打ち勝つためには、技術の管理を研究開発部門任せにせずに、経営者(たとえ技術に対する知見が少なくても)が積極的にマネジメントしていくことが重要になります。
この記事では、技術戦略立案、技術マネジメントを考える上で重要なフレームワークを紹介します。
MFTとは
MFTとは、Mraket(市場)、Function(機能)、Technology(技術)の略で、技術と市場の間にある機能に着目することで、技術を活用できる市場を幅広く検討できるフレームワークのことです。
我々がよく犯してしまう過ちとして、技術と市場をダイレクトに1対1で結びつけてしまうことです(特に技術者に多く見られる傾向です)。たとえば、LEDを長持ちする電球としか考えなければ、電球が長持ちして嬉しい人だけが対象市場となってしまいます。
しかし、市場と技術を結ぶ機能を考えると、より幅広く市場ニーズを捉えられるようになります。先の例で考えると、機能として省エネ、省資源、地球環境にやさしいことを考えると、対象とする市場がより広がっていきます。
技術から生み出される機能を考えられる限り羅列して、それぞれの機能がどんな市場を対象にできるのかを考えることで、潜在的なビジネスチャンスをとらえる可能性が高まるわけです。
また、MFTフレームワークは、市場の変化に対して有効に活用することができます。
市場の変化は求められる機能の変化として表れます。そうすると技術をどのように変化させていけばよいのか、あるいは技術をどのように組み合わせればよいのかがわかります。
たとえば、携帯電話は電話ができることが重要な機能でしたが、どこでも情報を見たい、メールもしたい、音楽も聴きたい、携帯ひとつで何でも済ませたいというようにユーザーニーズが変化し、それによりオールインワンの機能が求められるようになりました。
それが、iphoneを代表とするスマートフォンの流行になったわけですが、これは既存の技術の組み合わせによって生み出されました。
研究開発ポートフォリオ
研究開発ポートフォリオとは、研究開発技術の位置づけを整理し、どの分野を継続するのか、どの分野に大きな資源を投入するのかを意思決定するためのツールです。
通常は2軸のマトリックスで考えます。
※研究開発ポートフォリオの例
研究開発ポートフォリオで、選択する軸としては次のようなものが挙げられます。
■市場観点
市場への精通度、技術の新規性、技術ライフサイクル、リターン、成長性
■競合視点
競争優位性、模倣リスク
■自社視点
開発期間、開発成功確率、必要資金、必要人員、技術への精通度
これらは、それぞれ単独で用いる場合もあれば、いくつかの組み合わせで考えるケースもあります。組み合わせの例としては以下のようなものがあります。
研究開発ポートフォリオと戦略例
研究開発ポートフォリオと戦略を結びつける例として、以下のように産業における重要度と、自社の技術ポジションという軸の取り方があります。
それぞれのポジションでとるべき行動例は以下のとおりです。
1.技術リーダー
- 競争優位の追求を継続する
- 新しい技術に常に目を光らせておく
2.追随 or 撤退
- 競争ポジションの改善に資源を傾ける
- 撤退して、他の技術分野に再投資する
- フォロワーポジションを維持できるだけの資源を継続投資する
3.過剰投資
- 技術ブレークスルーが起こるかどうか研究開発状況をチェックしておく
- 新たな技術に投資をする
- 技術を生かせる他産業へと多角化展開していく
4.選択的採用
- 市場投入について再検討する
- 技術開発をやめる
まとめ
企業にとって技術を育てることは大変投資のかかることです。したがって、この記事で解説したようなフレームワークに沿って適切に管理することが重要となってくるでしょう。
この記事を読んだビジネスパーソンの方も、ご自身の会社の技術がどのように管理されているか、確認してみてはいかがでしょうか。