ネットワーク効果とは、ある人がネットワークに加入することで、その人の利益になるだけでなく、既存のネットワーク加入者の利益も増加させる効果のことです。
ネットワーク効果は、電話、電子メールをはじめ、近年ではSNSをはじめとするプラットフォーム型の事業において重要な概念となっています。
この記事では、そのネットワーク効果について詳細を解説していきます。
ネットワーク効果のメカニズム
ネットワーク効果が働くメカニズムは以下のとおりです。
- 便利だから使われる
- 使われるから便利になる
- ますます便利だから使われる
- 使われるからますます便利になる
ネットワーク効果が働くサービスや製品では、品質や技術以上に利用者の数によって得られる利益の大きさが決まってきます。
そのため、あるサービスや製品が一旦シェアで優位になると、ユーザーが爆発的に増加する傾向があります。(ネットワーク効果が働くサービスの事例は、後ほど解説します。)
なお、ネットワーク内の人だけでなく、ネットワークの外部にいる第3者にとっての価値も高める意味から、ネットワーク効果のことをネットワーク外部性と呼ぶこともあります。
ネットワーク効果:2つのタイプ
ネットワーク効果には、以下2つのタイプがあります。
- サイド内ネットワーク効果
- サイド間ネットワーク効果
それぞれ詳細を解説していきます。
サイド内ネットワーク効果
サイド内ネットワーク効果とは、1つの製品やサービスの中だけで発揮されるネットワーク効果のことです。
単にネットワーク効果というと、このサイド内ネットワーク効果を指すことが多いです。
サイド内ネットワーク効果では、以下のようにネットワークの価値が高まっていきます。
顧客が増える ⇒ 価値が高まる ⇒ また顧客が増える ⇒・・・・
サイド内ネットワーク効果の事例として、以下のようなものが挙げられます。
サイド間ネットワーク効果
サイド間ネットワーク効果とは、あるプラットフォームにおいて、種類の異なる参加者グループの間で働くネットワーク効果のことです。
つまり片方の参加者グループが増加したときに、もう片方の参加者グループにとっても製品やサービスの価値が向上する現象なのです。
サイド間ネットワーク効果では、以下のように補完業者が間に入りながらネットワークの価値が高まっていきます。
顧客が増える ⇒ 補完業者が増える ⇒ 価値が高まる ⇒ また顧客が増える ⇒・・・・
一般的には、サイド内ネットワーク効果が働き、その後にサイド間ネットワーク効果が発揮されていきます。
なお、以下の記事では、ネットワーク効果のパターンを13分類に分けて解説しています。
https://hiromaeda.com/2018/02/04/network_effects/
ネットワーク効果の事例
ネットワーク効果が発揮される代表的なサービスは、以下のとおりです。
- 電話
- クレジットカード決済
- 電子マネー決済
- パソコンのOS(Windowsなど)
- SNSサービス(Facebookやツイッターなど)
- オークションサイト
- ECサイト
- 動画サイト(Youtubeなど)
電話
電話は、サイド内ネットワーク効果を発揮できる代表的なサービスです。
電話は通信が可能な相手が存在することで初めて利用価値が生じるからです。
多くの人が電話を利用することで、電話の利便性や普及度が高まり、ますます多くの人々が利用するようになりました。
そして最後には、そのネットワークに加入していないこと自体が不利益を被るような状態になってしまうでしょう。
固定電話はネットワーク効果を発揮した代表例でしたが、その後は携帯電話もネットワーク効果を発揮しながら普及していきました。
従来の電話が持っていた離れた人と話ができるというユーザーベネフィットに加えて、いつでもどこでも話ができるというベネフィットが加わったことで、爆発的に普及していったのです。
携帯電話のサイド内ネットワーク効果は、やがてサイド間ネットワーク効果も生み出しました。
携帯電話端末のメーカーにとっては端末開発の価値が急速に高まりましたし、スマートフォンの時代になるとアプリ開発の価値も高まったのです。
このように電話では、サイド内ネットワーク効果が発揮された後に、端末会社やアプリ開発会社に対するサイド間ネットワーク効果が発揮された代表事例となっています。
クレジットカード決済・電子マネー決済
クレジットカード決済も、利用者が増えれば増えるほどその利便性は飛躍的に高まり、より多くの人々に利用されるようになります。
カードの利用者が少ないうちはカードを持つメリットは少ないですが、世界中どこでも使えるようになると、カードを持つ価値は飛躍的に高まります。
クレジットカードは今やネット決済や電子マネーの決済など、さまざまな場面で利用されていて、サイド内ネットワーク効果を発揮したあとに、サイド間ネットワーク効果を発揮した典型的な事例になっています。
電子マネー決済もクレジットカード決済と同様に、利用者の増加が利便性を飛躍的に高めている事例です。
パソコンのOS
パソコンのOSは、多くのアプリケーションがそのOS上で動作することで利便性を高め、多くの人々がそのOSを利用するようになっています。
また、OSの普及度が高いことで、そのOSに対応したハードウェアや周辺機器、ソフトウェアが開発されるため、そのOSの利用者にとってのメリットが高まります。
このように、パソコンのOSもサイド内ネットワーク効果が生まれ、その後サイド間ネットワーク効果を発揮していく典型的な事例になっています。
なおWindowsがかつてシェアを大きく伸ばした理由が、ネットワーク効果をフル活用したことです。
OS自体の性能が特段優れていたわけではないものの、ソフトウェアメーカーやパソコンメーカーなどの補完事業者を上手に巻き込むことで、圧倒的な地位を築くことに成功しました。
SNS・オークションサイト・動画サイト等
SNSやオークションサイト、動画サイトもネットワーク効果を発揮できる代表例です。
利用者が増加することでコンテンツや商品の供給量が飛躍的に増加して、ユーザーにとって圧倒的な利便性を実現できるようになりました。
これらのサービスは、SNS広告運用、オークション代行、動画製作などのさまざまな補完業者を生み出して、一大経済圏へと発展しています。
これらのサービスを運営する会社は、ネットワーク効果をよく理解していたので、サービス開始初期は無料で人を集めて、やがて広告配信や有料会員の募集を通じて、収益化に成功しています。
ネットワーク効果の数値的考察
ネットワーク効果の価値を数値的に表す例として、そのネットワーク内の情報ラインの数があります。
ネットワーク内のN人の情報ラインの組み合わせ数は次のとおり表すことができます。
組み合わせの数 = N × (N-1)
つまり、ネットワーク効果のあるサービスにおいては、そのネットワークに参加する人間の数が増えると、その二乗に比例して価値が高まっていくのです。
たとえば、5人のネットワークで、それぞれが1対1で情報をやりとりする場合、そのラインの数は以下のようになります。
5 × (5-1) = 20通り
ところが、ネットワーク内の人数が500人なると、
500 × (500-1) = 249,500通り
となり、5人の場合に比べると、人数は100倍なのに、価値は12,475倍にまで膨れ上がることがわかります。
ネットワーク効果が効く事業では初期投資が大事
ネットワーク効果が効く事業では、効果が発揮されるまでは初期投資を惜しまないことが重要です。
仮に当初の業績は赤字であっても、効果が発揮されれば一気に黒字化できるようになるからです。
たとえば、携帯電話事業は代表例の1つです。
携帯基地局を作ったり、大規模な広告宣伝をしたり、端末を可能な限り安い値段で販売したりして、大きな初期投資をしたあとにネットワーク効果によって価値を飛躍的に向上させて、投資を回収するビジネスモデルです。
近年では、電子マネー決済がやはり大規模な投資によって、ネットワーク効果を実現しようとしています。
まとめ
以上、ネットワーク効果の解説でした。
- ネットワーク効果とは、サービスへの加入者が増えれば増えるほど、急速に価値が高まる状態のことを指す。
- ネットワーク効果には、サイド内ネットワーク効果と、サイド間ネットワーク効果があり、一般的にサイド内ネットワーク効果が発揮された後に、サイド間ネットワーク効果が発揮される。
- ネットワーク効果の代表例として電話、クレジットカード、インターネット系のサービスの他、パソコンのOSなどがある。
- ネットワーク効果が働くネットワークにおいて、ネットワークの価値は、ネットワーク内の人数の2乗に比例して高まっていく。
- ネットワーク効果が働く事業においては、初期投資を大きく使ってネットワーク内の人数を増やすことが重要になってくる。