人材マネジメント

組織とは【会社の組織構造と組織図事例】3種類の組織を解説

組織とは 会社の組織構造 組織図事例

もし会社に組織構造がないと、誰が誰の命令で動くのか、誰が誰の評価をするのかなどがわからなくなり、業務をスムーズに進めることが困難になります。

そのために存在するのが組織であり、組織構造です。

ただ、一言に組織と言っても、形態はさまざまです。

この記事では、人材マネジメントの基礎となる組織について、主な組織の役割・種類とそのメリット・デメリット、近年の課題について解説していきます。

組織とは・組織の役割

組織とは、企業の戦略を効率的に実現するためのものです。構造的な組織があることによって次のようなことが明確になります。

  • 誰が何をするのか
  • 誰が誰に仕事をさせるのか
  • 誰がどのような仕事をするのか

このように組織を作ることで、指揮命令系統が決まり、仕事を分業でき、情報の伝達をスムーズにさせることができます。

会社が創業間もない頃であれば、常にコアとなる少人数で意思決定しながら仕事を進められるので、組織構造は不要かもしれませn。しかし、会社が大きくなるに連れて、組織構造を作らないと、誰が何をやってよいのかわからなくなり、会社が健全に発展できない自体に陥ってしまいます。

組織の基本形

組織の基本形としては、以下の2つがあります。

ライン組織

ラインとは、トップの指揮命令下によって動く組織のことです。たとえば、工場で考えると、工場長、工場各課、各課係長という形で常にトップから命令が降りていく組織体系になっています。営業も同様に営業部長、支社長、営業所長、各営業所課長、係長という形になっています。いずれもピラミッド型の組織になっているのが特徴です。

ライン組織では、トップに権限が集中しており、各部門に対してトップが直接指示・命令を下すのが特徴です。小規模な組織で一般的に見られる形態です。

ライン・アンド・スタッフ組織

ライン組織にトップの情報処理や職能を助けるためのスタッフ部門を設けた組織形態です。スタッフは、会社全体で考えると、経営企画や人事、法務、広報などは経営トップを支える機能ということでスタッフ部門に分類されます。前述の工場で考えると、工場長を支える事務機能や秘書機能があるとすると、それは工場内のスタッフ機能となります。

スタッフ機能を設けることで、トップの負担を軽減できるメリットがありますが、スタッフの権限が大きくなりすぎたり、スタッフの肥大化により仕事の効率が下がったりするデメリットがあります。(スタッフが増えると、増えた分だけ仕事を作りだすという事象が起こるケースが多々あります。)

ライン・スタッフ組織

一般的に会社の規模が小さいうちは人事や広報は社長が兼任しているケースも多く、スタッフ機能は必要とされませんが、大きくなるにつれて必要となってきます。

スタッフの増員には注意が必要

スタッフを増やす際は慎重になる必要があります。その理由は3つあります。

1.スタッフは売上を直接コントロールできない部門だから

したがって、人数が増えてもコスト負担が大きくなる一方です。

2.スタッフは自ら仕事を作り出す性格があるから

スタッフは人数が増えれば増えるほど(大して重要でもない)仕事を増やしていく傾向があります。たとえば、広告部門の人数を増やすと、アピールしなくてもよいことまでアピールしようとすることが考えられます。また、他部門からの要望(それも優先度の低い要望)に対して人数が多いと答えてしまうことも考えられます。そのほかに、スタッフ間の情報伝達のための会議が増えることも考えられます。

3.スタッフが過度に権限を持つようになるから

スタッフが権限を持ってくると、会社の売上・利益の創出源であるライン組織がスタッフの言いなりなってしまいます。スタッフ部門には現場を知らない人が多い場合もあるので、現場で決めるべきことにまで干渉しだすと、組織の歯車が狂う一因になります。

一般的に、スタッフ部門の人数が多く、権限を持っている会社はうまくいかなくなるケースが多いようです。逆にスタッフ部門の人数を必要最小限に絞り、重要なことだけをやらせている会社はうまくいくケースが多いようです。また、そういう会社ほどスタッフは戦略的な物事の考え方をできるようになるようです。

組織が大きくなると、スタッフをついつい増やしがちですが、部門のトップは一人当たりの生産性が最も高くなるラインでスタッフの増員を止めるという意識を常に持っておく必要があります。

組織構造・3つの種類

組織構造には、主に次の3つがあります。

機能別組織

開発、営業、生産など、どんなことをするかによって区切った組織のことです。急激な外部環境変化が少なく、組織の効率性・専門性を高めることが成功要因になり、かつ事業形態が単純な事業に適した組織です。

事業部制組織

会社の中で、製品別あるいは顧客別に事業単位を区切った組織のことです。顧客や製品の特性、ビジネスの仕組みが異なる事業を複数運営するのに適した組織です。

マトリックス組織

機能別と事業部制をマトリックスにした組織です。

 組織構造のメリット・デメリット

メリット デメリット
機能別組織 役割分担を明確にできる

部門間での機能重複を防げる

従業員が個々の専門性を高められる

意思決定権を組織上位者に集中できる

全社利益よりも部門利益を追求してしまう

ゼネラルマネージャーが育ちにくい

組織間の連携が悪くなる

事業部制組織 1つの事業部で業務プロセスを完結できる

事業部に権限を分権でき、意思決定が迅速にできる

ゼネラルマネージャーを育成しやすい

全社的なベクトルあわせが難しい

経営資源の取り合いや情報の伝達漏れなど事業部間で軋轢を生じやすい

セクショナリズム、部分最適化が起こりやすい

マトリックス組織 機能別組織の特徴である専門性と事業部制組織の特徴である権限の分権を両立できる 意思決定のメカニズムが不明瞭になる

内部調整が多くなり、業務プロセスが複雑になる。その結果顧客に目を向けられなくなる。

近年の組織のトレンドと問題

20世紀から現在に至るまで、よくある組織形態のひとつだったのが機能別組織でした。これは、社長直下に、人事、財務、法務、R&D、マーケティング、製造、購買などの各機能を配置するという形態です。この形態の特徴は、各機能の専門性に特化して日々のビジネスを運営できるメリットがある一方で、各部門が部門最適を追求し、部門をまたぐ複雑な意思決定が全てトップにあげられる形になるので、ときにビジネス運営のスピード感を欠く組織体制になります。

大企業で近年よくある組織形態

大きな会社では、社長直下に製品別で事業部のような形で一旦組織を分けて、その下に機能組織を配置するというパターンもあります。これは実質的に事業部長が権限をもつ形になるのですが、その下部組織ではやはり機能別組織の弊害が起こります。

こうした弊害を防ぐためにマトリックス組織のような形態が生まれてきました。たとえば、機能軸の組織に事業軸の横軸が入ったり、地域軸の組織にやはり事業および機能軸の横軸が入ったりする組織です。この組織はプロジェクトのような特定目的で威力を発揮するケースがありますが、縦軸・横軸の権限が不明確、どちらの言うことを聞いて仕事をすればよいのかわからないなどといった弊害が生まれてきます。

特にある仕事が縦軸・横軸双方の評価に相反する影響を与える場合にそのマネジメントはさらに混迷を極めます。たとえば、地域軸ではAという商品開発を優先したいのに、事業軸ではBという商品開発を優先したいという思惑がある場合に、マトリックス組織の交差しているところにいる人では優先順位が決められず、地域軸と事業軸のTOPが話し合うという形になりますが、これもときにスピード感を損なう結果となります。

どのような組織に問題が起きやすいか

組織形態には正解はなく、どの形態にもメリットとデメリットがありますが、ひとつ言えそうなことは階層の深い組織形態はさまざまな問題をはらむ可能性があるということです。たとえば、社長⇒事業部長⇒部長⇒課長⇒係長⇒担当という組織があるとすると、現場をよく知る課長、係長から社長までの間に3~4階層できることになります。これだと現場の状態が社長に伝わるまでに、情報が途中階層で取捨選択されてしまいますし、逆に社長からのメッセージも末端まで伝わる頃には減衰されてしまいます。特に中間にいる人たちが、上司や部下に都合のよいことだけ報告するということが起きると、組織全体として正しい情報に基づいて意思決定をするのが困難になってきます。

完璧な組織は存在しない

機能別組織、事業部制組織のメリット・デメリットを見ればわかるように、完璧な組織というものは存在しません。それぞれにいいところ、悪いところがあるからです。

では、組織は何を基準選ぶのか?

それは、経営学者のチャンドラーが「組織は戦略に従う」と言ったとおりで、戦略を実行する上で最も最適となることを基準として選ぶ必要があります。そして、どんな組織にも必ずデメリットはあります。そのデメリットを組織構造を変えることにより、解消しようとしても必ず別のデメリットを生じてしまうので、人事システムで補うことなどを考える必要があります。