マーケティング・プロセスにおいては、セグメンテーションができて、その中でどこをターゲットにするかが決まったら、次にやることはその中でどのように製品やサービスを魅力的に見せるかということです。
そこで大事になってくるのがポジショニングです。
この記事では、マーケティング戦略における重要項目の1つであるポジショニングについて解説していきます。
ポジショニングとは
ポジショニングとは、標的の市場において、自社商品と競合商品を差別化して、優位な地位を築くための手法を意味します。
ポジショニングには、Mustの要素(必ず満たすべき要件)とBetterの要素(あれば顧客が喜ぶ要件)があります。
ポジショニングマップとは
ポジショニングマップとは、独立する2軸のマトリックスの中で、会社や商品がどこに位置づけられるかを示すものです。
ポジショニングの検討においては、このポジショニングマップを描き、自社商品と競合商品の位置付けを明確にしていきます。
ポジショニングマップの事例
ポジショニングマップの例として、以下のような車の車種ごとのポジショニング分析があります。
このとき、売り手発想の軸ではなく、顧客が喜ぶことを軸にしてマップを作ることが重要です。
ポジショニングマップ作成時の留意点
ポジショニングマップを作る場合は、以下の2つを留意する必要があります。
- 2軸の要素を独立させる
- 重要度の高いものにする
たとえば、2つの軸を機能と価格とした場合、たいていの場合、機能と価格は比例するため有効なポジショニングマップとはなりません(そもそも2軸をとる意味がありません)。そのため、2つの軸は独立性の高い要素を入れることが重要です。
さらに、独立性があっても、重要でない軸でマップを作ると、競合との差別化ができても大きな差別化要因とならなくなります。
ポジショニングを考える際の重要な3つのポイント
ポジショニング分析を考える際には、以下3つのポイントを押さえましょう。
ポイント1:Betterの部分で強烈なインパクトを出す
ポジショニングにおいては、製品が持つMustの機能ではなく、Betterの部分でいかに強烈なインパクトのポジションにできるかが重要になります。ただし、Betterの要件というのは、日々刻々と変化するので注意が必要です。
たとえば、カーナビはあれば便利なBetterな要件でしたが、最近はMustな要件に変わりつつあります。
あるいは、一昔前にO157が流行ったころは抗菌というのは、重要度の高いbetterな要件でしたが、今どき抗菌というのはあまり消費者にとって大きな差別化要因にはならなくなっています。
ポイント2:競合のとりにくいポジショニングをとる
ポジショニングマップで、隙間の空いているところに自社(あるいは自社の商品)を位置づけるというのは重要ですが、競合が容易に追随できるポジションだとあまり旨みがありません。
できれば、競合がとりにくいポジションを取ることで、自社の優位性を確立していきたいところです。
たとえば、ホンダは、精悍でマニアな男性向けというイメージだったアメリカのバイク市場に、若い人が手軽に扱える小型バイクという位置づけの商品を出して大ヒットさせました。
これは、アメリカ市場の既存メーカーには取りにくいポジショニングだったので、容易に追随することができませんでした。
ポイント3:将来にわたって優位性を構築できるポジショニングをとる
ポジショニングマップにとる2軸が、時代の移り変わりや世間の関心とともに変わっていくものだと、一時的な差別化は図れても、将来にわたって優位性を築くことは難しくなります。
そのため、出来る限り長い期間にわたって優位性を築けるようなポジショニングで戦うことが重要となります。
とはいっても、上のBetterをアピールのところでも述べたように、製品やサービスに求められる要件が大きく変わっていくことは十分に考えられます。
その場合は、いつまでも同じポジショニングマップ上で戦うのではなく、その時々に応じたポジショニングマップを構築することも重要なポイントです。
ポジションニングで重要となるUSP
USPとは、Unique Selling Propositionの略で、直訳すると独自の売り提案という意味になります。つまり、その商品やサービスの独自の売りということになります。アメリカの広告コピーライターだったロッサー・リーブス氏によって考案されました。
リーブス氏はUSPを以下のように定義しています。
- 顧客が手にする利益に対する提案であること
- 提案が競合にはない独自のものであること
- 提案が強力で大衆を動かすものであること
一番目の顧客が手にする利益というのは重要なポイントで、これは単に製品やサービスの特徴であってはいけないのです。このあたりはFABEフレームワークの解説でも触れている点んです。
USPはポジショニングマップから考える
このUSPを考える際に重要なのが、上記のポジショニングマップです。
USPの定義である顧客の利益提案、競合にはない、提案が大衆を動かすというポイントを満たすためには、ポジショニングマップ上でユニークなところに位置する必要があるわけです。
以下にUSPの例をあげます。
セブンイレブン | 開いててよかった!セブンイレブンいい気分! |
QBハウス | ヘアカット1000円 所要時間10分 |
ダイソンの掃除機 | 吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機 |
このように秀逸なUSPは、その短い文言の中に競合にはない顧客にとっての便益が示されているのです。
戦略策定におけるポジショニング分析
ここまでは、マーケティングにおけるポジショニング分析方法を解説してきましたが、戦略立案時にもポジショニング分析は活用できます。
その場合は、製品・サービスというよりは会社レベルでのポジショニングマップを作って分析をしていきます。詳細は以下のページをご覧ください。
戦略ポジショニングとは、その業界におけるそれぞれの企業の立ち位置のことです。通常、各プレーヤーは何らかの領域の軸足を置いていて、その強弱を相対的に示すのが戦略ポジショニングになります。
企業分析や戦略立案において、戦略ポジショニング分析は非常に重要な要素となります。
代表的なポジショニングとして、既存の戦略フレームワーク3つと、最後にマトリックス分析を解説していきます。
ポーターの類型:コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略
価値基準による類型:製品リーダーシップ、卓越したオペレーション、顧客との親密さ
デルタモデル:システムロックイン、トータルカスタマーソリューション、ベストプロダクト
2軸のマトリックスから考える戦略ポジション
戦略ポジショニングの切り口は他にも多数あります。代表的なのが2軸のマトリックス(ポジショニングマップ)を作って分析する方法です。
こちらは先ほどもあげた、車の例です。
また、定量的な軸を使ったポジショニングマップとして最もよく使われるのが、売上高と利益率をマッピングしたものです。このポジショニングマップの中で、ポーターの3つの基本戦略がカバーする範囲を大まかに示すと、下図のようになります。
売上高と利益率によるポジショニングマップの例
戦略ポジショニング分析で得られる示唆
戦略ポジションニング分析から、以下2つの場合についての示唆を解説します。
- 空白領域がある
- 自社とポジションがかぶる競合がいる
空白領域がある
空白領域が存在した場合は、2つの可能性があります。
- その領域に顧客がいない
- その領域に顧客がいるが、収益性が厳しい、技術的に難しいなどの理由で誰も手をつけていない
もし、ここで収益性を確保できる、または技術的ハードルをクリアできる方策が見つかると、非常にユニークな戦略ポジションを確立でき、競合との差別化を図ることができます。
自社とポジションがかぶる競合がいる
自社と同じポジションの競合がいる場合、大きな脅威となる可能性があります。なぜなら、その領域で競合と十分に差別化できていない可能性があるからです。特に競合の方が何らかの優位性を持っている場合は脅威の度合いは高まります。
この場合は、被っている領域の中で、さらに細かくポジションニング分析をして、競合に対して差別化できたユニークな立ち位置にできないかを検討していきます。
ただし、あまり細かくしすぎると、顧客が認知不能な差別化レベルになってしまうので、注意が必要です。
また、現状はかぶる競合がいなくても、将来的に競合が自社の領域に入り込んでくる可能性は常に考えておく必要があります。
まとめ
ポジショニング分析は、自社を顧客に対してユニークに見せる上で、大変重要な示唆を与えてくれます。自社製品をどのような軸で、どのように違って見せるのか、さまざまな軸をあててみて、考えていきましょう。
なお、このポジショニング分析は、自分自身をユニークに見せるためにも使えます。たとえば、これから就職や転職をしようとしているときに、自分が相対的にユニークに見えるということは、価値(=給与)を高めるためのひとつのポイントになってきます。
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