マーケティング・プロセスの上流プロセスであるターゲッティングとポジショニングまでが決まったら、具体的な「製品戦略」を考えていく必要があります。
この記事では、その「製品戦略」について解説します。
製品特性
製品の戦略を考える上で、重要なのは製品特性を知ることです。対象とする製品にどんな特徴があり、どれだけ種類があり、どの程度の価格帯のものがあり、誰が買うのかによって製品戦略の立て方はガラリと変わってきます。
ここでは、製品特性を考えるうえでの切り口の例をいくつか紹介します。
■製品特性の例
・種類と量
・PLC上のポジション
・購入時の購買行動
・購買決定プロセス
・購買決定者
・商品知識の有無
(知識のない消費者が多い製品ほど、販売店やメーカーのプッシュによる影響が大きい)
・周辺知識の要・不要
(必要なものほど嗜好品度や専門度が高くマニア向けの傾向になる)
・購入前に試せるかどうか
(試せないものほどブランド力の影響が大きい。また、販売店やメーカーのプッシュによる影響も大きくなる。)
・購入頻度
・生活必需品or娯楽品
・スイッチングコスト
(=現在利用している製品やサービスから乗りかえる際のコスト。この場合のコストとは、心理的なコスト、金銭的なコスト、新しい製品に慣れるまでの時間的なコストなどさまざま。大きいものほどシェアが動きにくい。)
こうした製品特性からKBF(Key buying factor 顧客が商品の購買を決定する要素)を導くことが重要になります。
同じ物でも、時代の移り変わりによって特性が変わってくる場合があります。たとえば、ラジオなどは、生活における情報源として必需品という位置付けのものでしたが、今ではごく一部の人の娯楽品という位置付けに変わってきています。
製品の階層構造
製品は、その特性を3つの階層から構成されていると考えられています。3つの階層とは以下のとおりです。
■コア(核)
顧客の本質的ニーズを満たす機能そのもののことです。
(例)本で言えば、内容そのもの。ドリンクで言えば、中身そのもの。
■形態
コアに付随する製品特性や品質、パッケージ、ブランド、ネーミングのことです。
(例)本で言えば、カバー、著者。ドリンクで言えば、入れ物、商品名。
■付随機能
アフターサービスや保証などの付加機能のことです。
(例)ドリンクで言えば、点数シールや品質保証体制。
製品類型
製品には、物理的特性や使用目的により、いくつかのカテゴリーに分類することができます。
※物理的特性による分類
■耐久財
耐久財とは、使用期間の長い製品のことです。品質保証やアフターサービスの重要性の高いものです。そのため、販管費を賄えるように、粗利益率を高めにする必要があります。
■非耐久財
非耐久財とは、使用回数が少なく、使用期間の短い製品のことです。一見客だけでなく、リピーターを獲得することが重要になります。また、価格を低めに設定して量をさばくことが多くなります。
■サービス
サービスとは、無形の製品のことです。サービスの場合、生産の場=販売の場=消費の場になります。そのため、一度提供されたものは、修正・返品ができません。サービスは、形として見えにくいので、売り手への信頼感が重要となります。
※物理的特性による分類
■消費財
不特定多数のユーザーを対象とした、個人の消費を目的とした製品のことです。
■生産財
生産者や政府機関などの組織体向けの製品のことです。選定基準やコストパフォーマンスをシビアに見られる製品です。
ライフサイクル
製品のライフサイクルを表すフレームワークとして、プロダクト・ライフ・サイクルがあります。これは製品を導入期、成長期、成熟期、衰退期に分けて、それぞれの時期でマーケティング戦略課題が異なることを表したものです。
製品開発プロセス
製品開発のプロセスは大きく分けて4つあります。
■製品コンセプト開発
このステップは、まず製品のアイデア出しから始まります。ここではシーズ(自社の強みを利用)とニーズ(顧客の要望を重視)の両方から発想して、うまくバランスしていくことが重要です。
次に、アイデアを成功確率の高いものに絞り込み、絞り込んだアイデアに対し顧客にどのような利益を与えられるか考慮して、具体的なコンセプトに落とし込みます。
■戦略仮説検討
このステップでは、コンセプトに従って、ターゲット、ポジショニング、マーケティング目標を暫定的に決めて、その製品の売上、原価、利益のシナリオを策定します。
■製品化
このステップで、実際の設計・開発への落とし込みをして、テスト・マーケティングを実施し、最終的な製品ブランドやパッケージなどの仕様を決めて、生産体制を確定させます。
■市場導入
このステップで、製品を実際に市場に送り出します。市場導入期は、予期せぬ不具合が発生する場合があるので、市場での動向には十分注意が必要です。
同種の製品なら先発と後発どちらが有利か
一般的に流通チャネルの影響が大きい産業では、先に製品を投入した先行者が有利になる傾向があります。それは、関係構築が難しいとされる流通チャネルをいち早く抱き込むことができるからです。仮に、後発者が優れた商品を出したとしても、流通チャネルを握れていないとすぐに市場にしないわけです。
逆に、チャネルの影響力が小さい産業では、後発者の製品の方が有利になる傾向があります。それは、後発者が先行者の失敗例を見ながら優れた商品を投入でき、すぐに市場に浸透させやすいからです。その代表例としてインターネット産業が挙げられます。
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