このブログで主に取り上げているのは会社組織を主体としたコーポレートファイナンスに関する内容ですが、それとは別にプロジェクト単位を主体としたプロジェクトファイナンスというものがあります。
この記事では、ファイナンス分野における資金調達方法の1つであるプロジェクトファイナンスについて解説していきます。
プロジェクトファイナンスとは
プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトから得られるキャッシュフローを返済原資とし、プロジェクトが保有する資産を担保とした資金調達方法のことです。
コーポレートファイナンスとの違いは、コーポレートファイナンスが会社単位で価値を評価され、資金調達をするのに対して、プロジェクトファイナンスはプロジェクト単位で価値を評価され、資金調達をされるところです。
プロジェクトファイナンスは、多額な負債を必要とする大規模なプロジェクトで用いられます。資金提供側の金融機関は、巨額な資金需要に対応するため、何社かでシンジケートを組んで融資を実施します。
プロジェクトファイナンスの代表例としては、油田開発があります。開発する側の石油会社もコーポレートファイナンスでは、バランスシート上の負債額が大きくなりすぎるため、一部または全額をプロジェクトファイナンスに頼ります。
その他の事例としては、日本ではユニバーサル・スタジオ・ジャパンや、六本木ヒルズなどがプロジェクトファイナンスを活用された例として挙げられます。
プロジェクトファイナンスの仕組み
プロジェクトファイナンス(以下PF)の一般的な仕組みは下図のとおりです。
プロジェクトを運営するSPC(特定目的会社)を設立することで、個々の事業会社のリスクとプロジェクトのリスクを切り離します。発注者は、SPCに対してプロジェクトを発注し、SPCは各事業者と業務委託契約を、製品購入者と売買契約を締結します。出資は融資はSPCが受ける形になります。
プロジェクトファイナンスのメリット・デメリット
プロジェクト・ファイナンスのメリット・デメリットを関係者別に整理すると、次のようなものがあります。
■スポンサーにとって(○:メリット ×:デメリット)
○大規模資金調達が可能になる
○借入金をバランスシートに記載しなくてよいため、借入金比率を低く保てる
○プロジェクトからの返済が滞っても、原則として返済義務を負わずに済む
×アドバイザーフィーなど融資にかかるコストが高くなる
×融資団が、コーポレートファイナンスで調達するよりも高い金利を要求してくる
(プロジェクトのリスクをスポンサーが補填する義務がない分、金利が高い)
×関係者調整など資金調達に時間がかかる
■融資団(貸し手)にとって(○:メリット ×:デメリット)
○高い金利を期待できる
○PFに参加することで新たなビジネスチャンスが広がる
(特にPFは国際的なプロジェクトで多く活用される)
×リスクは大きい(スポンサーの原則として補填義務がない)
×融資団の調整の中で、自社の意思を取引に反映できる可能性が低くなる
プロジェクトのリスク
大規模プロジェクトにおいては、さまざまなリスクを勘案する必要があります。大きく分けると以下の3つリスクがあります。
■完工リスク
建設・開発が予定どおり進まないリスクです。このリスクには、原材料の供給が滞るリスク、建設業者が工事を予定どおり終了できないリスク、対象国の政治リスクなども含まれます。
■操業リスク
操業開始したものの、期待通りのオペレーションができないリスクです。
■販売リスク
操業は正常にできているものの、期待通りの販売量を得られないリスクです。テーマパークで言えば、予定どおりの集客が見込めないリスク、油田開発だと原油価格が見込み以下になってしまうリスクです。国際取引の場合、為替リスクも含まれます。
そうしたリスクを軽減するために、スポンサー、融資団ともにさまざまな補填契約や保険契約を締結します。
プロジェクトファイナンスが有効なケース
格付けが低いパートナーにとっては、自社で資金調達が難しく、プロジェクトファイナンスに頼らざるを得ません。特にプロジェクトに対する影響力(政治的な立場など)大きいパートナーが低い格付けの場合は、プロジェクトファイナンスの有効性が高まります。
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