ピラミッドストラクチャーとは、主張とその根拠を構造的に表したもので、別名として「ピラミッド構造」とも呼ばれます。
ピラミッドストラクチャーでは、ピラミッドの上位にある部分を「主張」と、下位にある部分を「根拠」として論理的につながるように配置していきます。
下の図はピラミッドストラクチャーの例です。
この記事では、ロジカルシンキングの基礎となるピラミッドストラクチャーの概要、作成方法、作る際の注意点などを解説していきます。
ピラミッドストラクチャーの目的は?メリットは?
ピラミッドストラクチャーを作る目的として、「説得力のある論理を構築する」「考えの抜けや漏れがないかを確認する」「プレゼンテーションや報告書の質を上げる」などが挙げられます。
ピラミッドストラクチャーを作る目的
- 説得力のある論理を構築する
- 考えの抜けや漏れがないかを確認する
- プレゼンテーションや報告書の質を上げる
ピラミッドストラクチャーは、論理構造を俯瞰的に検証できるので、より説得力のある主張をするのに大変適したフレームワークです。
実際にピラミッドストラクチャーを使えるようになると、以下のようなメリットがあります。
ピラミッドストラクチャーを使うメリット
- 相手を説得できる能力が身につく
- コミュニケーションがスムーズになる
- 論理的でわかりやすいプレゼン資料や報告書を作れる
- 相手の主張に対して適切に反論できるようになる
ピラミッドストラクチャーには、作成に手間と時間がかかるというデメリットはあるものの、上記のとおり多数のメリットがあることから多くのビジネスパーソンの間で使われています。
ピラミッドストラクチャーの作成ステップ
ピラミッドストラクチャーの作成ステップは、以下5つに分けられます。
ピラミッドストラクチャーの作成ステップ
- 論点に対する主張を決める
- 論理の枠組み(フレームワーク)を考える
- 情報をグルーピングする
- 情報から言えるメッセージを抽出する
- 抽出したメッセージで論理が成立しているか確認する
ステップごとに詳細を解説していきます。
作成ステップ1.論点に対する主張を決める
ピラミッドストラクチャーには必ず課題となる論点があります。
たとえば、売上を上げるために、広告宣伝費を増額すべきか?という議論をするなら、広告宣伝費の増額をすべきか?が論点になります。
次に、その論点に対するピラミッドストラクチャーの頂点となる答え(自分の主張)を決める必要があります。
先ほどの例だと、広告宣伝費を増額すべき、または増額すべきではない、のどちらかが主張に成りえます。
議論すべき課題に対して、主張が外れていると、その後の議論が成り立たなくなってしまいます。
たとえば、広告宣伝費を増額すべきか?という議論なのに、広告会社のA社使えないという結論では論点と主張がずれてしまっています。
したがって、論理構造していくには、何が課題(論点)か?をしっかり押さえ続けて、その課題に対してダイレクトに答える主張を用意する必要があります。
作成ステップ2.論理の枠組み(フレームワーク)を考える
結論が決まったら、結論を言うために、どんなことが言えればいいのか?というフレームワークを考えます。
フレームワークは、MECEであることを意識する必要がありますが、厳密にMECEでなくてもよい場合もあります。(MECEは以下ページをご参照ください)
フレームワークを決める際に注意すべきことは、「まとめやすい」という理由で選ばないことです。
大事なことは情報をまとめることではなく、結論を導くのに最も効果的なフレームワークを選ぶことだからです。
たとえば、「小売店の店主を納得させて、新製品の洗剤を置いてもらう」ということを考えるとき、課題に対する答えは「新製品の洗剤を置くべき」となります。
ここで、まとめやすいからと言って3Cのフレームワークで小売店の店主に説明をしても説得力がありません。
小売店の店主が聞きたいのは、そんな壮大な企業戦略ではないからです。
この場合は、小売店の店主の立場に立って、最も店主に響くフレームワーク、言い換えると小売店に対するメリットに重点を置いたフレームワークを考える必要があります。
たとえば、次のようなフレームワークです。
- 売上は増えるのか?
- 利益は増えるのか?
- 何もしなくても売れるのか?)
ピラミッドストラクチャーの頂点の主張と、次の階層の根拠だけで8割以上理解してもらえる論理構造にしなければ、相手に伝わりにくい主張になってしまいます。
そのためには、慣れないうちは、説得力のよい高いフレームワークを何度も何度も考え直す必要もあります。
作成ステップ3.情報をグルーピングする
フレームワークを決めたら、数ある情報をグルーピングする必要があります。
下の例は、事業に参入すべきか?という課題に対する結論を導くための情報です。事業へ参入なので、単純に既存のフレームワークである3Cでグルーピングしました。
【さまざまな情報】
|
これを3Cで分類 すると・・・ → |
【市場】
【競合】
【自社】
|
作成ステップ4.情報から言えるメッセージを抽出する
グルーピングしたら、情報から言えるメッセージを抽出する必要があります。
メッセージの抽出の際には、演繹法や帰納法を使っていきます。
このとき、結論を言うために価値ある解釈をしたメッセージを導き出すことが重要です。
注意すべき点は、個々の情報の要約にならないようにするということです。
個々の情報の要約をしただけでは、単なる「状況説明」に過ぎず、結論に向けた価値ある解釈とは言えません。
ここでは、次のようにメッセージを抽出しました。
【市場】 市場成長率が高い 市場の潜在的規模大きい 顧客はブランドよりも機能重視 |
So what? → |
市場は魅力的で、後発でも戦える |
【競合】 A社(シェア10%)、D社(シェア8%) まだ特色は出ていない |
So what? → |
有力な競合他社はまだいない |
【自社】 Y事業の技術者を活用できる 自社の販路を活用できる |
So what? → |
自社の強みを生かせる |
作成ステップ5.抽出したメッセージで論理が成立しているか確認する
メッセージが抽出できたら、今度は逆に情報がメッセージの根拠になっているかを確認します。
市場は魅力的で、後発でも戦える | Why so? → |
【市場】 市場成長率が高い 市場の潜在的規模大きい 顧客はブランドよりも機能重視 |
有力な競合他社はまだいない | Why so? → |
【競合】 A社(シェア10%)、D社(シェア8%) まだ特色は出ていない |
自社の強みを生かせる | Why so? → |
【自社】 Y事業の技術者を活用できる 自社の販路を活用できる |
最終的に、3Cのフレームワークでそれぞれ導いたメッセージから次のように結論づけました。
市場は魅力的で、後発でも戦える 有力な競合他社はまだいない 自社の強みを生かせる |
So what? → |
X事業に参入すべき |
ピラミッドストラクチャーの完成事例
ここまでのステップを踏まえた最終的なピラミッドストラクチャーの出来上がりイメージは、冒頭で紹介した事例である以下のようになります。
自社はX事業に参入すべきという主張に対して、その根拠を構造的に整理できていることがわかります。
このように一旦完成したあとに再度So What?とWhy So?を繰り返すと、論理構造を確かなものにでき、より説得力のあるピラミッドストラクチャーが作れるようになります。
ピラミッドストラクチャーを作るときの注意点・確認事項
ピラミッドストラクチャーを作成するときに注意・確認すべき点が5つあります。
ピラミッドストラクチャーを作成するときの注意点
- 課題に対してダイレクトに答える枠組みになっているか?
- メッセージの抽出は、課題の結論に向けた意味合いになっているか?
- 結論とその下の階層(根拠)だけで、言いたいことがほとんど伝わるか?
- So what? や Why so? が自然につながる内容になっているか?
- 反論者の立場でも考えているか?
それぞれ詳細を解説していきます。
課題に対してダイレクトに答える枠組みになっているか?
先ほどの小売店の例にも出しましたが、情報を整理しやすい枠組みにするのではなく、課題にダイレクトに答えられる枠組みにする必要があります。
特に、戦略論に出てくるフレームワークを何も考えずにそのまま使ってしまいがちですが、それではただの情報整理に終わってしまう場合があるので注意が必要です。
自分の主張を聞いてもらう聞き手が誰で、何を伝えたいのかという観点で枠組みを作り、場合によっては、戦略論に出てくる3Cや4Pのようなフレームワークを外して考える必要があります。
重要なのは、聞き手の聞きたいことにダイレクトに答えられる枠組みかどうかです。
メッセージの抽出は、課題の結論に向けた意味合いになっているか?
情報から抽出するメッセージは、結論をサポートする根拠になり得るものにする必要があります。
情報を整理しただけとか、抽象化しただけとか、列挙しただけでは意味のあるメッセージとは言えません。
ただし、メッセージの抽出は言い過ぎてしまうと、逆にWhy So?という質問に答えられなくなるので、適度なレベルで抽出する必要があります。
最初からうまくはできないので、何度も練習して身につける必要があります。
結論とその下の階層(根拠)だけで、言いたいことがほとんど伝わるか?
主張と最初の根拠が書かれる2段目までで言いたいことの80%を伝えることが大事です。
逆に2段目以降の階層まで言及しないと伝わらないような主張だと、メッセージの抽出が甘いか、論理が飛躍しているということになります。
So what? や Why so? が自然につながる内容になっているか?
ピラミッドストラクチャーの論理構成として、上位に向かってSo What?、下位に向かってWhy So?という形になっているかが重要です。
そこに論理の飛躍があると、論理構成としては極めて弱いものになってしまうからです。
演繹法や帰納法に基づいた論理構成のチェックが必要になります。
反論者の立場でも考えているか?
実際のビジネスの場面では意見が分かれるような場合も多いです。
そうした事態が想定される場合は、あらかじめ反論者なら、どこに突っ込みを入れるかを考える必要があります。
そのために一番よい方法は、反論者の立場でも論理構造を考えることです。
つまり、自分が思うのと逆の考えでピラミッドストラクチャーを構成してしまうのです。
たとえば、先ほどのX事業への参入について、反論者なら以下のように考えそうです。
- 後発で戦いには厳しい市場である
- 有力な競合は今はいないが、今後現れる可能性は高い
- 自社の弱みが強みを殺してしまう
こうした反論を予め出しておいて、この反論に備えておくことで、自分の論理構造、主張に対する説得力をより強固にすることができます。
ピラミッドストラクチャーを実務で使う場合のポイント
今回のピラミッドストラクチャーの作成ステップでは、多くの情報をグルーピングして主張と根拠を構成してきました。
しかし、実務においては、まず仮説(仮の結論)をピラミッドストラクチャーの頂点において、その結論を言うためには、何が言えればよいかというフレームワークを先に考えてから情報を集めるケースが多いです。
なぜなら、そちらの方が闇雲に情報を集めるよりも効率的に情報を集められるからです。
こうした思考様式のことを仮説思考と呼びます。
仮説思考の詳細は以下の記事に記載しています。
まとめ
ピラミッドストラクチャーは、自分の主張と根拠をロジカルに整理するのに大変役に立つフレームワークです。
とはいえ、使いこなすには少し訓練が必要です。
日頃から「お小遣いを増やすべき」、「英語を勉強すべき」といった身近な課題でピラミッドストラクチャーを作る訓練をしておくと、実務で大いに役立たせられるでしょう。
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