ロジックツリーを使うと、さまざまなものを分解して表現できるようになります。
ロジックツリーの解説記事はこちら
この記事では、ロジックツリー使った経営指標の分解例として、「ROAツリー」と「売上高の分解」を紹介していきます。
そこから、ROA、売上高を上げるためには、それぞれ何が必要になるのか言及していきます。
ROAツリー(ROAの分解)
ROAツリーとは、総資本利益率(ROA)をツリー上に分解するもので、ロジックツリーの例としてよく用いられます。
ROAの解説はこちら
ROAを向上させたい場合、このROAツリーを用いると、向上させるべきポイントを絞ることができます。
※ROAツリーの一例
(各要素はさらに分解することができます)
たとえば、ROAツリーを使って、ROA上昇の鍵を売上アップと在庫調整と結論づけることができます。
ROAの上げ方
このツリーを見るとわかるように、ROAを上げるためには、以下の施策が有効であることがわかります。
- 売上原価率を下げる
- 販管費率を下げる
- マーケットシェアを上げる
- 市場規模を拡大する
- 価格を上げる
- 固定資産回転率を上げる
- 棚卸資産の回転率を上げる
- 売上債権の回転率を上げる
売上高の分解
ここでは、MECEに分解する一例として、売上高いろいろな観点から分析してみました。
A:利益構造で分解
売上高を利益構造で分解すると、付加価値を生み出しているのはどこかということを把握することができます。
売上高 = 売上総利益 + 売上原価
売上高 = 営業利益 + 販管費 + 売上原価
売上高 = 経常利益 + 営業外収益 + 販管費 + 売上原価
B:前年度売上で分解
前年度との比較をすることで、成長性を見ることができます。
売上高 = 前年度売上高 + 売上高増減
売上高 = 前年度売上高 × 売上高成長率
C:顧客で分解
顧客で分解することにより、どの顧客層の売上に強みがあるのかがわかります。
売上高 = 10代の顧客の売上高 + 20代の顧客の売上高 + ・・・
売上高 = 国内売上高 + 国外売上高
売上高 = 東日本売上高 + 西日本売上高
D:資産、従業員当たりの売上で分解
資産や従業員当たりの売上高で分解することで、生産性や効率性を見ることができます。
売上高 = 店舗数 × 店舗数当たりの売上高
売上高 = 従業員数 × 従業員1人あたりの売上高
売上高 = 売上債権 × 売上債権回転率
売上高 = 総資産 × 総資産回転率
E:事業や商品で分解
事業や商品で分解することにより、どの事業や商品に強みがあるのかがわかります。
売上高 = 商品A売上高 + 商品B売上高 + ・・・
売上高 = A事業部売上高 + B事業部売上高 + ・・・
F:外部環境から分解
外部環境から分解することで、自社の競争環境を分析することができます。
売上高 = 業界売上高 × 自社シェア
= 業界売上高 × 商談カバー率 × 勝率
= 業界売上高 × 特約店カバー率 × インストアシェア
= 業界売上高 × 市場カバー率 × 認知率
× トライアル率 ×リピート率
G:顧客の行動から分解
小売店などでよく使われる分解方法です。
売上高 = 購買顧客数 × 購買単価
= [ターゲット人口 × 認知率 × 店頭接触率 × 購入率]× 購入単価
× [年間購入数 × 1回当たり購入点数 × 1点あたり商品単価]
売上高の分解からわかる売上を上げる方法
売上高の分解方法にはさまざまなものがありましたが、ここから売上高を上げるを方法がわかってきます。
一番わかりやすいF、Gの例を取り上げてみます。
F:外部環境からの分解で売上を上げる方法を考える
先ほどの計算式から外部環境を前提から分解した売上高は以下のようになります。
売上高 =
業界売上高 × 市場カバー率 × 認知率 × トライアル率 ×リピート率
ここから業界の売上高(=市場規模)を変えられないとすると、残りの数字を上げるしかありません。
たとえば、以下のような前提を置いて考えてみます。
業界売上高 | 1,000,000 |
× 市場カバー率 | 70% |
× 認知率 | 80% |
× トライアル率 | 50% |
× リピート率 | 50% |
売上高 | 140,000 |
このようにすると、どの指標を改善すれば売上高が伸ばせるのかが明確になってきます。たとえば、市場カバー率と認知率はそこそこ高く、ここにお金を投下するのが得策ではないとするなら、トライアル率とリピート率をそれぞれ50%から60%に高めるのがよいでしょう。
そのときの売上高は以下のようになります。
業界売上高 | 1,000,000 |
× 市場カバー率 | 70% |
× 認知率 | 80% |
× トライアル率 | 60% |
× リピート率 | 60% |
売上高 | 201,600 |
トライアル率とリピート率を高めることで売上高は44%アップとなります。そうすると、売上を上げる打ち手として、トライアル率向上のために試供品を提供したり、リピート率向上のために購入した顧客に再度の購入を促すマーケティング策などが考えられます。
G:顧客の行動から分解
顧客の行動から見た売上高分解としては、店舗をイメージして以下の式を例に考えます。
売上高 = ターゲット人口 × 認知率 × 店頭接触率 × 購入率
ターゲット人口 | 100,000 |
認知率 | 80% |
店頭接触率 | 80% |
購入率 | 50% |
購入単価(円) | 1,000 |
売上高(円) | 32,000,000 |
ここでもさまざまな考え方ができます。
たとえば、認知率、店頭接触率、購入率、購入単価が業界標準だという前提なら、ターゲット人口を増やすために多店舗展開するという策があります。
もし、同じ店舗面積の中で、お客さんにより高いものを進められる余地があるのであれば、購入単価を1,000円から1,200円に上げるという手もあるでしょう。その際は売上高が20%アップします。
まとめ
ロジックツリーは大きな塊を小さく分解していくことで、具体的なアクションにしやすくするのが目的のひとつでしたが、まさにこのように活用することで改善の方向性が見えてきます。
ROAと売上高の分解はとてもよく使われる分解例なので、ぜひ習得して日々のビジネスに役立てるようにしていきましょう。
問題解決の手法を知りたい方は