ロジカルシンキング

シックスシグマとは【5つの分析プロセスを解説】

シックスシグマとは、企業活動で発生するばらつきをおさえて、経営品質の改善を図るための経営改善手法のことです。

シックスシグマは、日本のTQM(Total Quality Management)を参考にしたモトローラにより生み出された手法です。今日では多くの会社で導入が進められており、JPモルガン、アメリカン・エクスプレス、GEなどがあります。特にGEはジャック・ウェルチを主体に全社に導入され、その導入の歴史は世界的に知られております。

この記事では、シックスシグマについて解説していきます。

シックスシグマの由来

σ(シグマ)とは統計学上のバラツキを表す標準偏差のことを示します。統計上、シックスシグマを実現するとは、100万回の試行のうち、エラーが3回に抑えられる設計を実現するという意味になります。下表はシグマがそれぞれ、4、5、6の場合におけるエラー件数と正確さの割合を示しています。

バラツキ 100万回あたりのエラー
(正確さの割合)
6,210件
(99.4%)
233件
(99.97%)
3件
(99.9997%)

シックスシグマの原則

シックスシグマの原則は全て定量的に考えるということです。したがって、計測するものを間違えると、その結論も間違ってしまうことを意味します。たとえば、スループット利益の計測は生産スピードを向上させますが、それはときにコストを犠牲にします。品質の計測は品質向上を期待できますが、もしかしたらカスタマーサービスを犠牲にするかもしれません。

つまり、シックスシグマにおける計測というのは、ビジネスシステム全体の計測であるべきで、その因果関係を明確にしておく必要があるのです。そして、定量化された情報は、可視化される、つまり見やすいチャートやグラフによって表現されなければなりません。

5つの分析プロセスDMAIC

シックスシグマのプロセスは一般的にDMAICとして表されます。それぞれの意味は以下の通りです。

D(定義):課題を設定するフェーズです
M(測定):データ収集と現状認識をするフェーズです
A(分析):原因分析をするフェーズです
I(改善):何をどう管理し改善するべきなのかを導くフェーズです
C(管理):改善計画どおりの管理をするフェーズです

それぞれのフェーズで具体的に何をするかは以下のとおりです。

課題定義(D) スタート地点はVOC

シックスシグマでは、改善のスタート地点をVOC(Voice of Costomer 顧客の声)とすることが一般的です。顧客が満足していること、不満足していることを明らかにして、経営インパクトに大きな影響を与える不満足を抽出し、そこから課題の定義をします。たとえば、納期短縮、サービス向上などのVOCがここから導き出されます。

測定(M) プロセスの明確化

測定フェーズでは、まず課題が発生するまでのプロセスを明確にします。たとえば、飲食店でのサービス提供までのメカニズムの場合、案内、受注、調理、提供、飲食中のサービス、飲食後のフォロー、会計などに分けられます。

ここでは、いきなり解決策にいかずに、まず現状認識を深めるということが重要になります。

分析(A) COPQの算出とメカニズムの分析

プロセスが明らかになったら、これらの中で失敗が起こることによって発生する損失COPQ(Cost of Poor Quality)を明確にします。そしてCOPQを額の多い順に並べます。額の大きい項目はプロセスや原因をさらに深堀していきます。

さらにその原因が発生するメカニズムを深堀することで、問題が起こっている原因を特定していきます。メカニズムを明らかにするには、ロジックツリー、コーザリティ分析QC7つ道具など使うとよいでしょう。

そして、解決策のオプションをいくつか出して、それらについての効果を検証していきます。また、改善策が複数の組み合わせになっている場合は、実験計画法(DOS)などを用います。

改善(I) 効果検証

分析フェーズが終わると、分析結果から得られた解決策を実行に移すフェーズとなります。実際に実行に移して検証どおりの成果が得られているかを測定します。

管理(C) 継続維持

シックスシグマの活動は、改善ができれば終わりではなく、改善プロセスから得られた知見を組織のナレッジとして継続させることが重要です。たとえば、事業環境が変わると、解決すべき課題も変わってきますが、組織にこの改善プロセスが根付いていれば、再び適切な解決策を見出して経営改善を図られるようになります。

これらのプロセスは全て定量化されるので、結果管理もすべて定量的に計測することになります。

シックスシグマの資格

シックスシグマの資格には、いくつかありますが、プロジェクトはブラック・ベルト(BB)を中心に推進されます。ブラック・ベルトは柔道の黒帯が語源になっていて、フルタイムでプロジェクトを推進する人です。ブラック・ベルト(BB)はグリーン・ベルト(GB)(DMAICのプロセスを使って課題分析する人)をサポートしながらプロジェクトを進めます。

なお、ブラックベルトとして最低2年程度の経験を積むことで、マスター・ブラック・ベルト(MBB)の称号手にすることができます。

シックスシグマの注意点

シックスシグマは経営課題を解決するための手法です。したがって、ある一定の部門内の課題解決に終始するのではなく、複数部門をまたがって会社の重要経営課題に取り組む必要があります。もし、ある部門内だけでシックスシグマを運用すると、出てくる解決策が部門最適の解決策になってしまうこともあって、実際運用してみると、他部門の課題にぶつかって思ったように問題解決が進まない場合があるからです

したがって、運用にあたっては、経営陣の問題解決に対する強い思いが必要ですし、プロジェクトにアサインするメンバーも各部門の課題を適切に抽出でき、かつ課題解決に向けて実際にプロジェクトの成果を運用に移せる人である必要があります。