経営戦略論とは何か、著名な戦略フレームワークについて概要をまとめました。
個別のフレームワークについて、詳細を知りたい場合は、各項目にある詳細記事をご覧ください。
経営戦略論とは何か
経営戦略で用いる戦略は、経営コンサルタント会社のマッキンゼーにより次のように定義されています。
「企業・事業目的を競争優位性により持続的に達成できる構造を構築する施策群」
つまり、経営戦略論とは、事業目的を持続的に達成するための施策群を支える学問だということになります。
経営戦略論:フレームワーク25選
経営戦略に関しては、著名な学者やビジネスパーソンが、さまざまな切り口でフレームワークを提唱してきました。
ここでは、そんなフレームワークの中から24個のフレームワークを紹介します。
事業の方向性を決めるフレームワーク
事業が進むべきの大まかな方向性を議論するためのフレームワークです。
アンゾフのマトリックス
アンゾフのマトリックスとは、(既存市場、新規市場)×(既存製品、新規製品)という4象限のマトリックスで経営戦略の方向性論じるフレームワークです。
極めてシンプルですが、シンプルであるがゆえに方向性を議論する最初に切り口として現在でも有用なフレームワークになっています。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析
PPM分析とは、自社の事業を相対シェアと市場成長率を軸に配置して、自社の経営資源をどこに重点的に投下をするか議論するためのフレームワークです。
事業を花形事業、金のなる木、問題児、負け犬の4つに分類され、分類ごとに今後の方向性に対するセオリーが存在します。
独立した2つの軸の上に、自社の事業を配置するという考え方は、PPM以外でも広く使われています。
代表例が、GEのビジネススクリーンや、バリューポートフォリオです。
グローバル戦略を決めるフレームワーク
グローバル戦略を決めるフレームワークとして、中央集権志向(本社に権限を集中させる考え方)が強いか弱いか、ローカライズ志向(各国に権限を持たせる考え方)が強いか弱いかで分ける方法があります。
4象限のそれぞれの戦略は、インターナショナル戦略、ローカリゼーション戦略、グローバルスタンダード戦略、トランスナショナル戦略と定義。
企業の発展段階や事業環境に応じて、適切なものを選んでいく形になります。
戦略のパターンを決めるフレームワーク
戦略のパターン、すなわちどのような戦い方をするかを議論するためのフレームワークです。
ポーターの事業戦略類型
ポーターの事業戦略類型とは、戦略パターンを差別化戦略、コストリーダーシップ戦略、集中戦略の3つに分類したもので、ポーターは、いずれの企業もこの3つの戦略のどれかをとる必要があるとしています。
製造業が全盛の時代に作られたフレームワークのため、近年のインターネット時代には向かないとされる部分もありますが、戦略パターンの基礎として習得しておく価値のあるフレームワークです。
価値基準による戦略類型
ポーターの事業戦略類型では、差別化、コストリーダーシップ、集中という3つの戦略を提唱していますが、実際には差別化とコストの両面で優れた企業もあります。
そうしたポーターの類型では十分に説明しきれないポジショニングの差異を説明したのが、価値基準による戦略類型です。
価値基準による戦略類型では、製品リーダーシップ、卓越したオペレーション、顧客との親密さという3つの軸で戦略パターンを提唱しています。
業界地位による戦略
業界地位による戦略とは、戦略を競争している業界における地位(一般的にはシェア)によって分類する方法です。
リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーという4つの類型を元に、それぞれの戦略セオリーを説いています。
チャレンジャーの逆転戦略
チャレンジャーの逆転戦略とは、チャレンジャーがリーダー企業を逆転するための戦略論です。
リーダー企業は豊富な資産を持っていますが、企業資産の負債化、市場資産の負債化、事業の共食い化、論理の自縛化の4つの観点で、その豊富な資産をかえってリーダー企業の弱みにしてしまおうというものです。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略とは、血で血を洗うレッドオーシャンでの競争を脱して、まだ誰も開拓していない市場であるブルーオーシャンで事業を行って、圧倒的な優位性と収益性を築く戦略です。
2005年にブルーオーシャン戦略が発表された当時、大いに話題となりましたが、今では戦略論で当たり前のように出てくる概念として広く知られています。
以下の記事で、ブルーオーシャン戦略を立案するためのアクションマトリックスと戦略キャンバスについて解説しています。
業界構造分析のフレームワーク
業界構造がどのようになっているかを分析するためのフレームワークです。
アドバンテージ・マトリックス
アドバンテージ・マトリックスとは、業界の競争要因の数と優位性構築の可能性を軸にして、4つの事業類型、分散型事業、特化型事業、手づまり型事業、規模型事業に分ける考え方です。
アドバンテージ・マトリックスでは、4つの事業類型において、それぞれの戦い方のセオリーを提唱しています。
5つの力(ファイブフォース)分析
5つの力分析とは、業界に働く5つの力を分析することによって、その業界の収益性、言い換えると魅力度を測られるフレームワークです。
新規参入の驚異、買い手の交渉力、売り手の交渉力、代替品の驚異、業界内の競争状態の5つです。
業界構造を分析するためのとっかかりとしてよく使われているフレームワークです。
内部資源分析のフレームワーク
自社の強みとなる内部資源を分析するためのフレームワークです。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、ビジネスの機能を分割して、それぞれの機能がビジネス全体の付加価値創出にどのように寄与しているのかを分析するためのフレームワークです。
バリューチェーン分析をすることで、企業が価値を創出するために重要な機能を特定したり、競争相手との中で強化すべき機能を特定したりすることができます。
VRIO分析
VRIO分析とは、以下の4つの問いから成る企業が持つ内部資源の価値を測るためのフレームワークです。
- V:経済価値(Value)に関する問い
- R:希少性(Rarity)に関する問い
- I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い
- O:組織(Organization)に関する問い
VRIO分析を使うことで、企業が持っている資源が継続的に価値のあるものなのか、一時的な価値に過ぎないものなのかがわかるようになります。
マッキンゼーの7S
マッキンゼーの7Sとは、企業の戦略、組織、人事システム、価値観、スタイル、人材、スキルという7つの要素が、互いに整合をとれているかを分析するためのフレームワークです。
企業は、この7つのSの整合が取れていないと、その力を十分に発揮することができませんし、環境変化に応じて7つのSを整合をとりながら変化させていく必要があります。
VSPROモデル
VSPROモデルとは、会社のマネジメントシステムを包括的に考えるためのフレームワークで、ビジョン、戦略、プロセス、リソース、組織の頭文字をとっています。
7Sの構成要素をより大きく5つにまとめているという点から、より汎用性の高いフレームワークとも言えます。
サービス・プロフィット・チェーン
サービス・プロフィット・チェーンとは、サービス業における従業員満足と顧客満足の関連性を示したフレームワークです。
サービス業においては、顧客満足を実現するためには、まず従業員満足を実現しなければならないという基本思想の元で作られました。
事業戦略立案のためのフレームワーク
事業戦略を具体的に立案していく際に使うフレームワークです。
事業の経済性分析
事業の経済性分析とは、事業のコスト構造の裏にある前提条件を読み解き、自社にとっての拡大の方向性に対して示唆を得るためのフレームワークです。
主な経済性には、規模の経済性、範囲の経済性、密度の経済性があります。
また、経済性を考える上では、事業の習熟度に基づく経験効果も重要な因子になってきます。
3C分析
3C分析は、事業戦略を顧客起点、自社起点、競合起点で考えるためのフレームワークです。
元々は事業戦略立案のために作られたフレームワークですが、その汎用性の高さからマーケティングにおいても形を変えて幅広く活用されているフレームワークになっています。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の強み、弱み、外部環境の機会、驚異を分析するためのフレームワークです。
SWOT分析を使うと、自社の強み・弱みと、外部環境の機会・驚異をマトリックスにすることで出来上がる4つの象限の中で、自社がとるべき戦略の方向性を論じることができます。
SWOT分析も汎用性が高く、経営戦略・事業戦略だけでなく、マーケティングや人事など各機能における戦略や、個人レベルにも適用できるフレームワークです。
プロダクトライフサイクル
プロダクトライフサイクルとは、プロダクトのライフステージに応じた戦略やマーケティング策を考えるためのフレームワークです。
プロダクトライフサイクルでは、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分けて考えていきます。
最新技術を市場に導入するためによく使われる考え方であるキャズムについても以下の記事内であわせて言及しています。
技術戦略のMFTフレームワーク
技術戦略のMFTフレームワークとは、M:市場、F:機能、T:技術の頭文字をとったフレームワークで、技術を市場に適用させる際の考え方を示したものです。
新しい技術が出来上がると、それをどうやって市場に適用させようか?と考えてしまいがちですが、MFTフレームワークでは、技術を一旦技術が持つ機能という軸で整理して、その機能をどうやって市場に適用させるかという考え方をします。
これによって、市場に対する独りよがりな技術の押し付けを避けることができます。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、イギリスのフレデリック・W・ランチェスターによって、第一次世界大戦における航空機による空中戦の損害状況を研究から生み出されたものです。
ランチェスター戦略は、2つの法則に基づいて構成されています。
1つは、ランチェスターの第一法則です。
ランチェスターの第一法則とは、互いの兵士が一騎打ちすることを前提にした法則です。
第一法則では、戦闘力を次のように定義できます。
戦闘力 = 武器性能 × 兵力数
もう1つは、ランチェスターの第二法則です。
ランチェスターの第二法則とは、第一法則の前提よりもより広域な遠隔戦・集団戦を前提にした法則です。
これは、第二法則では、以下のように戦闘力を兵力数の2乗に比例すると考えるからです。
戦闘力 = 武器性能 × (兵力数)^2
詳細は、図解を交えて以下のページにて解説しています。
統合的なフレームワーク
事業環境の分析から戦略立案までを統合的包含したフレームワークです。
セブンドメインズ
セブンドメインズとは、新規事業を考える際の論点を整理したフレームワークです。
5つの力分析など、既存のフレームワークに加えて、新規事業ならではの観点(経営チームの成功条件など)を加えた統合的なフレームワークです。
デルタモデル
デルタモデルとは、業界構造と競争ポジションから戦略構築を考えたポーターの戦略論と、内部資源から戦略構築を考えたバーニーの戦略論を補完する形でできた総合的な戦略立案フレームワークです。
デルタモデルでは、8つの戦略の方向性をトライアングルの中でプロットしながら論じています。
環境分析から戦略立案までを一貫して進められるフレームワークになっています。
製品市場戦略(PMS)
製品市場戦略(PMS)とは、マッキンゼーが生み出した事業戦略立案のためのフレームワークです。
製品市場戦略では、業界構造分析とKSFの抽出、自社競合分析、戦略代替案の策定、戦略代替案の評価と決定、アクションプランの作成という5つのステップによって戦略の立案から実行計画までを作っていきます。
事業環境分析のフレームワーク2選
ここで紹介する2つの記事は、事業戦略を立案するための環境分析のプロセスを記したものです。
事業環境分析のフレームワーク
事業環境を分析するためのプロセス・フレームワークです。
競合分析のフレームワーク
競合分析をするためのフレームワークです。
経営戦略論に関する書籍
私がこれまで読んだ経営戦略に関する書籍の中で、みなさんにおすすめしたいものを以下の記事にまとめています。
経営戦略論を学べる講座
経営戦略論を動画で学ぶこともできます。
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