ネット上でよく見かける典型的な議論としては、以下のようなものがあります。
- サラリーマンか?フリーランスか?
- 大手企業か?ベンチャー企業か?
- 本業を頑張るか?副業をするか?
これらは究極選択のように見えますが、実際には両立できるものです。
その対立を両立に変える助けになるツールが、対立解消図・TOCクラウドです。
この記事では、ロジカルシンキングを鍛えるためにも有用な対立解消図・TOCクラウドについて解説します。
TOCクラウドを使うことで、次のようなメリットが得られます。
- 甲乙つけがたい選択肢に迷って立ち止まることがなくなる
- 深刻な対立が起きたときに、お互いの言い分を冷静に整理できる
- 今まで対立だと思っていたことが両立できることで、より高い次元での解決策を導き出せる
TOCで使われるクラウド・対立解消図とは
TOC(制約理論)で使われるクラウド(対立解消図)とは、対立している概念の根底にある制約を見つけて、その制約を解消することを目的とした方法論です。
以下のように対立している要求を洗い出し、それぞれの要望と共通する目的を図示することで、共通目的に向かって両立できるアイデアを生み出していきます。
※TOCとは
簡単に言うと、連続するプロセスにある制約(ボトルネック)を見つけて、その制約に注目して問題解決することで、プロセス全体の生産性を上げるというものです。
イスラエルのゴールドラット氏が考案した理論。
もっと詳しく⇒TOC理論の詳細
ゴールドラット氏は、対立(コンフリクト)が生じる背景には、間違った前提・仮定があるからだと言っています。
コンフリクトが生じた場合、それは誰かが間違った仮定をしているからだ。しかしその仮定は修正することができ、修正することによってコンフリクトは取り除くことができる。
出典:クリティカルチェーン
TOCクラウドを使うことで、前提・仮定の間違いを検証でき、対立を根本から取り除けます。
TOCクラウドの作り方
TOCクラウドは、以下のステップで作っていきます。
- 対立している要求に対して、共通目的と要望を洗い出す
- 要望を両立できる解決手段を考える
対立している要求に対して、共通目的と要望を洗い出す
クラウドでは、まずはじめに対立していること(要求)を明確にします。
例として、「サラリーマンになる」と「フリーランスになる」という対立を考えてみます。
次に「サラリーマンになる」と「フリーランスになる」という要求に対して、共通の目的は何なのか?を考えてみます。
たとえば、この2つの根底にある目的を「ストレスなく楽しく仕事をしたい」と設定できるかもしれません。
そこで一番左に「ストレスなく楽しく仕事をしたい」と置きます。
次に、この目的と要求の間にある要望を考えてみます。
あくまで手段である要求に対して、要望は手段によって実現したいことだと考えるとよいでしょう。
サラリーマンという要求に対する要望を「安定した収入を得る」、フリーランスという要求に対する要望を「裁量を持って働く」としてみました。
これで対立している要求に対して、目的と要望を整理することができました。
実際にできたクラウドをチェックしてみます。
以下のように、だからと、なぜならで相互に意味が通じるならクラウドは完成です。
実際に文章にすると、以下のようになります。
- ストレスなく楽しく仕事をしたい、だから安定した収入を得る、だからサラリーマンになる
- ストレスなく楽しく仕事をしたい、だから裁量を持って働く、だからフリーランスになる
- サラリーマンになる、なぜなら安定した収入を得たいから、なぜならストレスなく楽しく仕事をしたいから
- フリーランスになる、なぜなら裁量を持って働きたいから、なぜならストレスなく楽しく仕事をしたいから
要望を両立できる解決手段を考える
クラウドを作ることで、次のようなことに気づくはずです。
- そもそもサラリーマンじゃないと安定した収入は得られないの?
- そもそもフリーランスじゃないと裁量を持って働けないの?
- 本当に満たしたいことは手段である「要求」ではなく、「要望」ではないのか?
- 「要求」はたしかに両立できないが、「要望」なら両立できるのでは?
つまり、「安定した収入を得る=サラリーマン」「裁量を持って働ける=フリーランス」「選択肢はサラリーマンとフリーランスの二者択一」といった考え方は、すべて思い込みではないのか?という疑問にたどりつきます。
そこで「安定した収入を得る=サラリーマン」「裁量を持って働ける=フリーランス」という思い込みに挑戦するために、要求と要望をクロスして考えてみます。
つまり、「安定収入を得られるフリーランス」、「裁量を持って働けるサラリーマン」という状態を考えてみるのです。
このように考えると、次のような可能性が生まれてきます。
- サラリーマンでも勤務時間に裁量を持てる職場に転職する
- 安定した顧客基盤を持ったフリーランスになる
次に手段である要求は一旦脇に置いて、要望を両立できる方法を考えてみます。
要望の両立だけを考えると、次のような可能性が生まれてきます。
- サラリーマンの仕事を定時で終わらせて、フリーランス的に動ける副業をする
- サラリーマンとして圧倒的な実績を出して、上司と勤務時間のあり方について交渉する
- 数年間我慢して貯蓄して、その資産を運用して運用益で安定収入を得る
このようにTOCクラウドを使うと、一見すると対立構造にあることも、両者の背景にある要望を両立させる方法に集中すればよい気づけてしまうのです。
TOCクラウドを活用できる事例
TOCクラウドは、仕事から日常生活までさまざまな対立で、解決の方向性を見出すのに使えます。
- 設備投資をするのか?設備投資をしないのか?
- 転職するか?しないか?
- 本業を頑張るか?副業を頑張るか?
- 旦那が家事を手伝うか?家事を手伝わないか?
たとえば、設備投資をするか?しないか?という対立も次のように考えることができます。
ここでも、要望と要求をクロスできる状態を考えてみます。
また2つの要望を両立できる他の解決策を考えることもできます。
ここから出てくる解決策には、次のようなものがあるでしょう。
- 新品ではなく中古の設備を導入する
- 設備に投資せず、空いている設備をレンタルさせてもらう
- 逆に自社で設備を導入後、空いている時間を他の会社にレンタルする
- 設備投資をせずに、販売単価の高いものの割合を増やす
このようにオプションを出していくと、AまたはBという狭い視野での対立にとらわれずに、広い視野で解決策を考えられるようになるのです。
他の対立解消事例を見たいなら⇒ 対立が起きても諦めない!TOCクラウドを使った対立解消方法(事例付き)
まとめ
以上が、TOC理論で使われるクラウドの解説とその活用事例でした。
- TOCクラウドを活用すると、一見すると対立している要求(たとえばサラリーマンか?フリーランスか?)を両立する解決策を見つけられる。
- 2つの要求に対して、その背景にある要望を考えることで、要望を両立できる解決策を考えられる。
- 要望を両立する手段を考えることで、要求の対立は重要なものではないことがわかる。
- クラウドは仕事から日常生活まで、さまざまな対立場面において活用できる。
クラウド(対立解消図)による対立解消の事例が載っているのが、こちら「ザ・ゴール(2)」です。
出典:ザ・ゴール2 コミック版
こちらの「ザ・ゴール」とあわせて読むと、TOCの基本概念を理解できるようになります。