経営戦略論

VRIO分析とは?リソース・ベースト・ビュー(RBV)に基づく競争分析のフレームワーク

リソース・ベースト・ビュー(RBV)とは、バーニーが提唱した戦略論で、企業が競争優位を保てるかどうかは、外部環境よりも企業の経営資源やその資源を活用できる能力次第であるとした学説です。

RBVは、業界構造と競争ポジショニングが利益を決定づけるとしたポーターの戦略論(5つの力バリューチェーンなど)とは対極的な理論とされています。

この記事では、そのリソース・ベースト・ビューの考え方に基づく経営戦略フレームワークであるVRIO分析(VRIOフレームワーク)について解説していきます。

VRIO分析とは

VRIO分析とは、企業が持つリソースの価値を経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)の4つの観点から分析するフレームワークです。

VRIO分析で問われる4つのこと

  • V:経済価値(Value)に関する問い
  • R:希少性(Rarity)に関する問い
  • I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い
  • O:組織(Organization)に関する問い

4つの観点には、上から順番に答えていく必要があり、そこでなされる質問にすべてYesと答えられると、そのリソースは競合が簡単に獲得できない優位性の高い資源だと考えられます。

逆に質問にNoになると、次の質問にいく必要はなく、その時点で競争優位性が確定します。

VRIO分析の結果と優位性の判断を表にすると、以下のようになります。

V:経済価値 R:希少性 I:模倣困難性 O:組織 優位性
× × × VRIの調整項目 競争劣位
× × 競争均衡
× 一時的
競争優位
継続的
競争優位

企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続 (ジェイBバーニー)を参考に作成

VRIOのそれぞれの観点について、詳細を解説していきます。

V:経済価値(Value)に関する問い

経済価値に関する問いには、以下のようなものがあります。

  • その企業の保有する経営資源やケイパビリティ(企業が有する組織としての能力)は、その企業が外部環境における脅威を無力化できるか?
  • あるいは機会を捉えられるか?
経済価値に対する問いの答え 判断
No そのリソースは競争劣位に陥ると考えられます。
Yes 次の希少性に関する問いに答えます。

R:希少性(Rarity)に関する問い

希少性に関する問いは、以下のとおりです。

  • その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の競合企業か?
希少性に対する問いの答え 判断
No そのリソースには経済価値はあるものの、同質化の競争を招いてしまい競争均衡に陥ると考えられます。
Yes 次の模倣困難性に関する問いに答えます。

I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い

模倣困難性に関する問いは、以下のとおりです。

  • その経営資源を保有していない企業は、その経営資源を獲得あるいは開発する際にコスト上の不利に直面するか?
希少性に対する問いの答え 判断
No そのリソースには経済価値と希少性があるものの、模倣されてしまい一時的な競争優位しか築けないとされています。
Yes 最後の組織に関する問いに答えます。

O:組織(Organization)に関する問い

組織に関する問いは、以下のとおりです。

  • 企業が保有する、価値があり、稀少性があり、模倣コストが大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているか?
希少性に対する問いの答え 判断
No そのリソースには継続的な競争優位の可能性はあるものの、確実にその優位性を発揮できないとされています。
Yes 継続的な競争優位を確実に発揮できるリソースだと判断できます。

VRIOの模倣困難性を高める要因

バーニーは、企業が持続的に競争優位を発揮するための重要要素である模倣困難性を高める要因について以下3つのパターンで解説します。

  • 歴史性
  • 因果関係の不確かさ
  • 社会的複雑性

歴史性

歴史性とは、歴的的な経緯によってもたらされる模倣困難性のことです。

たとえば、創業100年のお茶の老舗というブランドは、競合が明日から真似しようと思ってできるものではありません。

他にも世界で初めて開発した会社というブランドは、2番手以降の会社には模倣困難なものになります。

因果関係の不確かさ

因果関係の不確かさとは、外部から見たときに構築する方法がわからない模倣困難性のことです。

たとえば、競合の真似をしようとして優秀な人材を集めても、実際にはその優位の源泉が社内プロセスにあるとすると、人材だけ集めても真似をすることができません。

社会的複雑性

社会的複雑性とは、外から見えない社内外のコミュニケーションによって生まれる模倣困難性のことです。

たとえば、組織運営のフレームワークである7Sの中でも価値観や組織文化が優位性を支えている場合、外部からはその優位性の源泉が見えないので、簡単に真似できません。

関連記事:マッキンゼーの7Sとは?7Sモデルの適用事例

VRIO分析の事例

VRIO分析の事例として、キーエンスを挙げてみます。

キーエンスは、製造業の中では、圧倒的な利益率と給与水準の高さを誇る超優良企業です。

キーエンスについて、VRIOで見ていくと次のようになります。

経済価値:Yes
計測機器の販売に留まらず、顧客の課題解決に軸足を置いたソリューション営業を展開している。

希少性:Yes
顧客に密着して課題解決まで総合的に提案できる計測機器メーカーは他にいない。

模倣困難性:Yes
顧客へのソリューション提案が価値観、文化として根付いて、他の計測機器メーカーがすぐに真似できるレベルではない。

組織:Yes
ソリューション営業ができる人材教育ができている他、給与が業界水準をはるかに超えた圧倒的な水準(平均年収2000万円)で、モチベーションが高い。

キーエンスの例を見ると、圧倒的な業績を誇っている成功企業は、VRIOの4つ項目に全てYesと答えられるだけのリソースを持っていることがわかります。

まとめ

以上、リソース・ベースト・ビューとVRIO分析に関する解説でした。

  • リソース・ベースト・ビューとは、企業の内部資源に競争優位の源泉を見い出す理論で、外部環境と競争ポジショニングによって競争優位が生まれるというポーターの理論と対照的な理論である。
  • リソース・ベースト・ビューの考え方を取り入れた企業の優位性分析の方法にVRIO分析がある。
  • VRIO分析では、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)に関する問いに答えることで、企業の持つリソースに継続的な競争優位性があるかを判断することできる。
  • 模倣困難性を高める要因については、歴史性、因果関係の不確かさ、社会的複雑性の3つがある。

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