ビジネスパーソンのみなさんは、日頃から「戦略」という言葉をよく使っているでしょうか?
しかし、以下のような質問をするとどうでしょう。
「戦略とは何ですか?」
この質問を投げかけると、多くの人が答えに詰まったり、考えてしまうかもしれません。
この記事では、経営戦略論の前提となる戦略について解説していきます。
戦略とは何か
上に書いたように、普段何気なく使っているのに意味を説明しろ言われると意外と難しいのが「戦略」という言葉です。
戦略という言葉は、元々戦争に勝つための長期的なプランを意味しますが、経営戦略で用いる戦略は、経営コンサルタント会社のマッキンゼーにより次のように定義されています。
「企業・事業目的を競争優位性により持続的に達成できる構造を構築する施策群」
つまり、戦略とは、
- 会社の目的を達成できる仕組みを作るためのアクション群(単一ではない)で、
- その仕組みは競合に簡単に真似されないもので、
- かつ長期にわたって持続できるもの
ということになります。
企業における戦略の位置づけ
企業における戦略の位置づけは、下の図のようになります。
環境分析
環境分析は大きく外部環境と内部環境に分けられます。外部環境とは、主に市場や業界、競合に関する分析を指しており、内部環境とは、主に自社のことを指します。
詳細のフローは以下の記事をご参照ください。
KSF
KSFとは、Key Success Factor の略で成功要因という意味です。KSFには、「競争のルール・勝利条件」、「自社の勝ち方」という要素があります。前者は外部環境分析をすることで、後者は内部環境分析をすることで見えてきます。
もし、「競争のルール・勝利条件」と「自社の勝ち方」がマッチしない場合は、事業からの撤退を考える必要があります。
KSFの解説記事はこちら
戦略代替案の評価軸
戦略代替案の評価軸にはさまざまなものがありますが、ここでは代表的なものをピックアップします。
- リターンはどの程度か?
- 時間はどの程度かかるか?
- 実現可能性は高いか?低いか?
- 自社の風土や他の戦略との整合性はあるか?
- リスクは大きいか?小さいか?
通常は、全てにおいて勝っているという戦略はほとんどなく、互いにトレードオフ(※)の関係にあります。したがって、何を優先して、何を捨てるのか、意思決定する必要があります。この意思決定の部分に会社・経営者としての個性が出ます。
トレードオフとは
トレードオフとは何かを採用する変わりに、何かを犠牲にすることをいいます。 経営判断においてはステークホルダーの利害をトレードオフしなければならない場面が必ず存在してきす。大局的に考えて何を犠牲にするのが一番なのかを熟考することが重要になってきます。
しかし、世の中には「コストと品質」「利益と人身の安全」といった絶対にトレードオフしてはいけないものがあります。利益を優先して、安全の確保を怠ったがゆえに、重大事故が起こり、どんてもない損失を被る可能性もあります。
このブログでは、この戦略をより具体的に考えるためのフレームワークを紹介していきます。
事業戦略の立案
戦略・戦略代替案には上図にあげた3つの要素を含みます。
- どこで戦うか
- 何を提供するか
- どうやって競争優位性を構築するか
どこで戦うか
その事業が戦う市場を決める必要があります。
これはマーケティングでいうと、市場・顧客セグメンテーションをした上で、ターゲットを明確にすることを意味します。
大手企業の場合は、全方位の顧客を見ているかもしれませんが、事業ごとに見るべき顧客は変わってくるでしょう。
何を提供するか
次に顧客に対してどのような価値を提供するかを決める必要があります。
ここで大事なのは、製品やサービスの内容ではなく、顧客にとっての価値です。言い換えると、その製品やサービスを使うことで顧客はどう嬉しいのか、使う前と使った後でどう変化しているのかということです。
顧客にとってのコトの価値ということもできます。以下の記事で、顧客にとってのコトの価値についてまとめているのでご参照ください。
どうやって競争優位性を構築するか
最後にどうやって競争優位を実現するかです。
競争優位の構築で使われる最も一般的なフレームワークはバリューチェーンです。バリューチェーン分析をした上で、他の追随を許さない提供価値を実現するために、自社のビジネスのフローの中でどこを競合と差別化するかを考えていきます。
また、立案した戦略は顧客に対してユニークなものとして認識してもらう必要があります。そのために重要になってくるのが、ポジショニングの考え方です。以下の記事で、ユニークな戦略ポジションを考えるための方法を記載しています。
個別戦略の立案
事業戦略の骨子ができたら、それをサポートするための個別の戦略(マーケティング、財務、人事等)を立案します。
マーケティング戦略は、事業戦略で考えた顧客ターゲットや提供価値と密接に結びつくものになります。
財務戦略は、事業戦略上必要となる設備投資、運転資金を必要なタイミングで供給し、事業の成長を阻害せずに加速させるようにサポートする必要があります。
人事戦略は、事業戦略上のコアとなる人材を確保・育成することを主眼に策定されます。
まとめ
以上が、戦略とは何かと戦略策定フローの解説です。
実際の戦略立案では、このようなキレイなフローに沿って立案されることは少なく、ステップが進んで戻ってを繰り返しながら、ブラッシュアップされていきます。
また、戦略の前提条件となる外部環境や内部環境も日々変化をしていくので、立案した戦略の前提条件が正しいかどうかは常にチェックをしながら、必要に応じて修正を加えていく必要があります。