ロジックツリーとは、問題の原因を分解してツリー状に整理することで、漏れなく原因を分析していくためのツールです。
ロジックツリーには、「原因分析型」以外にも、「問題解決型」「構造把握型」などの種類があります。
ロジックにもとづいて、ツリー上に分解することからロジックツリーと呼ばれていて、ロジカルシンキングの基本的なフレームワークの1つとなっています。
ロジックツリーを使うことで、以下のようなメリットがあります。
ロジックツリーのメリット
- 問題の全体把握が容易
- 議論のズレを修正できる
- 重要なものから議論できる
この記事では、ロジックツリーの概要と作成方法について事例を交えながら解説していきます。
ロジックツリーを作る目的は?いつ使う?
ロジックツリーは、「問題解決」「意思決定の支援」「プロセスの改善」「顧客体験の改善」などの場面で役立つツールです。
ロジックツリーの目的
- 問題解決:売上の向上や顧客からの苦情への対応において、問題の原因を特定して、解決策を見つけるためにロジックツリーが使えます。
- 意思決定支援:新しい商品を開発するときに、市場の需要や競合状況などを勘案した上で、ロジックツリーを使用して商品開発に必要な要件を特定できます。
- プロセス改善:製造プロセスを改善するために、ロジックツリーを使用してプロセスの流れを分析できます。
- 顧客体験の改善:顧客がオンラインショップで商品を購入するプロセスを改善するために、ロジックツリーを使用してプロセスを分析できます
ロジックツリーは、1つの問題を次の階層、その次の階層という形で問題を小さなものに分解していく階層構造をしています。
ロジックツリーによる構造化の例として、「大阪から東京に行くための交通手段」を考えてみましょう。
交通手段は陸路、空路、海路と分けることができます。
陸路はさらに電車、車、徒歩・・・などと分けていくことができます。さらに電車なら新幹線、在来線に分けていくことができます。さらに新幹線なら自由席、指定席(あるいは禁煙席、喫煙席)に分けられます。
この一連の分解を図にしたものが下の図です。
このようにロジックツリーにすることで、漏れやダブりを最小限にしながら解決策を考えられるようになります。
ロジックツリーのメリット
ロジックツリーを使うと、次のようなメリットがあります。
ロジックツリーのメリット
- 問題の全体把握が容易
- 議論のズレを修正できる
- 重要なものから議論できる
それぞれ詳細を見ていきましょう。
問題の全体把握が容易
ロジックツリーを広く、深く構成すると問題の全体像が明確になります。全体像が把握できると、一押しだった案がダメになっても、別の案をすぐに容易できるメリットがあります。
また、広く検討した上での最善の結論であるということがわかりやすいので、交渉やプレゼンでの説得力が増します。
議論のズレを修正できる
上の例でいうと、「新幹線の自由席」と「レンタカー」の優劣を論じても、お互いの階層が異なるので優劣を比較できません。
この場合は、「電車」と「車」といった同じ階層のもので優劣を論じる必要があります。(上の例ではまずありませんが、実場面では階層のズレたところで議論を戦わすことがよくあります。)
重要なものから議論できる
上の図の中にも書ていますが、ロジックツリーを構成すると重要なところだけ掘り下げていくことができます。
たとえば、大阪から東京に行くのにクロールで行くかバタフライで行くかを真剣に検討しても意味がありません。
ロジックツリーを使えば、そうした些末な議論を議論の前段で取り除いて、重要な方法にだけ議論を集中することができます。
ロジックツリーの欠点
ロジックツリーの欠点として、「作成するのに時間とリソースがかかる」「階層が深くなると複雑さが増大する」「作ることが目的になる場合がある」などが挙げられます。
作成するのに時間とリソースがかかる
ロジックツリーを作成するには、時間とリソースが必要です。
特に、複雑なビジネスプロセスを分析する場合、ロジックツリーの作成に多くの時間を要する可能性があります。
こうした欠点を補うために、ロジックツリーで分析する目的をしっかりおさえて、分析を目的にあった粒度までにとどめるなどの工夫が必要となるでしょう。
階層が深くなると複雑さが増大する
ロジックツリーは階層が深くなればなるほど、複雑さが増大していきます。
ロジックツリーが4階層目や5階層目になると、膨大な情報量になってしまい、問題を解決することよりも複雑さをマネジメントすることにリソースを費やすことにもなりかねません。
ロジックツリーで階層を深掘りしていく際には、深掘りする意味があるところと意味がないところを見極めた上で、できるかぎりシンプルなロジックツリーを構成できるように工夫するとよいでしょう。
作ることが目的になる場合がある
ロジックツリーの作成は、「原因分析」「問題解決」などの目的を達成するための手段です。
ロジックツリーを作るときは、「そもそも何のために作っているのか?」を明確にしておかないと、作っただけで満足してしまうかもしれません。
ロジックツリーの種類
ロジックツリーには、大きく3つの種類があります。
- 原因分析型ロジックツリー
- 問題解決型ロジックツリー
- 構造把握型ロジックツリー
原因分析型ロジックツリー
原因分析型ロジックツリーとは、問題の原因となっているものを分解して、根本原因を把握するために使われるものです。
たとえば、以下のような「なぜ売上が下がったのか?」という問いに対して用いることができます。
問題解決型ロジックツリー
問題解決型ロジックツリーとは、問題に対してどのように解決するかを考えるためのものです。
先ほど例としてあげた、東京から大阪までの交通手段は?というのは問題解決型と言えるでしょう。
構造把握型ロジックツリー
構造把握型ロジックツリーとは、物事の構造を把握する際に活用されるものです。
以下ようなROAツリーは構造把握型のツリーの例と言えるでしょう。
ただ、構造把握型の各要素は、それぞれ末尾に「悪い」とか、「低い」を加えると、原因追求型のロジックツリーとして活用することができます。
また、「を上げる」とか、「を改善する」など加えると、問題解決型にもなります。そういう意味では、構造把握型は、原因追求型や問題解決型の基本となるものという捉え方もできます。
ROAツリーの詳細は、以下の記事をご覧ください。
ロジックツリーの作成方法・4つのステップ
ここでは、ロジックツリーの作成方法を以下4つのステップに分けて解説していきます。
ロジックツリーの作成手順
- 顕在化している問題を探す
- 出発点の問題を分解する
- MECEの切り口を複数考える
- 分解したものがMECEがどうか確認する
それぞれ詳細を解説していきます。
ステップ1:顕在化している問題を探す
ロジックツリーの場合、出発点に設定するのは、原因を掘り下げて考えたい問題や解決すべき課題になります。
前者の場合だと、「なぜ売上が落ちているのか?」、「なぜ在庫水準が多いのか?」などが出発点になります。
後者の場合だと、「売上をあげるには?」、「来客数を増やすには?」といったことが出発点になります。
ステップ2:出発点の問題を分解する
次に、出発点の問題を分解する必要があります。
分解とは、いくつかの要素に切り分けることです。
要素の切り分けの際には先ほど解説したMECEを強く意識する必要があります。
ステップ3:MECEの切り口を複数考える
頂点の問題をMECEに分解しくといっても、MECEの切り口にはさまざまなものがあります。
たとえば、車のディーラーで、売上が落ちているといった場合、MECEの切り口には次のようなものが考えられます。
- 車種別
- 顧客の年齢層別
- 燃費別
- 店別
- 月別
他にもたくさんあるでしょう。
切り口を考える際に重要なのは、何を知りたいかです。
A支店の売上が悪そうだという仮説を持っているのに、車種別の売上を調べても効果は薄いでしょう。
MECEの切り口を考える際に、その切り口で切るとどんなことがわかるのかも、併せて考える必要があるのです。
MECEに分解するための代表的なパターンを以下4つ紹介します。
足し算型(同質のものの組み合わせ)
足し算型とは、全てを足し合わせると全体になるような分解の仕方です。足し算型には次のような例があります。
売上 = A店の売上 + B店の売上 + C店の売上 + D店の売上
掛け算型(異質の組み合わせ)
掛け算型とは、全てを掛け合わせると全体になるような分解の仕方です。掛け算型には次のような例があります。
売上 = 従業員1人あたりの売上 × 従業員数
プロセス型
プロセス型とは、結果に至るまでの行為をプロセスで分解するパターンです。たとえば、顧客の購買に至るまでのプロセスAIDMAを使うと次のような分解できます。
商品を買ってくれない訳
=そもそも商品を知らないから + 知っているが興味がないから
+ 興味を持っているが欲しいと思わないから + 欲しいと思うが動機がないから
+ 動機はあるが行動できないから
XとX以外
「XとX以外」という分け方にすれば、必ずMECEになります。
ですので、困ったときはこの分け方もありでしょう。
ただし、X以外に情報の8割くらいが入るようでは、切り方が甘いといえます。
その場合は、X以外の中でさらに分解できないかを考えていきます。
ステップ4:分解したものがMECEがどうか確認する
上記のように、車のディーラーの売上を店別に分解すれば、必ずMECEになります。
しかし、分類の仕方がMECEかどうか判別しにくい場合があります。
そういう場合は、具体的な例をいくつか出して確認することが必要です。
その例が、どの分類にも属さない場合は、モレがある状態ですし、2つ以上の分類に属してしまう場合、ダブりがある状態といえます。
たとえば、世の中の飲み物の容器をMECEに分解するときに、缶、瓶、ペットボトルと分けたとします。
ここで、紙パックという例を出せば、分類の仕方がMECEではないということがわかるので、分類の仕方を変える(少なくともその他を加える)必要があります。
ロジックツリーを作る際の注意点
ロジックツリーを作る際の注意点は、以下の3つです。
ロジックツリーを作成するときの注意点
- 問題や解決策をMECEに分ける
- 確実にMECEになるように、細かく分けずに大きく分けることを意識する
- 5階層くらいまで掘り下げる
それぞれ詳細を見ていきましょう。
問題や解決策をMECEに分ける
ロジックツリーを有効に機能させるには、MECEに切り分けましょう。
MECEとは、漏れなくダブりがない状態です。
感覚的に「このポイントはいらないだろう」と思っても、実際には大事なポイントだったということもあるので、特に階層が上位の段階では必ずMECEを意識することが大事です。
MECEを意識しておくことで、原因究明や問題解決のハズレを防げるようなります。
MECEの分解例は、ロジックツリーの作成ステップのところで紹介します。
細かく分けずに大きく分けることを意識する
最初から細かくMECEにするのではなく、大きくMECEに分けることを意識することで、漏れを防げるようになります。
先ほど解説した交通手段の例だと、最初の階層からいきなり「車、飛行機、船・・・」とやり始めると切り分けが細かすぎて、モレが生じてしまいます。
ですので、「陸路、空路、海路」とか「人力で動かすもの、動力のあるもの」など、大きな枠組みで考えることで、モレが少なくできます。
5階層くらいまで掘り下げる
原因を突き止めるために何故を5回繰り返せと言われますが、ロジックツリーでも同様です。
特に原因分析型のロジックツリーだと、5階層くらい作ることでより真因に近い分析が可能になるからです。(逆に5階層くらい掘り下げないと、原因分析が不十分である可能性が高いです)
まとめ
以上、ロジックツリーの解説でした。
ロジックツリーは、大きな問題を解決可能な小さな問題に分解するのに大変適しています。最初は難しくても、慣れればスピーディーに作成できるので、問題解決場面でぜひ使ってみてください。
問題解決能力を高めるおすすめ講座
シリコンバレー発祥のオンライン学習プラットフォームUdemyだと、問題解決思考の基礎をじっくり学べます。
こちらの講座は、ロジカルシンキングの基本から、実務レベルへの応用まで約2時間かけて解説するUdemyのおすすめ講座です。
公式サイト>> 文章力・伝達力・解決力が一気に上がる ロジカルシンキング
関連記事:スキルアップを図れるUdemyのカテゴリー別おすすめ講座まとめ